見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七六五

「な、何を言っていやが……」

「麻薬の流通経路はどうなっている?行き着く先はどこだ?」

 俺は男の反応を無視して質問した。

「ふざけるなっ!貴様、こんな真似をしてタダで済むとお……!」

「残念、時間切れだ」

 俺は冷たくそう言うと、男の耳を一気に引きちぎる。

 びぎっ!

「ああああああっ!」

 男が床を転げ回る。
大男のくせに敏感な野郎だ。
床に鮮血が滴り落ちる。

「ぐあ……こ、この野郎……!」

 俺は再び男に質問した。

「第二問。お前、ラッキーだな。なんと二問目も同じ質問だ。麻薬の流通経路はどうなっている?行き着く先はどこだ?」

「ぐ!ぐぐぐぅぅー!」

 男は怒りと恐怖が混ざった複雑な顔をした。
俺への怒りと、俺から逃げたい気持ちがぶつかって、足をバタつかせている。

「残念、時間切……」

「待てぇ!言う、言うから待て!」

 大男はそう言って、後ろへ逃げるように後ずさった。

「仕方が無いな。サービスだ。答えて良いぞ」

「く……お、俺たちは全部知っている訳じゃ無えんだ!役目ごとに知らされる範囲は決まっていて、全貌を知る者はホンの数名だ。ここに居る連中は、麻薬の栽培と運搬、それに労働力の確保、それだけだ!直接流通経路に入っている訳じゃ無え!」

 大男は一気にそこまでを吐き出した。
デカい図体して、そこまで痛みに弱いか。
だらしのないヤツめ。

 しかし、今の内容はジョンビアで俺が見て来た内容だ。
あそこに居た連中は、ここから来ていたのか。
とは言え、運んできたならそれを受け渡す筈だ。
渡した麻薬を精製すると言っていた。
純度を上げるのだと。
どこかで精製して、それを小分け、売り捌いている奴を突き止める。

 首謀者は誰だ。
勝手に薬をばら撒いて、民衆を苦しめ駄目にするなど、ネオジョルトの理念にも反する。
民衆は搾取する対象では無いのだ。

 もしも国王だったら……

 俺はふとその可能性を考えた。
その時は容赦しない。
オオムカデンダルもきっとそう言う筈だ。
支配者の風上にも置けぬと。

「俺が聞きたい内容は入っていないな」

 俺は大男にそう告げた。

「そ!そんなっ……!?」

「運んだ麻薬をどうやって他の担当者に受け渡す?」

「あ、そ、それは、マスターが知っている!麻薬はこの店の地下に保管してある。それを一ヶ月ごとに渡している筈だ!俺はそれで全部だ!それしか知らん!」

 そう言うと男は、声を出して泣き始めた。
よしよし。

 しかし面倒だな。
取りに来るまで待たなければならんのか。
この騒ぎが知れたら警戒して取りに来ない可能性もある。

 その時だった。

 ガシャアンッ!

 店で何やら大きな音がした。

 ガシャアンッ!
どんがらがしゃこーん!
バリイーンッ!
バリバリーンッ!

 同時に複数の怒声が飛び交う。
なんだ。
俺は立ち上がると、大男を無視して部屋から出た。

 細い通路から店の方を見ると、椅子やテーブルが宙を舞っているのが見える。
乱闘か?
こんな店では乱闘も珍しくは無かろうが、悪事に揃って手を染めている仲間同士だとすればこれは珍しい。
共同の利害が一致しているのに揉めるのは、損しか無いからだ。

 俺はゆっくりと店の方へと近付いた。
掛かっているカーテンに手を掛ける。
ゆっくりとそれをどけていく。

 店の中には客とおぼしき男たちと、兵士の姿が見える。

 兵士だと。

 なんだ。
何かやらかしてガサ入れでも入ったのか。
それともまさか、王国側でも麻薬を嗅ぎ付けたのか。

 これはあまり良くないな。
せっかくここまで来たのに、話が見えなくなってしまいかねない。
このまま王国側に任せても良いが。
どうするか。

 幸い俺はこの程度なら難なく突破する事は出来るが、そのまま手を引いて雲隠れするならそれも良いだろう。

 よし、後は王国側に任せよう。
俺はジョンビアに戻り、王国が助けに来ると伝えてから屋敷に戻る。

 そう決めると、長居は無用とばかりに俺は店内に足を踏み入れる。
乱闘に巻き込まれないように端っこを進んで、店の外へと飛び出した。

 ざっ!

「おや、どこへ行くんです?」

 当然、店の外にも兵士は居る。
この店丸ごと包囲されている。
そんな事は百も承知だ。

 俺は黙ってその場から立ち去るべく一気に駆けだした。
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