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六八〇
道すがら何匹かのモンスターを蹴散らしてアジトへと帰還した。
「お帰り。で?」
広間ではオオムカデンダルが俺の帰りを待っていた。
「一応連れて来た」
俺は後ろに立つヴァルキリーを前に出した。
「お前がここの首領か」
「まあ、そうだが……この人が女神様?」
オオムカデンダルが俺を見て言った。
「そうらしい」
「へえー」
オオムカデンダルは興味深そうに上から下までヴァルキリーを眺めた。
本人を前にして遠慮が無いな。
「オニヤンマイザーは?」
「蜻蛉洲なら研究室だろ。新しいモンスターを手に入れて上機嫌だ」
オオムカデンダルが肩をすくめる。
責任を持って出て行った筈なんだがな。
モンスターをゲットしたら他を忘れてしまうのが蜻蛉洲の悪い癖だ。
「これで全員か?」
ヴァルキリーがオオムカデンダルに尋ねた。
「いや、あと数名居るが何をしているかは知らん。街で作業しているんじゃないか。最近はあっちも忙しくてね」
言ったそばからフィエステリアームが戻ってきた。
どこへ行っていたんだ。
「帝国に今日の分のケーキを届けて来た」
フィエステリアームは素っ気なくそう言って、定位置に座る。
秘密結社と言うよりもケーキ屋だな。
「来たか」
九条晃も広間に入って来た。
ヴァルキリーの目的が九条晃なら、彼が居ないと始まらない。
「突然だが今日から世話になる」
ヴァルキリーが唐突に言った。
転がり込む気か。
「いや、アンタは王女だろ。王国はどうするんだ」
俺は後ろで居心地悪そうにしている兵士たちの代わりに尋ねた。
「王国は手遅れだ。今戻ってもこのサンドラが危険に晒されるだけだ」
ヴァルキリーは自分の胸に手を当てて言った。
折れた腕はもう治ったのか。
「帝国がどうか知らんが、王国は権力闘争の 真っ只中でな。プニーフタールの餌場になっているとも知らずに互いに足を引っ張りあっている。このサンドラも近いうちに暗殺される予定だ」
権力者ってのはそんな事にしか興味が無いのか。
亡国の危機だと言うのに。
「自分が権力を掌握さえすれば、いくらでも事態を挽回できると考えているのだ。愚かな事だ」
その程度で何とかなるなら、邪神など何の脅威も無い。
肌身で恐怖を感じないと、人間などこんな物かもしれない。
「バルログから身を守る為にあれだけの兵士を連れてきた訳では無いぞ。サンドラを守る為に、そして戦を始めさせない為に、城に兵士を残しておきたく無かったのだ。帝国に最近出来た街を取るべきだと主張する大臣も増えたからな。勇み足で出兵されても困る」
西の繁華街の事か。
やはり隣国にとっては邪魔なのか。
いや、羨ましいのか。
取ってしまおうと言うのはそう言う事だろう。
「ふふふ。別に構わんよ。取れる物なら取ってみれば良い。もちろん抵抗はするが」
オオムカデンダルが面白そうに笑みを浮かべた。
彼らの力を示す良い機会になると考えているのだろう。
返り討ちにするのが一番良い。
非を相手に押し付けつつ、力を示せるのだから。
上手く行けば相手に巨額の賠償も請求できる。
「そう言う訳だからサンドラの体のまま世話になる」
ヴァルキリーは勝手に決めた。
「そっちの兵士はどうするんだ。良いのか?」
「わ、我々はどこまでも王女殿下に付いて行く所存だ」
オオムカデンダルの問いに、若い兵士が答える。
「良くしつけてあるな。良いだろう。許可しよう」
オオムカデンダルが言った。
「お帰り。で?」
広間ではオオムカデンダルが俺の帰りを待っていた。
「一応連れて来た」
俺は後ろに立つヴァルキリーを前に出した。
「お前がここの首領か」
「まあ、そうだが……この人が女神様?」
オオムカデンダルが俺を見て言った。
「そうらしい」
「へえー」
オオムカデンダルは興味深そうに上から下までヴァルキリーを眺めた。
本人を前にして遠慮が無いな。
「オニヤンマイザーは?」
「蜻蛉洲なら研究室だろ。新しいモンスターを手に入れて上機嫌だ」
オオムカデンダルが肩をすくめる。
責任を持って出て行った筈なんだがな。
モンスターをゲットしたら他を忘れてしまうのが蜻蛉洲の悪い癖だ。
「これで全員か?」
ヴァルキリーがオオムカデンダルに尋ねた。
「いや、あと数名居るが何をしているかは知らん。街で作業しているんじゃないか。最近はあっちも忙しくてね」
言ったそばからフィエステリアームが戻ってきた。
どこへ行っていたんだ。
「帝国に今日の分のケーキを届けて来た」
フィエステリアームは素っ気なくそう言って、定位置に座る。
秘密結社と言うよりもケーキ屋だな。
「来たか」
九条晃も広間に入って来た。
ヴァルキリーの目的が九条晃なら、彼が居ないと始まらない。
「突然だが今日から世話になる」
ヴァルキリーが唐突に言った。
転がり込む気か。
「いや、アンタは王女だろ。王国はどうするんだ」
俺は後ろで居心地悪そうにしている兵士たちの代わりに尋ねた。
「王国は手遅れだ。今戻ってもこのサンドラが危険に晒されるだけだ」
ヴァルキリーは自分の胸に手を当てて言った。
折れた腕はもう治ったのか。
「帝国がどうか知らんが、王国は権力闘争の 真っ只中でな。プニーフタールの餌場になっているとも知らずに互いに足を引っ張りあっている。このサンドラも近いうちに暗殺される予定だ」
権力者ってのはそんな事にしか興味が無いのか。
亡国の危機だと言うのに。
「自分が権力を掌握さえすれば、いくらでも事態を挽回できると考えているのだ。愚かな事だ」
その程度で何とかなるなら、邪神など何の脅威も無い。
肌身で恐怖を感じないと、人間などこんな物かもしれない。
「バルログから身を守る為にあれだけの兵士を連れてきた訳では無いぞ。サンドラを守る為に、そして戦を始めさせない為に、城に兵士を残しておきたく無かったのだ。帝国に最近出来た街を取るべきだと主張する大臣も増えたからな。勇み足で出兵されても困る」
西の繁華街の事か。
やはり隣国にとっては邪魔なのか。
いや、羨ましいのか。
取ってしまおうと言うのはそう言う事だろう。
「ふふふ。別に構わんよ。取れる物なら取ってみれば良い。もちろん抵抗はするが」
オオムカデンダルが面白そうに笑みを浮かべた。
彼らの力を示す良い機会になると考えているのだろう。
返り討ちにするのが一番良い。
非を相手に押し付けつつ、力を示せるのだから。
上手く行けば相手に巨額の賠償も請求できる。
「そう言う訳だからサンドラの体のまま世話になる」
ヴァルキリーは勝手に決めた。
「そっちの兵士はどうするんだ。良いのか?」
「わ、我々はどこまでも王女殿下に付いて行く所存だ」
オオムカデンダルの問いに、若い兵士が答える。
「良くしつけてあるな。良いだろう。許可しよう」
オオムカデンダルが言った。
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