見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六七九

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 歩く俺に兵士たちの視線が集中した。
まあ、こんな姿形では目立つのも判るが。
コイツらは俺たちの事をどのくらい知っているのだろうか。

 ネオジョルトと知って、これから戦うと思っているのだろうか。
まさかこんな大軍勢で、本当に王女の護衛だなんて思っている奴は居まい。

「レオと言ったな」

 ヴァルキリーが追い付いて来た。

「お前らはいったい何なのだ?」

「何なのだ、とは?」

「人間ではあるまい」

「人間だが?」

 そう、人間だ。
元人間とも言えるが、体が機械仕掛けになったと言う以外、俺は何も変わっていない。

 昔、村の村長が入れ歯にしたと自慢していたが、あれだって改造人間と言えば改造人間だろう。
どこまで生身なら人間で、どこからが改造人間かなんて、まだ定義すら無いのだ。

「お前たちのような人間が居るか」

 俺はヴァルキリーの言葉に立ち止まった。

「人間は元々服など来ていない。武器も持っていない。だが今ここに居る兵士たちはみんな服も着ているし武器も防具も身に付けている。そうしたら人間じゃ無くなるのか?」

 俺はヴァルキリーに向かってそう言った。

「武器や防具は身に付けているのであって、手放せば体一つだ。ただの道具を手に持つのと、お前たちとでは違うだろう」

「どこが違うのだ。体の中に埋め込んでも武器は武器だろう。退役軍人が義足を着けているのを見た事がある。あれは人間では無いと?」

 ヴァルキリーは黙った。
我ながらオオムカデンダルに似てきたなと思う。
あまり嬉しくは無いな。

「つまり、お前たちは機械の体を持っていると」

「そこまで俺が詳しく教える義務は無い。後は上に聞いてくれ」

 俺はどこまで話して良いのか判らなくなって、話を打ち切った。

「ネオジョルトにはお前たちのような人間が何名も居るのだな」

 ヴァルキリーの話に俺は応じなかった。

「……ふふふ。これは良い英霊がまとめて期待できるな」

 コイツ、オオムカデンダルたちを英霊の戦列に加えられると思っているのか。
無駄だとは思うが忠告してやる必要も無い。
黙っていよう。

 そうこうするうちに、再びミスリル銀山へと戻ってきた。
メタルシェルはもう無い。
先に帰ったのか。

 別に良いんだが、どうもうちの幹部連中は後を放り出しっぱなしと言うのが多いな。
ヴァルキリーはどうする気だ。
コイツがこのまま帰ったら約束は果たせなくなるんだぞ。
それとも別にそれで良いと思っているのか。

 俺はため息を吐いた。
どうせ俺がやると思っているのだな。

「本隊は連れていけん。護衛なら数人にしろ。付いて来い」

 俺はヴァルキリーを振り返って言った。

「判った」

 ヴァルキリーは護衛の人間を三人だけ連れて付いてくる。
他はここからカッパー王国まで帰るのか。
ご苦労な事だ。
なんだか可哀想になってくるな。

「それからお前。口の聞き方が無礼だぞ。私は女神だ」

 ヴァルキリーが注文を付けて来た。
知ってるよ。
だが、俺はお前が嫌いだ。

「……うちはそう言う社風なんだよ。幹部にもこんなもんだ。文句言うな」

 嘘では無い。

「しかしだな……!」

「俺はアンタの部下じゃ無い。むしろネオジョルトではアンタは俺より下だ。俺は行動隊長だからな」

 ヴァルキリーは驚いた顔を見せたが、閉口した。
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