見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六二四

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「つまり何か。契約を違えたら何度甦らせても無駄だってのかよ」

「まあ、そう言う事らしいな。試してみない事には判らんが、賢者様が言うんだから間違いないだろ」

 魂その物を冥界に持っていかれるんじゃ、そうなるな。

「……で、どうやって心臓を調達するつもり?まさかその辺の人間を殺して間に合わせたりしないわよね」

 ディーレが皮肉たっぷりに尋ねた。

「晃の為に見知らぬ人間を殺せるならやってみるが良いさ。そうなればお前らはもはや冒険者とは呼べないがな。殺人者だ」

 オオムカデンダルはさらりと言ってのけたが、そう言う本人だって何の罪も無い人間を殺したりはしない筈だ。
彼は支配下に置く予定の人々を、むげに殺したりはしない。
生きてこそ世界の役に立つと信じているからだ。
だからこそ、人民の命を何とも思わない帝国に腹を立てる。

「じゃあ、どうするんだよ。この話は何の為に俺たちにしている」

 ガイがオオムカデンダルに食って掛かった。

「それはお前らにやってもらい事があるからさ」

 そら来たぞ。
こう言う回りくどい話の時は裏があるもんだ。

「お使いでもさせようって言うのか」

「まあ、そんな所だ」

 オオムカデンダルは否定せずにすんなりと認めた。
やっぱりな。

「晃の心臓にはモンスターの心臓を使おうと思っている」

 それはさすがに予想外だ。
四人も一瞬言葉を失った。

「……なんだと?」

 ガイが眉間に深いシワを寄せた。

「それならお前らも良心が痛まないだろ?モンスター討伐は専門なんだし」

「ふざけるな!アキラの心臓にモンスターの物を使うだと?」

 ガイが激昂する。
まあ、そうなるよな。

「良いじゃないか。それにちゃんと理由もある」

「理由だと……!」

「一部のモンスターの中には神の加護や御力が及ばない種が居るらしい……例えばヴァンパイアとかな」

 ヴァンパイア。
それはもう居ないだろ。

「それがどうした」

 ガイは話の先が見えなくて、オオムカデンダルの話を疑いながら聞いている。

「そう言う種のモンスターの心臓なら旧神の契約もシカト出来る」

「本当か?」

 ガイが疑う。

「たぶんな」

「たぶんだと……!馬鹿にするな!」

 オオムカデンダルの態度にガイが声を荒らげた。

「仕方が無いだろ。俺だって初めてなんだから。俺は理屈は立てられるが、実際の所はやってみなけりゃ判らん」

 ましてや旧神が相手じゃな。

「一応、じいちゃんは同意してくれたぞ。この手が嫌ならやっぱり誰か拐ってこいよ。持って来た心臓使ってやる」

 オオムカデンダルはどっちでも構わないと言う風に四人に現状を突きつけた。
選ばせるのか、四人に。

「賢者サルバスの御墨付きか……」

 バルバが腕を組む。

「……ちなみにそのモンスターの心当たりはあるの?」

 ディーレは気が進まないと言う顔でオオムカデンダルに尋ねた。
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