見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七四二

 範囲は結構広い。
とは言え、フェンスで囲ったお陰で限定的ではある。
一応色々と考えてはいるんだな。

「おい、これじゃないか?」

 オオムカデンダルが声を上げた。
近付いてみる。

 うにょうにょ

 何だこれは。
スライムのようだが。

「スライムじゃな」

 賢者サルバスが脇から顔を覗かせて言った。

「じいちゃん。平気なのか?」

「あんまり暑いから冷却魔法を使っとる」

 サルバスはそう言うとローブを手で掴まえて振った。
ヒンヤリとした冷気が漂ってくる。
なるほど、便利だな。

「これがスライムか」

 隣でオニヤンマイザーが話を元に戻した。

「そうじゃ」

「て事は、邪神はスライムの集合体?」

「逆じゃな。邪神の体液や老廃物がスライムじゃ」

 オオムカデンダルの疑問にサルバスが脇から答えた。

「あ、なるほど」

 スライムはそう珍しいモンスターでは無い。
意志や意識があるかは諸説有るが、往々にして知能は高くない。
単純で原始的な行動パターンを持つ低級モンスターだ。

 これがプニーフタールの体液だとすると、スライムはプニーフタールがこの世に現れて以降のモンスターと言う事になる。

 蜻蛉洲が、モンスターを調べれば世界が判ると以前言っていたが、こう言う事か。

「そう言う事だ」

 オニヤンマイザーはそう言って、プニーフタールの一部を瓶に閉じ込めた。

「全部採取するのか?」

「いや、一つか二つで良いだろう」

 俺が聞くとオニヤンマイザーはそう答えた。

「残りはどうするんだ」

「放っておけ。どうせスライムなんだろ?その辺に幾らでも居るだろ」

 確かに。
まあ、スライムだから無害と言う訳でも無いんだが。
目に付いたら駆除しておこう。

「こんなスライムでプニーフタールの何が判るんじゃ?」

「死にたてホヤホヤですからね。一般のスライムよりプニーフタールの情報を多く有しているでしょう。情報が劣化していない」

「ふむ。新鮮だと言う事じゃな?」

「その通りです」

 オニヤンマイザーとサルバスは難しい話に傾倒していった。
これ以上は俺が聞いてもちんぷんかんぷんだ。

「オオムカデンダル。ヴァルキリーはどうなった?」

 俺はオニヤンマイザーの側を離れてオオムカデンダルに尋ねた。

「ウロコフネタマイトが捕獲しているらしい。ほれ」

 何かに気付いてオオムカデンダルが後ろをアゴで指した。
俺はつられて振り向いた。
そこにはヴァルキリーを後ろ手に掴まえたウロコフネタマイトの姿があった。

「ずいぶん派手にやったわねぇ」

「フェンス建てたり、結構気を使ったんだがなあ」

「うふふ。良いんじゃない?それよりホラ」

 ウロコフネタマイトは掴まえていたヴァルキリーを地面に転がした。

 どさっ

 ヴァルキリーが地面に倒れてからこっちを見上げる。

「貴様ら……女神にこんな……!」

「あら、何を今更。私たちの事、十分に理解して行動していたんでしょうに」

 答えは簡単だ。
驕りから俺たちを見誤ったのだ。
女神が人間に負ける訳が無いと、ましてやプニーフタールを倒せる筈が無いと、タカをくくったのだ。

 身分の高い物には時々見掛ける反応だ。
女神もそうだとは思わなかったが、コイツを見ていると神に対する認識も改まる。

「プニーフタールを倒したのか……そんな馬鹿な」

「別にそんなに馬鹿な事でも無いと思うが。蟻から見れば人間だって無敵に見える。だが実際にはそうでは無い。それだけの話だ」

 オオムカデンダルはこちらも見ずに、興味なさ気に言った。
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