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六三二
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「さ、行くぞ」
俺はカルタスの態度に少し笑って先を促した。
ここは次の建物までの中庭の筈だが、雑木林と茂みによって小さな森と化している。
マンモンまではずっとこの調子なのか。
俺は焦れったくなっていた。
「おいレオ。あれ」
カルタスが指を指す。
指差した先に視線を送る。
「ひ……!」
ルガが息を呑む。
行く手を阻む木々の枝に、たくさんの人影がぶら下がっていた。
「こりゃあ……酷いな」
カルタスが眉をしかめた。
絞首刑か。
数人では利くまい。
数十体の死体がそこかしこから吊るされている。
「見せしめかよ」
「いや、誰も来ないこんな所で見せしめも無いだろ。たぶん遊び半分だ」
カルタスの言葉に俺は答えた。
「遊び半分でこんな事を……」
ディーレの声に怒りが滲む。
「相手は悪魔だ。正気じゃないのは承知の上だ」
「遊び半分と言う事は、わざわざ拐ってきてこんな事を……?」
「さあ。判らんがそう言う事もあるかもな」
本当の所など俺にも判る筈無い。
だが、俺の言葉にディーレは明らかに怒っている。
「許せない……」
ただの俺個人の感想だったんだが黙っておこう。
どさっ!
突然背後で音がした。
「きゃあ!」
ルガが驚いて飛び上がる。
吊るされていた死体が、重みに耐えかねて落下していた。
「もう嫌だよお」
「ガイ、ちゃんと面倒見てやれ」
ガイに、ベソをかくルガの面倒を見るように言う。
「るせえ、判ってるよ。ルガ、大丈夫だ。俺の後ろを離れるな」
「……うん」
いよいよこれは戦力にならないな。
全て俺一人で片付けるつもりで行こう。
林を抜けるとすぐに次の建物が現れた。
屋敷と言う感じではないな。
俺は躊躇無く扉を開け放つ。
「迷いが無いな」
バルバが言った。
「考えるな。どうせ全部ぶちのめすんだ。考えたら迷いが増えるだけだ」
「……確かに」
俺の言葉にバルバが頷く。
建物の中はたくさんのクローゼットが設置してある。
衣装部屋か?
それにしては多すぎだろ。
どんな貴族が住んでいたんだ。
俺は横目でクローゼットを見ながら奥へと進む。
「うあああぁぁぁ……!」
「おおおぉぉぉ……」
相変わらずクローゼットの中からも呻き声が聞こえる。
開けたらどうなるか想像するのは容易い。
当然無視だ。
ガタガタガタガタ……!
クローゼットの扉が小刻みに鳴る。
「な、何か居るよぉ」
「関係無い。無視しろ」
ルガの言葉を食い気味に遮る。
「漢らし過ぎるだろ……」
ガイが言った。
「開けたらどうなるか想像できるなら開けるな。それだけだ」
俺はそれ以上この件には触れたくない。
ずんずんと奥へと歩いた。
「行き止まりか……」
部屋の奥は壁になっている。
壁一面鏡張りだ。
やはり衣装だけの建物のようだな。
ヒビの入った巨大な鏡が壁一面に張られ、まるで一枚鏡のようだ。
「これだけでもかなりの高額になるわね」
オレコが鏡を見ながら言う。
だがせっかくの高額な鏡も、ヒビ割れて血糊がベッタリと付いていては何の値打ちも無いだろう。
血の手形が至る所に付着している。
「おい、ドアがあるぞ。あそこから抜けられそうだ」
ガイが横にある勝手口に気が付いた。
ならば長居は無用である。
とっとと抜けるとしよう。
俺は先頭を切って扉に向かった。
「ちょっ……!」
ディーレが甲高い声をあげた。
なんだ。
「か、鏡が……!」
鏡がどうした。
俺は鏡を覗き込む。
俺はカルタスの態度に少し笑って先を促した。
ここは次の建物までの中庭の筈だが、雑木林と茂みによって小さな森と化している。
マンモンまではずっとこの調子なのか。
俺は焦れったくなっていた。
「おいレオ。あれ」
カルタスが指を指す。
指差した先に視線を送る。
「ひ……!」
ルガが息を呑む。
行く手を阻む木々の枝に、たくさんの人影がぶら下がっていた。
「こりゃあ……酷いな」
カルタスが眉をしかめた。
絞首刑か。
数人では利くまい。
数十体の死体がそこかしこから吊るされている。
「見せしめかよ」
「いや、誰も来ないこんな所で見せしめも無いだろ。たぶん遊び半分だ」
カルタスの言葉に俺は答えた。
「遊び半分でこんな事を……」
ディーレの声に怒りが滲む。
「相手は悪魔だ。正気じゃないのは承知の上だ」
「遊び半分と言う事は、わざわざ拐ってきてこんな事を……?」
「さあ。判らんがそう言う事もあるかもな」
本当の所など俺にも判る筈無い。
だが、俺の言葉にディーレは明らかに怒っている。
「許せない……」
ただの俺個人の感想だったんだが黙っておこう。
どさっ!
突然背後で音がした。
「きゃあ!」
ルガが驚いて飛び上がる。
吊るされていた死体が、重みに耐えかねて落下していた。
「もう嫌だよお」
「ガイ、ちゃんと面倒見てやれ」
ガイに、ベソをかくルガの面倒を見るように言う。
「るせえ、判ってるよ。ルガ、大丈夫だ。俺の後ろを離れるな」
「……うん」
いよいよこれは戦力にならないな。
全て俺一人で片付けるつもりで行こう。
林を抜けるとすぐに次の建物が現れた。
屋敷と言う感じではないな。
俺は躊躇無く扉を開け放つ。
「迷いが無いな」
バルバが言った。
「考えるな。どうせ全部ぶちのめすんだ。考えたら迷いが増えるだけだ」
「……確かに」
俺の言葉にバルバが頷く。
建物の中はたくさんのクローゼットが設置してある。
衣装部屋か?
それにしては多すぎだろ。
どんな貴族が住んでいたんだ。
俺は横目でクローゼットを見ながら奥へと進む。
「うあああぁぁぁ……!」
「おおおぉぉぉ……」
相変わらずクローゼットの中からも呻き声が聞こえる。
開けたらどうなるか想像するのは容易い。
当然無視だ。
ガタガタガタガタ……!
クローゼットの扉が小刻みに鳴る。
「な、何か居るよぉ」
「関係無い。無視しろ」
ルガの言葉を食い気味に遮る。
「漢らし過ぎるだろ……」
ガイが言った。
「開けたらどうなるか想像できるなら開けるな。それだけだ」
俺はそれ以上この件には触れたくない。
ずんずんと奥へと歩いた。
「行き止まりか……」
部屋の奥は壁になっている。
壁一面鏡張りだ。
やはり衣装だけの建物のようだな。
ヒビの入った巨大な鏡が壁一面に張られ、まるで一枚鏡のようだ。
「これだけでもかなりの高額になるわね」
オレコが鏡を見ながら言う。
だがせっかくの高額な鏡も、ヒビ割れて血糊がベッタリと付いていては何の値打ちも無いだろう。
血の手形が至る所に付着している。
「おい、ドアがあるぞ。あそこから抜けられそうだ」
ガイが横にある勝手口に気が付いた。
ならば長居は無用である。
とっとと抜けるとしよう。
俺は先頭を切って扉に向かった。
「ちょっ……!」
ディーレが甲高い声をあげた。
なんだ。
「か、鏡が……!」
鏡がどうした。
俺は鏡を覗き込む。
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