見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七五八

「く、くそっ!」

 男たちが歯ぎしりをする。

「おおっと、そこまでだ。大人しくしねぇとどうなっても知らねえぞ?」

 背後から声がする。
俺は振り向いた。

「!」

 俺の目に飛び込んできたのは、子供たちを人質に取った別の奴らだった。

「コイツらを助けに来たんだろ?いったいどこの馬鹿がそんな事を頼んだのか知らんが諦めろ。そしてお前も何も見なかった事にしな。そうすれば全てが丸く収まる」

「俺が貴様みたいなクズと取引すると思うか?」

 俺が子供たちに気を取られている間に、最初の奴らが慌てて弓を拾った。
そんな物何の役にも立たないと判っただろうに、とんでもない馬鹿だな。

「お前強いな。五人掛かりで手も足も出ないとは。力で勝る奴に力で対抗しても意味など無い。お前にはこっちの方が効果がある。そうだろ?」

 リーダー格なのか。
いや、違うな。
コイツからは何と言うか、カリスマのような物を感じない。
人をまとめる器では無い。
俺は男を値踏みして、そう判断した。

「クズなりに頭は使うのか」

「ふふ、言葉に気を付けろ。人質は一人じゃ無いんだぜ。試しに何人か殺ったって、ガキはまだ居る」

 男はそう言って子供の顔に刃物を押し付ける。
少年の頬が切れて、血が滴った。

「うぅ……」

 少年が引きつった顔で俺を見る。
半ベソだが何とか泣くのを堪えているな。

「さあ、言え。誰に頼まれた。どうしてここがバレたのか聞かせてもらおうか」

 男がいよいよ強気になる。
背後からはさっきの二人が弓を引いて、俺に狙いを付けている。

「ふん」

 俺は馬鹿にしたように鼻で笑う。

「何が可笑しい?」

「それで俺が絶体絶命だとでも?」

「強がるなよ。違うのか?」

「違うな」

「ひゃっひゃっひゃっひゃっ。笑わせやがるぜ。そんなハッタリで事態を打開できるとでも思ってんのか?お前、思ったよりも馬鹿だな。俺が嘘をついていると思っているなら勘違いだ。試しにコイツをぶっ殺してお前に判らせてやる!」

 男が少年の胸に刃先を向けて、ナイフを握り直す。
馬鹿は貴様だ。

 俺はそいつらの視線が集まる中、あえて注意を引くように大袈裟に見得を切った。

「変身」

 ばっ!

 俺はその場で変身を大声で叫んだ。
そして素早く回転する。

「な!?」

 一瞬にして俺の姿はサフィリナックスへと変わった。

「ば、化け物!?」

「モンスターだったのか!」

 男たちが慌てて声を荒げる。

 すっ……

 それをよそに、俺はその場で透明化した。
奴らに俺の姿を見つける術は無い。

「き、消えた!」

「そんな馬鹿な!」

 男たちは驚いて辺りを見回す。
その動きはとてもオーバーな物だった。
怖いのだ。
理解出来ない物を目にして、恐怖を感じる。
人間は過剰な警戒心から、逃げたい気持ちが湧いてくる。
警戒心と恐怖、俺を見付けなければと言う焦り。

 その結果、右往左往する事になる。
ハッキリ言って隙だらけだ。
人質の事など頭から完全に消え去っている。

 俺は姿を消したまま男に近付くと、ナイフを握っている手を捕まえた。

「あ!」

 遅い。
そのまま腕を捻る。
一瞬で可動域の限界を超えた。

 ボギボギッ

「あっ!!」

 一瞬で折れる。
間抜けめ。
貴様に容赦など誰がするか。
髪の毛を掴まえて、子供から引き剥がす。
そうしておいてから、俺は男を高く放り投げた。

「あ!?うわああああ!」

 男は数メートル舞い上がると、そこから真っ逆さまに墜落した。

 ぐぎゃっ

 首が折れる音がした。
ザマミロ。

 俺は透明化を解いて姿を現す。

「ひっ……!」

 少年が至近距離で俺を見て息を吞んだ。

「俺が怖いか?」

 俺は少年に聞いた。

 ぶんぶんぶん

 少年は口を真一文字に結んだまま、首を思い切り横に振った。

「そうか」

 俺は一言そう言って、他の連中に向き直る。
ざっと十名。
こうなればもう全滅で構うまい。
俺は少年を抱いて、子供たちの元へと歩いた。
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