見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六五二

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 長く続くと思われた時間だったが、意外と会話があった為、思いの外早く過ぎた。

「待たせたな諸君」

 不意にオオムカデンダルが戻ってきた。
早いな。

「もう終わったのか」

 俺はオオムカデンダルに尋ねた。

「ああ」

「で、アキラは?アキラはどうなった」

 ガイがオオムカデンダルに詰め寄る。

「成功したに決まっているだろう。まだ眠っているが……そうだな、一週間は安静だな」

「一週間も……」

「馬鹿たれ。普通は半月は安静だし、普通の生活に戻れるまで半年くらいだ。それでも以前の水準まで戻らない事だってある。それを完璧な状態まで回復させるのに一週間だ。目茶苦茶早いんだぞ」

 珍しくオオムカデンダルが結果を誇った。
まあ、この世界では凄すぎて誰も正確に評価を下せないんだから仕方が無い。
自分で言わないと伝わらないんだから、さぞやもどかしい事だろう。

「そうなのか……」

 ガイは少し冷静さを取り戻した。
科学が何なのか、俺でさえ今一つピンと来ていない。
ましてやガイたちにとっては尚更だ。
何か凄い魔法のような物で、すぐに回復すると思っていたのかもしれない。

 それを差し引いても、死んだ人間に悪魔の心臓を埋め込んで、神の呪縛を避けながら生き返らせるなど、そんな訳の判らない事はオオムカデンダルにしか出来ないであろう事は理解できる。

「それまで好きに過ごせば良い。ここに居ても良いし、西の繁華街に居るのも良いだろう」

「俺たちをアジトで過ごさせて良いのか?」

 ガイが意味ありげに言った。
挑発のつもりか。

「別に構わん。ここには誰も来れないし、出ていく事も不可能だからな。お前ら全員が暴れても制圧するのに五分も掛からん」

 オオムカデンダルは事も無げにそう言うと、運ばれてきたフルーツに手を伸ばす。

「ケーキも良いが俺は果物の方が好きだな。だが、この世界の果物は今一つだ。今度は果樹園でも作るか」

 オオムカデンダルはそう言って、綺麗に剥かれたオレンジを口に放り込んだ。
そんなに不味くも無いと思うがな。

「いいや、俺たちが食べてた物と比べると五段階以上劣るな。ま、品種改良なんてされていないから仕方が無いが」

 また訳の判らない事を。

「ふふ。俺たちが食べていた果物を食ったら腰を抜かすぞ」

 まさか。
たかがオレンジが旨いからと言って大袈裟な。
オレンジはオレンジだろう。

「ま、食った事の無いものを評価する事は出来んから仕方が無いな。お前たちは可哀想だな」

 何を果物一つで偉そうに。

「食は文化だぞ。不味いものを食って栄えた文明など無い。俺たちの国民には是非とも旨いものを食わせよう」

 オオムカデンダルはそう言ってまた一つオレンジを頬張った。

「……俺たちは街で過ごさせてもらう。噂の西の繁華街がどんな物か、見させてもらうとしよう」

「ああ、良いとも。一週間経ったら迎えをやる」

 その迎えは俺なんだろうな。

「レオ。送ってってやれ」

 迎えどころか見送りも俺だったか。
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