見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六六三

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 ボボッシュ!

光の束を浴びた騎馬が数騎蒸発した。
何だあれは。

「お、おい!」

 消えた騎馬隊員を見て残りの兵士も色めき立つ。
俺もあんなの見た事無いぞ。

「光属性の魔法じゃよ。我々の魔法とは比べ物にもならんわい」

 サルバスが興奮と畏怖の混ざったような声で言った。

 精霊が働いた気配も、魔力が循環した気配も無かった。
これが古代魔法か。

「そもそも同じ魔法でも全くの別物じゃ。魔法を発動させる根源が違う」

 魔法職でも無い俺には良く判らないが、サルバスが言うならそうなのだろう。
魔法を発現させる仕組みが違うと言う事か。

「しかし、威力は桁違いじゃな。我々の魔法であれは無理よの。一番近いのは神職の神聖魔法のように見えたが……」

 神聖魔法。
神の御力による奇跡を発現させる魔法。
神から直接の力を借りる為、相当な信仰心が無ければ発動さえさせられない。

 だがジャバウォックに信仰心があるとも思えんが。

「それが古代魔法じゃ。神を介さず神の奇跡を行使する。神にとっては面白く無かったのだろうの。故に神の手によって消し去られたとされておるが……さて」

 そんな理由で消された魔法なのか。
古代語自体、知る者は居ない。
一部の魔物の間でのみ残っていると。

「魔物は人間では無いからの。お目こぼしをもらったのかもしれんの」

 サルバスは興奮を堪えている。
それは声音からも伝わってきた。

「ふうん。神様ってのは意外と自分の稀少価値には敏感らしいな」

 オオムカデンダルが言った。
そんな言い方は無いだろう。

「だってそうじゃねえか。人間に簡単に神の力を行使されると困るんだろ。だから下位互換の現在の魔法と入れ替えたって訳だ」

 そうなのだろうか。
神の考えをなぞる事自体、俺には畏れ多い。
まあ、オオムカデンダルにそれを言っても栓無い事だが。

「キシャアアアア!」

 ジャバウォックが威嚇する。
騎馬隊はもはや戦意を削がれている。
こりゃ死ぬな。

「……助けても良いか?」

 俺は蜻蛉洲に尋ねた。

「何故?何か理由があるのか」

 いや、理由って。
理由が必要かね。
でもまあ、蜻蛉洲だしなあ。
理屈が通らないと、うんとは云わなさそうではあるが。

「さすがに目の前で人間が食い散らかされるのは見たくないんだが」

「そいつらは僕らに対して侵攻してきたんだぞ。見たい見たくないの問題では無い。見たくないなら目を閉じていろ」

 これだよ。
この男を理屈で納得させせられる人間など居るのか。

「ま、良いんじゃないの。やってみれば?」

 オオムカデンダルが割り込んだ。

「百足。指揮は僕が執っている。口出しは無用だ」

「判ってるって。でもよ、お前もあれのサンプル欲しいんだろ?」

「む……」

 図星か。
相手の心を突くのだけは上手いな。

「それは別に捕獲すれば良かろう」

「二度手間だろ。助けて恩も売れるかもしれんぞ?」

「恩に着なかったら?」

「そんときゃお前……」

 オオムカデンダルが一段声を低くした。

「殺せば?」
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