見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六九二

「……凄まじいな。バルログをたった一人で肉塊にしてしまうか」

 ヴァルキリーが信じられないと言った顔で俺を見た。

「お前こそ護衛はどうした」

「死んだよ。さっきのバルログの魔法で、下はマグマ溜まりになってしまった」

 こいつ。
部下が死んだのはお前の為だろう。
何とも思わないのか。

「何故だ?私が人間の生死を気にしなければならんのか」

「お前はその人間の魂を集めているのでは無いか」

「ただの人間では無い。英霊だ。人間も牛や馬の革を必要とするだろう。だからと言って牛や馬を家族のように扱うのか?」

「家族とは違っても大事にはするだろう」

「それはどの牛や馬からでも革が採れるからだろう。人間は誰でも英霊な訳では無い」

 ヴァルキリーは少しも人間と言うものを顧みない。
コイツには何を言っても無駄か。
俺は相手にするのをやめた。

 だがこれでプニーフタールを復活させようと言う輩は居なくなった。
何だか実感は湧かないが、これで俺の当面の目的は達成された。

「やったぞ……」

 俺は小さく呟いた。
自然と拳にも力がこもる。
バルログの肉塊を拾うと、俺はメタルシェルへと戻った。
持って帰れば少しは蜻蛉洲も喜ぶかもな。
そんな気になったのは、俺も少しは浮き足だっていたのかもしれない。

 ヴァルキリーはさも当然のように後に付いて来て、自分もメタルシェルに乗り込んだ。
こんなヤツをいつまで置いておく気だ。
俺はため息を吐いてからメタルシェルを発進させた。

 だが、まだやる事はある。
ミーアだ。
妹の記憶を何とかしなければ。
それに『彼女』の状態も気になる。
オオムカデンダルは言いたがらなかったが、もうこれ以上は待てん。
せめて、どうなっているのかだけでも聞かなければ。

 西の繁華街の状況も気になるし、益々増えてくる移住者の対応も、このままでは追い付かなくなる。
簡単に言えば、領地が足りないのだ。
しかし、増やすとなると当然帝国との戦争になる。

 帝国からしてみれば、西の繁華街も別に手放したつもりはあるまい。
帝国の認識では、未だ西の繁華街は依然として帝国の領地である。

 それを更に領地を寄越せと言えば、戦争になるのは火を見るよりも明らかだった。
まあ、戦争になったとしてネオジョルトが負ける可能性はほとんど無い。
ゼロと言っても良いだろう。

 少しばかり領地を手に入れても、どうせすぐ足りなくなる。
その都度戦争するのは馬鹿馬鹿しい限りだ。

 だったら最初から帝国を寄越せと言った方が話は早い。
俺はハッとした。

 戦争するつもりなのか。
まさか。
オオムカデンダルは戦争も厭わないだろうが、それはおそらく最後の手段の筈だ。
必要もなく蹂躙するのはオオムカデンダルの望む所では無い。

 プニーフタール復活の阻止を達成しても、ネオジョルトの活動は別に終わらないのだと改めて俺は思った。
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