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六九三
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アジトに戻ると、バルログの肉塊を蜻蛉洲に届けた。
予想していた以上に蜻蛉洲は喜んだ。
こんな物、何が嬉しいのか判らないがとにかく良かった。
それからまた広間に戻った。
「早かったな」
オオムカデンダルが開口一番そう言った。
「まさか本当に勝ってしまうとはな。強くなっているとは言え、成長のスピードが早いぞ」
オオムカデンダルは良くやったと言ったが、言っている事と態度が逆だ。
褒めながらも態度は拗ねたような態度だった。
負けて欲しかったようだが、そうはいかない。
「これでプニーフタールの件はおしまいだ。オオムカデンダル、今度こそ本当の事を話してもらうぞ」
俺はどかっと腰を下ろす。
この部屋で俺が席に着く事は珍しい。
いつも何かしているか、任務でここには居ないからな。
オオムカデンダルが横目で俺を見る。
明らかに憂鬱な表情を見せた。
「本当の事って?」
オオムカデンダルがしらばっくれる。
そうはいくか。
「彼女の事だ。もう、治っている筈だ。違うだなんて言わせんぞ。俺だってもうネオジョルトの事は判っている。治せるならもうとっくに治っている筈だ」
俺は語気を強めてオオムカデンダルをじっと見た。
オオムカデンダルが腕組みをする。
追求されたくない気持ちが態度に出たか。
「なあ、ちょっと待てよ。こっちにだって都合と言う物があ……」
「十分に待った。アンタたちならとっくに治せてなければおかしい。ひょっとして失敗したのか?」
俺は恐れていた一言を遂に口にした。
今までも考えなかった訳じゃ無い。
ただ、考えないようにしていただけだ。
どんな凄い人間だって、失敗はあるだろう。
オオムカデンダルと言えども全くの失敗が無いとは思わない。
思わないが……
俺は言葉を飲み込んだ。
テーブルの上の拳が震えた。
考えないようにしてきたのに、ここまで来たら込み上げる気持ちを抑えきれない。
自分で口にして、この先どう言葉を続ければ良いのか判らなかった。
言いたくないのだ。
『失敗したのか?』とはとても言えない。
もしも『そうだ』と返ってきたら、俺は何の為にここまで来たんだ。
人間の体を捨てて、ヴァンパイアやマンモンやバルログとも戦って、何度も死ぬ思いをしてここまで来たのに。
いや、一度は死んだんだったな。
俺はそう考えて笑った。
乾いた笑いが口から漏れ出る。
完全に化け物になってしまった。
もう何も無い。
死ぬ事さえ出来ない。
俺は死ねないのだ。
目的も無く、後は永遠に生きなければならない。
ただ、化け物になったと言う事実だけが残った訳だ。
「はぁ……」
オオムカデンダルが溜め息を吐いた。
「……彼女に、今はお前に会えないと言われている」
なに?
俺は顔を上げて、オオムカデンダルを見た。
今、何と言った?
生きているのか?
「生きていると言っている。だが、お前はそれも嘘だと思い始めているのだろう。だが生きているぞ。俺は冗談は言うが嘘は言わん」
本当に?
本当に生きているのだな?
「本当だ。無事に生きている」
良かった。
本当に良かった。
俺は心臓が早鐘の如く鳴るのを感じていた。
オオムカデンダルが嘘は言わんと言った。
信じて良いだろう。
この男は嘘は言わない。
嫌な男だが、それは信用できる。
予想していた以上に蜻蛉洲は喜んだ。
こんな物、何が嬉しいのか判らないがとにかく良かった。
それからまた広間に戻った。
「早かったな」
オオムカデンダルが開口一番そう言った。
「まさか本当に勝ってしまうとはな。強くなっているとは言え、成長のスピードが早いぞ」
オオムカデンダルは良くやったと言ったが、言っている事と態度が逆だ。
褒めながらも態度は拗ねたような態度だった。
負けて欲しかったようだが、そうはいかない。
「これでプニーフタールの件はおしまいだ。オオムカデンダル、今度こそ本当の事を話してもらうぞ」
俺はどかっと腰を下ろす。
この部屋で俺が席に着く事は珍しい。
いつも何かしているか、任務でここには居ないからな。
オオムカデンダルが横目で俺を見る。
明らかに憂鬱な表情を見せた。
「本当の事って?」
オオムカデンダルがしらばっくれる。
そうはいくか。
「彼女の事だ。もう、治っている筈だ。違うだなんて言わせんぞ。俺だってもうネオジョルトの事は判っている。治せるならもうとっくに治っている筈だ」
俺は語気を強めてオオムカデンダルをじっと見た。
オオムカデンダルが腕組みをする。
追求されたくない気持ちが態度に出たか。
「なあ、ちょっと待てよ。こっちにだって都合と言う物があ……」
「十分に待った。アンタたちならとっくに治せてなければおかしい。ひょっとして失敗したのか?」
俺は恐れていた一言を遂に口にした。
今までも考えなかった訳じゃ無い。
ただ、考えないようにしていただけだ。
どんな凄い人間だって、失敗はあるだろう。
オオムカデンダルと言えども全くの失敗が無いとは思わない。
思わないが……
俺は言葉を飲み込んだ。
テーブルの上の拳が震えた。
考えないようにしてきたのに、ここまで来たら込み上げる気持ちを抑えきれない。
自分で口にして、この先どう言葉を続ければ良いのか判らなかった。
言いたくないのだ。
『失敗したのか?』とはとても言えない。
もしも『そうだ』と返ってきたら、俺は何の為にここまで来たんだ。
人間の体を捨てて、ヴァンパイアやマンモンやバルログとも戦って、何度も死ぬ思いをしてここまで来たのに。
いや、一度は死んだんだったな。
俺はそう考えて笑った。
乾いた笑いが口から漏れ出る。
完全に化け物になってしまった。
もう何も無い。
死ぬ事さえ出来ない。
俺は死ねないのだ。
目的も無く、後は永遠に生きなければならない。
ただ、化け物になったと言う事実だけが残った訳だ。
「はぁ……」
オオムカデンダルが溜め息を吐いた。
「……彼女に、今はお前に会えないと言われている」
なに?
俺は顔を上げて、オオムカデンダルを見た。
今、何と言った?
生きているのか?
「生きていると言っている。だが、お前はそれも嘘だと思い始めているのだろう。だが生きているぞ。俺は冗談は言うが嘘は言わん」
本当に?
本当に生きているのだな?
「本当だ。無事に生きている」
良かった。
本当に良かった。
俺は心臓が早鐘の如く鳴るのを感じていた。
オオムカデンダルが嘘は言わんと言った。
信じて良いだろう。
この男は嘘は言わない。
嫌な男だが、それは信用できる。
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