見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
622 / 826

六二二

しおりを挟む
「……何を言っている?」

 尋ねたのは俺だった。
九条晃を仲間に迎えると言っているのか。
仇敵だったんじゃ無いのか?
さっきまで殺し合いをしていたんだぞ。

「……何を言っている?」

 もう一度同じ言葉を口にしたのはガイだった。

「アキラは死んだんじゃ……生きているのか?」

 四人とも意味が判らずに、お互いの顔を見つめ合っている。

「いや、死んでいるんだがまだ間に合いそうなんでね。戻って来てもらおうかな……なんてな」

 オオムカデンダルがそう言って自分にも珈琲を要求した。
俺は仕方無くカップに珈琲を注いで、オオムカデンダルに渡した。

「間に合いそう……?戻って来てもらう……?」

 ガイが子供のように言葉をオウム返しする。
たぶん意味は判っている筈だ。
ただ、信じられなくて混乱している。

「生き返らせる……って事よね。けどアキラがアナタの仲間になんてなるかしら」

 ディーレが尋ねる。
やはり冷静だ。

「さあねぇ。こればっかりはやってみなければ判らんな。だから『もしも』の話だ」

 オオムカデンダルは珈琲をすする。

「……もしも、嫌だと言ったら?」

「そこなんだよなぁ。お前らさ、その時は説得してくんない?こう見えてウチはクリーンな職場だぞ。労災も出るし衣食住全て込みで世界征服まで出来ちまう。冒険者よりも夢がある事は約束しよう」

 何の話だ。
俺は頭を抱えた。

 四人はケーキを食べるのも忘れて口が開きっぱなしになっている。
そりゃそうだ。
仇敵の言葉とは到底思えない。
だいたい何の為に甦らせるのか。

「そんな事をして、アナタに何のメリットがあるの?」

「メリット?さあ……有るような無いような」

 オオムカデンダルは腕組みをして考え込んだ。
コイツ本気だ。
本気で悩んでいる。
メリットも無いのに生き返らせようと言うのか。
伊達や酔狂で秘密結社をやっているんじゃ無かろうな。

「……まあ、強いて言えば同じ世界から来た者どうしだから?」

 それが理由か。

「何百年も帰りたいとさまよって、このまま死ぬのはさぞや無念だろうなーってね」

 オオムカデンダルはそう言って再び珈琲をすすった。

 なるほど。
哀れみと言う事か。
しかし、いくらなんでもそんな理由で生き返らせるのはどうかと思う。

「……それだけ?」

 ディーレがオオムカデンダルの顔を覗きこんだ。

「いや、アキラが培った何百年分の知識は巨万の富を凌ぐ価値がある。知識やデータは我々にとって何よりも価値のある物だからな」

 確かに。
カガクシャと言うのはそう言う人種なんだとオオムカデンダルは常々口にしている。
九条晃の手に入れた知識に価値を見出だしているのか。

「我々が挑んでも遂に判らなかった帰還方法を、晃は可能性だけでも見付けたと言っていた。それを聞くだけでも価値がある。まあ、聞いた上で酒の肴にしかならんかもしれんが」

 その可能性の方が高そうだと思うが、それでも甦らせようと言うのか。

 これは単に言い訳だな。
俺は直感的にそう思った。
そう言う理由もあると言うだけで、やはり九条晃に対する憐憫の情が大きいのではないか。

「酒の肴にしかならんかもしれんのに、甦らせると言うのか……」

 バルバが呆れたような驚いたような顔をした。

「そうは言っても普通には甦らんけどな」

 オオムカデンダルが言う。
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...