見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六五六

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「さて、当面の次の目標だが……」

「その前に百足」

 オオムカデンダルの発言に蜻蛉洲が割り込んだ。

「なんだ」

「街の状況なんだが、ここの所移住者が急増している。以前は空き家も多かったから問題無かったんだが、このままでは居住地が足りなくなるのは時間の問題だ」

「ふむ。場所の確保か」

「それでだな。居住地の拡大と合わせて区画整理もしようと思う。商売する為の商業地を作りたい。そこをマーケットにしよう」

 市場を作るのか。
今でも有るには有るが。

「あれは市場と言っても数件の店と路面商が集まっているだけだ。もっと本格的に場所を作る。他所から来て商売が出来るくらいの規模にしたい」

 余所者を受け入れて商売させるだと。
他国の人間を簡単に招き入れると言う事は、密偵も受け入れ放題と言う事だ。
どの領地も国も、一番目を光らせている部分だと言うのに、市場を解放すると言うのか。

「別に構わん。任せる」

 オオムカデンダルは蜻蛉洲に全権を委ねて丸投げした。
良いのか本当に。
金だって他国へ流出しかねないんだぞ。

「心配するな。うちで作り出す商品は世界一の品質だ。代わりは無い。他のゴミを買うくらいなら、皆うちで買う。代替品が無いと言うのは最強のメリットだ。すなわち金は集まる一方で流出など無い」

 蜻蛉洲が冷静に言った。
世界一とさらりと言ったな。
確かに高品質には違いないが……

「出店料も税も免除してやれ」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲に言った。

「当然そのつもりだ」

「なんだと」

 蜻蛉洲の返事にガイが驚きの声をあげた。

「じゃあどうやって儲けるんだ。出店料も取らない税も取らない、ネオジョルトってのは慈善事業の一団か!?」

 言いたい事はもっともだ。
俺も同じ事が言いたかった。

「楽市楽座か」

 晃が言った。
楽市楽座?
なんだそれは。

「ま、そう言う事だ。目先の端した金など要らん。そう困っている訳でもないしな」

「どう言う事だ?」

「そんな細かい金を集めるよりも、全国から商売人が集まる事の方が大きいと言う事だ。免税で、しかも出店に金も掛からない。誰でも商品さえ用意出来ればすぐ商売が出来る。商人ならここで商売したくなるだろう?蜻蛉洲はそれを言っている」

「全国から金と商品が集中する。物流の拠点だな。さて帝国はこの脅威に気付けるかな?」

 オオムカデンダルはそう言ってニヤリと笑った。
意味が判るととんでもないな。
確かに帝国と言えどもこれを放っておいたら大変な事になるだろう。

「帝国だけでは無い。隣の王国もその周辺も、時間が経てばもっと遠い国にまで影響は出るかもな」

「……お前らいつもそんな事を画策しているのか」

 そう言ったガイの額に汗が伝う。
やっとこの計画の重要性に気付いたようだ。

「恐ろしいな……視点が盗賊団の域を越えている」

 バルバが呟く。

「世界征服を志すからには、帝国なんぞに良いようにやられていては話にもならん。世界の面倒を見て養っていくくらいの覚悟が無ければな」

 オオムカデンダルはそう言って立ち上がった。
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