見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
665 / 826

六六四

 殺せば、か。

 オオムカデンダルは秘密結社の幹部だ。
邪魔になるなら排除する事を躊躇などするまい。
この組織の緩い雰囲気に時々をそれを忘れてしまう。
ネオジョルトは、別に思い付きで世界征服をしようとしている訳では無い。
……たぶん。

「その時の判断は任せる。とりあえず行くぞ」

 俺はそれだけ伝えると、木の上からジャバウォック目掛けて飛び掛かった。

 がっ!

 飛び蹴りがジャバウォックの顔を捉える。

「!?」

 兵士たちは驚いて目を白黒させた。

「な、誰だ!?お前は!」

「……変身」

 俺はそう言うと、その場でクルリと回転する。
正面に戻ると、俺の姿は一瞬でサフィリナックスへと変わっていた。

「ば、化物!?」

 兵士の言葉を無視して俺はジャバウォックに挑み掛かる。

 だっ!

 地面を蹴って駆け出す。
さっきのキックなど一ミリも効いていない事は明らかだ。
だが、本番はここからだ。

「とおっ!」

 飛び上がってジャバウォックの頭に膝蹴りを叩き込んだ。
目測で三メートル半と言ったところか。
ドラゴンに比べれば十分に小型だ。
しかし、モンスターとしては中型から大型に分類されるサイズだ。
生身で相手にするにはちょっと骨が折れる。

「キシャアアアア!」

 ジャバウォックが怒りをあらわにする。

 ばっ!

 翼が開いた。
ドラゴンの翼に形状は酷似している。
龍の眷族である事は間違い無さそうだな。

 ジャバウォックが翼を羽ばたかせて宙に舞い上がる。
空か。
俺は飛べないんだぞ。
地上からジャバウォックを見上げるしか無い。

「今のうちに撤退しろ。空からだと守りきれん」

 俺は兵士たちにそう告げた。

「しかし……!?」

 使命感か、正義感かは判らないが、兵士たちは撤退を渋った。

「サフィリナックスヒューイット!」

 俺は手首から触手を伸ばすとジャバウォックの首に絡ませた。

「キシャアアアアググ!!」

 ジャバウォックの首からわずかに煙が立ち上る。
しかし、強固な鱗に阻まれて毒は注入できない。
表面で毒が流れて、それがわずかに鱗を溶かしただけだった。

「キシャアアアア!キシャアアアア!」

 怒ったのか。
ジャバウォックが力強く上昇した。

「うおおっ!?」

 俺は引っ張られるように空中へと吊り上げられる。
見る間に地面が遠くなった。

「くそ……この野郎!」

 俺は右手でぶら下がったまま、何とかジャバウォックに近付こうともがく。

 ギューン

 グングンと上昇したジャバウォックが、突然弧を描いて反転する。
俺はジャバウォックの尻尾のように、振り回されて後を追う事しか出来ない。

「うおああっ!」

 一気に地面が近付く。
俺を地面に叩き付けるつもりだ。

「ブルルルアアッッ!」

 どかあっ!

「うおお!?」

 いななきが聞こえたかと思った瞬間、凄まじい衝撃が俺を襲う。
ジャバウォックごと吹き飛ばされて、錐揉みしながら墜ちていく。

 なんなんだ!?
俺は必死に辺りを見回す。

「グリフ……ヒポグリフ!?」

 ヒポグリフの燃える目が、爛々とこっちを見下ろしている。
あれの体当たりを食らったのか。

 鼻息から炎が見え隠れする。
相当の興奮状態だ。
縄張りを荒らされた思っているのか。

 だが、今はタイミングが悪い。
二体相手に兵士たちを守りきれない。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】1王妃は、幸せになれる?

華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。 側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。 ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。 そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。 王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

親世代ではなかったのですか?

立木
恋愛
親世代が「乙女ゲーム時代」だったと思っていたら、子世代も「乙女ゲーム」だった。 ※乙ゲー転生ですが要素は薄いです。 ※別サイトにも投稿。 ※短編を纏めました。