700 / 826
六九九
しおりを挟む
勝手に他国の中に領地を作っておいて、その言い方は無いだろう。
「な、き……貴様……!」
「じゃあ聞くが将軍。アンタは西の繁華街が帝国にとってどんな役目を果たしているか知っているか?」
「なに?」
「西の繁華街は貧民街とセットだ。スリ、窃盗団、地下組織、ギャング何でもござれの暗黒街だ。そいつらがしのぎを削っていた町が、帝国にとってどれ程の価値があるのか。どの程度重要な位置にあるのか。アンタは説明できるかい?」
「む……」
ライエルは言葉を呑み込んだ。
「繁華街なら帝国内に幾つかあるが、その中で西の繁華街は中間層よりもやや下に位置する人々の繁華街だ。身も蓋も無い言い方をすれば下品な街だ。犯罪組織の温床になっているこの街が、本当に帝国にとって必要か?俺はそうは思わんね。実際、帝国は富裕層重視、富裕層優遇の政策しか執っていない。経済的に見て、東や中央の繁華街の方が帝国にとっては大事だろ?富裕層様の憩いの街だからな」
確かにそうだ。
西の繁華街は帝国の中でもうらぶれた街だ。
たいして目にも掛けてもらえず、都落ちした人たちも少なくない。
言ってみれば、追いやられた貧しい者たちの街だ。
そのくせ圧政の対象になっており、帝国内の様々な鬱憤を晴らす為にスケープゴートにされている節もある。
「要らんだろ?西の繁華街など帝国にとってはただのゴミ溜めだ」
ライエルは言葉を返せない。
全て事実だからだ。
帝国にとって西の繁華街などあっても無くてもどっちでも良い。
存在するが使い道が無いから、帝国国民の憂さ晴らしにいたぶられているだけの存在だ。
「だったら俺たちに売った方が良かろう?しかも言い値で買うんだ。ゴミを言い値で売れるんだぜ?精々吹っ掛ければ良い。それでも買おうじゃないか」
本気か。
力で奪う事も容易いのに、それをしかも言い値で買うだなどと。
いや、金で済むならその方が安いと考えているのだ。
オオムカデンダルとはそう言う男だ。
金の価値は彼にとってたいした事では無い。
もっと価値の在る物を、むしろ安く買っている。
そう言う感覚なのだ。
「……言い値とな。本気かの?後悔するかもしれぬぞ?」
「しないね。遠慮するな。どーんと吹っ掛けてみろ」
蚊帳の外とは言え、そばで聞いててドキドキしてきた。
顔を見るに、ライエル将軍も同じ様子だ。
「……なるほどのう」
ソル皇子が微笑みながら目を閉じた。
何かしら考えを巡らせているようだ。
「そうじゃの。では……金貨十万枚でなら売ってやっても良いぞ」
ソル皇子が涼しげな顔で言った。
ライエル将軍が思わず噴き出す。
「はっはっはっはっはっ!なるほど、それは良い考えでございますな!はっはっはっはっはっ!」
金貨十万枚だと。
帝国に流通する全ての金貨をかき集めても、十万枚枚は無い。
帝国の国家財政を軽く上回る金額だ。
吹っ掛けろとは言ったが限度があるだろう。
まさか、ソル皇子もさすがに領地を売りたくは無いのか。
そりゃあ、そうかもしれないが。
俺は呆然とソル皇子とオオムカデンダルの顔を見比べた。
「なるほど。良い線行ってるな」
オオムカデンダルも涼しげな顔で答えた。
良い線行っている?
「壱千億円か。ま、妥当な所だな。俺たちによって、今後もっと価値は上がっていくが、現状はそんなもんだろう」
壱千億エン?
良く判らんがオオムカデンダルは想定内の金額提示と見たのか。
もう俺には訳が判らなかった。
「じゃあ決まりだな」
「待て、こちらも要求がある」
ソル皇子が笑みを絶やさず続ける。
「なんだ?」
オオムカデンダルが首をかしげる。
「全てジョルターでの支払いにしてたもれ」
俺は更に驚いた。
「な、き……貴様……!」
「じゃあ聞くが将軍。アンタは西の繁華街が帝国にとってどんな役目を果たしているか知っているか?」
「なに?」
「西の繁華街は貧民街とセットだ。スリ、窃盗団、地下組織、ギャング何でもござれの暗黒街だ。そいつらがしのぎを削っていた町が、帝国にとってどれ程の価値があるのか。どの程度重要な位置にあるのか。アンタは説明できるかい?」
「む……」
ライエルは言葉を呑み込んだ。
「繁華街なら帝国内に幾つかあるが、その中で西の繁華街は中間層よりもやや下に位置する人々の繁華街だ。身も蓋も無い言い方をすれば下品な街だ。犯罪組織の温床になっているこの街が、本当に帝国にとって必要か?俺はそうは思わんね。実際、帝国は富裕層重視、富裕層優遇の政策しか執っていない。経済的に見て、東や中央の繁華街の方が帝国にとっては大事だろ?富裕層様の憩いの街だからな」
確かにそうだ。
西の繁華街は帝国の中でもうらぶれた街だ。
たいして目にも掛けてもらえず、都落ちした人たちも少なくない。
言ってみれば、追いやられた貧しい者たちの街だ。
そのくせ圧政の対象になっており、帝国内の様々な鬱憤を晴らす為にスケープゴートにされている節もある。
「要らんだろ?西の繁華街など帝国にとってはただのゴミ溜めだ」
ライエルは言葉を返せない。
全て事実だからだ。
帝国にとって西の繁華街などあっても無くてもどっちでも良い。
存在するが使い道が無いから、帝国国民の憂さ晴らしにいたぶられているだけの存在だ。
「だったら俺たちに売った方が良かろう?しかも言い値で買うんだ。ゴミを言い値で売れるんだぜ?精々吹っ掛ければ良い。それでも買おうじゃないか」
本気か。
力で奪う事も容易いのに、それをしかも言い値で買うだなどと。
いや、金で済むならその方が安いと考えているのだ。
オオムカデンダルとはそう言う男だ。
金の価値は彼にとってたいした事では無い。
もっと価値の在る物を、むしろ安く買っている。
そう言う感覚なのだ。
「……言い値とな。本気かの?後悔するかもしれぬぞ?」
「しないね。遠慮するな。どーんと吹っ掛けてみろ」
蚊帳の外とは言え、そばで聞いててドキドキしてきた。
顔を見るに、ライエル将軍も同じ様子だ。
「……なるほどのう」
ソル皇子が微笑みながら目を閉じた。
何かしら考えを巡らせているようだ。
「そうじゃの。では……金貨十万枚でなら売ってやっても良いぞ」
ソル皇子が涼しげな顔で言った。
ライエル将軍が思わず噴き出す。
「はっはっはっはっはっ!なるほど、それは良い考えでございますな!はっはっはっはっはっ!」
金貨十万枚だと。
帝国に流通する全ての金貨をかき集めても、十万枚枚は無い。
帝国の国家財政を軽く上回る金額だ。
吹っ掛けろとは言ったが限度があるだろう。
まさか、ソル皇子もさすがに領地を売りたくは無いのか。
そりゃあ、そうかもしれないが。
俺は呆然とソル皇子とオオムカデンダルの顔を見比べた。
「なるほど。良い線行ってるな」
オオムカデンダルも涼しげな顔で答えた。
良い線行っている?
「壱千億円か。ま、妥当な所だな。俺たちによって、今後もっと価値は上がっていくが、現状はそんなもんだろう」
壱千億エン?
良く判らんがオオムカデンダルは想定内の金額提示と見たのか。
もう俺には訳が判らなかった。
「じゃあ決まりだな」
「待て、こちらも要求がある」
ソル皇子が笑みを絶やさず続ける。
「なんだ?」
オオムカデンダルが首をかしげる。
「全てジョルターでの支払いにしてたもれ」
俺は更に驚いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる