見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
709 / 826

七〇八

しおりを挟む
「インプじゃない?」

 後ろからオレコが口を挟む。
インプ?
あのニーズヘッグの時のアイツか。

 俺はすっかり忘れていた。
あまり意識もハッキリしていなかったが、そう言えばアイツはまだ死んでいない筈だ。

「そう言う事だ。お前が片足もいじまったけどな」

 オオムカデンダルがそう言って笑う。

「片足のままかどうかは判らんが、それで死んだとは考えられないだろ。プニーフタールの不完全体みたいなのが連れ去った事を考えると、もっともプニーフタールにとっては重宝する存在なのかもな」

 確かインプはサタンの一部だとか何とか。
プニーフタールはそこを気に入っているのか。

「プニーフタール復活は間も無くだと言っていたからな。御礼参りには必ず来るぜ。奴はお前に対して恨み骨髄だ」

 そう言うオオムカデンダルの表情は嬉しそうだ。
面白がっているのか。
今更オオムカデンダルの性格を云々しても仕方がない。

 やる事がハッキリしてくれば俺のモヤモヤも多少は解消される。
さっきよりは幾分マシだな。

「そうだ。この際だからアレをお前に見せてやろう」

 オオムカデンダルは急に何かを思い出して俺を見た。
アレ?
アレって何だ。

「良いものだ」

 そう言うと立ち上がり、オオムカデンダルが付いて来いと俺を呼んだ。
何だよ。
あんまり良い予感はしないが。

 俺は黙って付いて行く。
地下に向かっているな。
格納庫か?

 俺はあれこれ予想を立てながら歩いた。
エレベーターに乗る。
やっぱり格納庫に向かっている。
と言う事は、なんかデッカい物なのか。

 何を見せると言うのか。
見せびらかしたい物。
自慢したいって事なのか。

 さっぱり見当もつかなかったが、やがて俺たちは格納庫に辿り着く。

「アレを見ろよ」

 オオムカデンダルがアゴでそれを指した。
俺はその視線を追う。

 なんだこりゃ。
メタルシェルをもっと大きくしたような、巨大な四角い箱だ。
見た感じ金属なのはすぐに判るが、乗り物なのか。

「いやあ、ミスリル銀山に拠点を構えて本当に良かった。見ろよコイツを。大部分に惜しみ無くミスリル銀を使っているんだぜ」

 こんなに巨大な建造物が、ほとんどミスリルだと言うのか。

「外側は特殊合金だがね。内側はほとんどミスリルだ。ちなみに藍眼鉱も三〇パーセントほど使っているぞ」

 どんな高級品だよ。これ一つで小国が三つ、四つ買えそうだな。

「買えるだろうなあ。売らんけど」

 そう言ってオオムカデンダルが嬉しそうにこの巨大な金属の箱を見上げた。

「で、これは何なんだ?」

 俺は結局の所、何だか判らないこの物体の正体を尋ねた。

「ふふふ。NJ・01。通称ガーディアンだ」

 ガーディアン?
守護神て事か。

「その通り。コイツに勝てるヤツなんかこの世界には居ないね。これが完成したと言う事は、俺たちにもう敵は居ないと言う事だ」

 オオムカデンダルがうそぶく。
まあ、今でもアンタらに勝てそうな奴は見当たらないが。

「プニーフタールだろうが、ドラゴンだろうが、文句があるなら掛かって来い!」

 誰も文句なんて無いと思うが、彼がここまで大見得を切ると言う事は、相当な自信作なんだろう。

 余計な災いを呼び寄せなければ良いが、と、つい要らぬ心配をしてしまうのは心配性なせいだけだろうか。
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...