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六二〇
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カチャ
ルガがフォークを取った。
「おいルガ」
「ボクもう食べる……」
ルガが涙目でそう言った。
ガイの方を一切見ようとはしない。
「よせ、アキラが言っていただろ!それを食うと魅了されてしまうぞ!」
「良いもん。もう魅了されてるもん。どうせ食べたって死なないんだし……そんなに美味しいなら食べないと損だよ!」
ルガはそう言って、泣きそうな顔でケーキの乗ったフォークを口の中に差し込んだ。
ぱくっ
「ルガ!」
ガイが叫ぶ。
もぐもぐ
「……」
ルガは目をつぶって、意識を口の中にさまよわせる。
「……ッ!」
突然ルガが、カッと両目を見開いた。
「お、おい……!」
ガイは心配そうにルガを覗き見た。
「……はあ……美味しい……」
ルガは夢見心地で味覚の旅に出た。
今、彼女の口の中は初めて体験する甘味と幸せの世界が広がっている。
その世界を一人さまよっているのだ。
だがそれだけではまだ不十分だ。
珈琲と出会った時、その衝撃は倍になる。
ルガは珈琲の入ったカップを恐る恐る口へと近付ける。
ずずずずず
熱い珈琲を少しずつ口の中へ流し込む。
「ぷはー」
もう言わなくても判る。
ルガの表情が全てを物語っていた。
ましてや背徳感からの解放。
これほどの調味料は存在しない。
「ル、ルガ……」
ガイが心配そうに言ったが、バルバもディーレも皆一様に同じ表情をしている。
「みんなも食べた方が良いよ。凄く美味しいし、食べなかったら絶対損するよ」
ルガが次々にフォークを口に運びながら言う。
その斜め向かいではカルタスがゴリラもかくやと、手掴みでケーキを貪り食っている。
俺とオレコとトラゴスも食べていたが、もはや誰も俺たちを見ていない。
ごくり
また誰かの喉が鳴った。
もう時間の問題だろう。
「アタシも……食べてみようかな」
ディーレがフォークを取った。
「ディーレ……!」
ガイがディーレを見る。
その目は暗に、裏切り者と言っていた。
「だって、ルガを一人だけ悪者には出来ないでしょ」
ディーレはそう言ってケーキを一口口にした。
女は言い訳が上手いな。
そう言う理屈が男はとっさに出てこない。
「こ、これは……」
「どうした!?」
「待って、もっと良く食べてみないと……」
もぐもぐ
一瞬でディーレのケーキは半分になった。
こうなると感想を待つのも馬鹿馬鹿しい。
論より証拠、ルガとディーレの態度を見れば答えは一目瞭然だ。
「レオ!おかわりあるかい?」
ルガがほっぺたを膨らませて俺を見た。
「ああ。あるぞ」
間髪入れずに次のケーキが運ばれてくる。
管理人も、あらかじめおかわりを用意していた節がある。
「珈琲もあるぞ。好きなだけ飲むと良い」
俺はそう言ったが聞いているのかはかなり怪しい。
「ガイ……拙僧も食べてみようかと思う」
「バルバ……お前まで」
「いや、お主も食べてみるべきだ。食べなければ何も判らん。ルガの気持ちもディーレの気持ちも、食べなければ判らん。毒など入ってはいない事はもう判っているだろう?みんな食しているのだ。自分一人高い所から見ているだけでは本当の所は何も判らんのだ」
バルバはそう言ってフォークを手に取った。
「拙僧は食べるぞ」
そう言ってからバルバもおもむろにケーキを食べた。
ルガがフォークを取った。
「おいルガ」
「ボクもう食べる……」
ルガが涙目でそう言った。
ガイの方を一切見ようとはしない。
「よせ、アキラが言っていただろ!それを食うと魅了されてしまうぞ!」
「良いもん。もう魅了されてるもん。どうせ食べたって死なないんだし……そんなに美味しいなら食べないと損だよ!」
ルガはそう言って、泣きそうな顔でケーキの乗ったフォークを口の中に差し込んだ。
ぱくっ
「ルガ!」
ガイが叫ぶ。
もぐもぐ
「……」
ルガは目をつぶって、意識を口の中にさまよわせる。
「……ッ!」
突然ルガが、カッと両目を見開いた。
「お、おい……!」
ガイは心配そうにルガを覗き見た。
「……はあ……美味しい……」
ルガは夢見心地で味覚の旅に出た。
今、彼女の口の中は初めて体験する甘味と幸せの世界が広がっている。
その世界を一人さまよっているのだ。
だがそれだけではまだ不十分だ。
珈琲と出会った時、その衝撃は倍になる。
ルガは珈琲の入ったカップを恐る恐る口へと近付ける。
ずずずずず
熱い珈琲を少しずつ口の中へ流し込む。
「ぷはー」
もう言わなくても判る。
ルガの表情が全てを物語っていた。
ましてや背徳感からの解放。
これほどの調味料は存在しない。
「ル、ルガ……」
ガイが心配そうに言ったが、バルバもディーレも皆一様に同じ表情をしている。
「みんなも食べた方が良いよ。凄く美味しいし、食べなかったら絶対損するよ」
ルガが次々にフォークを口に運びながら言う。
その斜め向かいではカルタスがゴリラもかくやと、手掴みでケーキを貪り食っている。
俺とオレコとトラゴスも食べていたが、もはや誰も俺たちを見ていない。
ごくり
また誰かの喉が鳴った。
もう時間の問題だろう。
「アタシも……食べてみようかな」
ディーレがフォークを取った。
「ディーレ……!」
ガイがディーレを見る。
その目は暗に、裏切り者と言っていた。
「だって、ルガを一人だけ悪者には出来ないでしょ」
ディーレはそう言ってケーキを一口口にした。
女は言い訳が上手いな。
そう言う理屈が男はとっさに出てこない。
「こ、これは……」
「どうした!?」
「待って、もっと良く食べてみないと……」
もぐもぐ
一瞬でディーレのケーキは半分になった。
こうなると感想を待つのも馬鹿馬鹿しい。
論より証拠、ルガとディーレの態度を見れば答えは一目瞭然だ。
「レオ!おかわりあるかい?」
ルガがほっぺたを膨らませて俺を見た。
「ああ。あるぞ」
間髪入れずに次のケーキが運ばれてくる。
管理人も、あらかじめおかわりを用意していた節がある。
「珈琲もあるぞ。好きなだけ飲むと良い」
俺はそう言ったが聞いているのかはかなり怪しい。
「ガイ……拙僧も食べてみようかと思う」
「バルバ……お前まで」
「いや、お主も食べてみるべきだ。食べなければ何も判らん。ルガの気持ちもディーレの気持ちも、食べなければ判らん。毒など入ってはいない事はもう判っているだろう?みんな食しているのだ。自分一人高い所から見ているだけでは本当の所は何も判らんのだ」
バルバはそう言ってフォークを手に取った。
「拙僧は食べるぞ」
そう言ってからバルバもおもむろにケーキを食べた。
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