見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六三三

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 鏡を覗き込んだ俺を、鏡の中の俺は見ていなかった。
後方に居るルガを見ている。

「なんだと……」

 そんな馬鹿な。
俺は鏡の中の自分を凝視しているのだ。
何故、鏡の中の俺は俺を見ていない。

 俺は慌てて振り返る。
だがルガの側にはガイが居るだけだ。
何も変わった事は無い。
もう一度鏡を見る。

「この野郎……!」

 鏡の中の俺は、やはりルガを凝視していた。
ルガを標的にしているのか。

 ガシャアアーンッ!

 俺は鏡を打ち砕いた。
しかし。

 鏡の中の俺も同じように拳を繰り出していた。
拳と拳が打ち合う。
当たり前か。
鏡なのだから当然だ。

 割れた鏡が足下に落ちる。
俺は注意深く他の鏡に気を配った。

「何なの、さっきのは……」

 ディーレの声に緊張がうかがえる。

「お前ら、先に出ろ」

「お前は?」

「別に鏡に写っているだけなら無視する」

 そうじゃないなら、ぶちのめすだけだ。
それだけだ。

 バルバが勝手口の扉に手を掛ける。

 ガチャガチャガチャ

「開かない!」

「構わん、ぶち破れ!」

 ガイが叫びながら扉に体当たりを食らわせる。

 バアンッ!

 だがガイは扉に跳ね返されて尻餅をついた。

「何だこの扉は!クソ固ぇぞ!?」

 なるほど。
意地でもここから出さないつもりか。

「オレコ、何とかしろ」

 俺はオレコに言った。

「何とかねぇ……じゃあ」

 オレコが素早く床に魔方陣を描く。

「クリエイト・トラップ!」

 シュゴッ!

 オレコが言うのと同時に、床から巨大な石の柱が現れる。

 ゴギャバラバラッ!

 勢い良く延びた石柱が、そのまま天井を突き破って消えた。
残ったのは天井に開いた大きな穴だけだ。

「これで良いかしら」

「上出来だ」

 俺はオレコにそう言うと、残りの鏡に写らないように鏡の無くなった部分へと横に歩く。

「お前らは外に出ろ」

「るせえ、俺もやるぜ」

 ガイが言う。

「邪魔だ。出てろ」

「なんだと!」

「言っただろ、女を守れ。まだ敵は出てくるぞ。それに人数が居ると鏡に写る敵も増える。一人の方が良いんだ」

 ガイが舌打ちをする。

「ちっ!」

「オレコ、みんなを頼んだぞ」

「任せて、隊長殿」

 そう言ってオレコは、みんなを天井から外へと逃がした。

 さて。

 残ったのはこの鏡だけだが、写らなければどうと言う事も無い。
後は俺も写らないように脱出すれば良い。
こんな仕掛け、子供騙しだな。

 俺は注意深く天井の穴を目指す。

 ぬっ。

 なに。
鏡に俺は写っていない。
それなのに鏡の中の俺は、勝手に割れていない部分の鏡へと姿を現した。

「貴様……」

 鏡の中の俺は、完全に意思を持って勝手に行動している。
どうしても俺を行かせたく無いらしい。
だが所詮は鏡の中だ、どうにも出来まい。

 俺がそう思った瞬間。
鏡の中の俺がニヤリと笑った。

 ガシャーン!

 突然鏡を割って、中からもう一人の俺が飛び出して来た。
そんなのアリかよ。
だが俺はすぐにギョッとした。

 鏡の中にはまだ何人かの俺が居る。
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