見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七四六

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「お、レオ」

 廊下に出ると、カルタスとトラゴスに出会った。
相変わらず仲が良いな。

「別にそう言う訳じゃ無えけどよ」

 カルタスがそう言ったが、トラゴスはしっかりとカルタスの腕に掴まっていた。

「オレコは?」

「さあ?別にいつも一緒って訳じゃ無えよ」

 カルタスが笑う。

「そんな事より、お前は何してんだ」

「転勤だよ」

「は?」

「転勤だよ。転勤。緑の谷へ行けってさ」

「緑の谷って、ここの屋敷が在るとこだろ?本館て言やあ良いのか?」

 まあ何て呼ぶのが正しいかは判らんが、とにかくそこだ。

「じゃあ、俺たちもすぐに支度するぜ。いつ出るんだ?」

「今すぐだ。お前たちは来なくて良い」

 カルタスが固まった。

「何で?」

「何でとは?」

「何で俺たちは来ちゃいかんのか」

「別にいかんとかそう言う事を……」

「最近出番が少ないじゃねえか。この前も留守番だったしよ。俺にも一枚噛ませろい!」

 どうやら不完全燃焼だったらしい。
お前こそ、この前まで引退して花屋を経営してたじゃないか。
何を今更暴れ足りないような事を。
 
「お前と一緒だと飽きないからだろ。なあ、連れてけよ」

「だーめだ。それにこんな状況では、またここが狙われる可能性は高い。頼りになる奴は独りでも多い方が良いんだ」

 カルタスがジーッと俺の目を見た。

「また、そんな言い方で俺をあしらおうとしているな」

 そう言う言い方はよせ。
多少はその通りだが。

「ちっ……仕方が無え。判ったよ。今回だけは言う事聞いてやる」

 カルタスはため息を吐いた。

「助かる」

「その代わり今度は絶対暴れさせろよ。絶対だからな!」

「判った。必ずそうしよう」

 カルタスはそう言うと、俺の肩を叩いて通り過ぎて行った。
アイツ、意外と寂しがり屋なのか。
俺はカルタスを見送ると、また歩き出した。

 外へ出る。
このままボードでひとっ飛びだな。
歩けば相当な距離になるが、今では『ちょっとそこまで』の感覚だ。

「歩けば一ヶ月か……」

 俺は呟いてみて、それからボードを呼び出した。
足元にスーッとボードが滑り込んでくる。
それに片足を乗せて、地面を蹴り出した。

 ひゅー……

 音も無く静かにボードが滑り出す。
そして急上昇してスピードを上げる。
特に荷物も何も無い。
身一つだ。
特に何も聞いていないし、向こうに着けば管理人が何でもしてくれる。
困る事など何も無い。

 小一時間も飛んだ所で緑の谷へと差し掛かった。
その名の通り、緑に囲まれた森林地帯。
人を寄せ付けず、高レベルのモンスターが時々出没すると言う緑の谷。

 そう言えば、その高レベルモンスターにお目に掛かった事は無いな。
俺は何となくそんな事を考えた。
確かにモンスター自体は出没するが、高レベルと言える程の高レベルモンスターは記憶に無い。

 ミスリル銀山の方が、よっぽど高レベルのモンスターが出没している。
思いつく限りで高レベルモンスターと言えば。

「彼らしか……」

 ひょっとして、何十年にも渡って恐れられていた高レベルのモンスターとは、彼ら本人なんじゃないのか?

 もしそうだとするとこれは笑い話だ。
でも、きっとそうなんだろうな。
俺は何となく自分の中でそう結論付けて、屋敷の前へと着地した。

 俺は屋敷を見上げる。
久し振りだな。
あの時、俺がここへ辿り着いたから今に繫がっているのだな。
何となく感慨深い物が込み上げる。
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