見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七七〇

「引き受けてくれるんだね!」

「ちゃんと話を聞け。子供の救出が先だ。麻薬の件は王国の問題だ。それはお前の仕事だろう。後回しだ」

「判ったよ。君は顔に似合わず人道主義者だなあ」

 うるせえ。

「じゃあ早速話をしようか。僕の行きつけの店がある」

 ケンはそう言うと、ケープを翻して歩き出した。
今度は俺がケンの後を追う。
少し歩いた所に食堂があった。

「ここだ」

 見た目には何て事の無い食事処だ。
場末感は無く、真ん中よりも少し高級そうな店構えだ。
いわゆる繁盛店か。

 店に入るとケンは個室を要求した。
そこはさすがの王国騎士団の総隊長様だ、顔パスで最上級の個室が用意された。

「ここなら盗み聞きされる心配も無い」

 ケンはテーブルに着くとそう言って、俺にも席を促した。

「で?」

 俺が情報を催促すると、ケンは前置き無く話し始める。

「残念ながら我が王国にも犯罪組織は存在する。これは無くせない」

 そうだな。
それは無くならんだろう。

「だがその内容にも様々あって、最悪なのが麻薬の密売だ。少なくとも我が国ではそうだ」

 それも理解の範疇だ。

「まあ、君の言いたい事も判るよ。人身売買や誘拐も、麻薬の密売に勝るとも劣らない卑劣な犯罪だ。見逃して良い道理は無い」

 俺は相槌をあえて打たずに黙って聞き続けた。

「今回の件は……これは君だから言うが、おそらく大臣が関わっている」

 大臣だと。
自分の国の子供たちを誘拐して強制労働させる。
そんな大臣など今すぐ辞めさせろ。

「それがそう簡単にはいかないんだよねぇ。自分の周りは完全に細工してある。証拠の証の字も出て来ない」

「自らの手は汚さないって訳か」

「ああ、それどころか自分に辿り着く為の手掛かりも完全に消し去っている」

 そこまで言ってケンはため息を吐いた。

「しかも僕は大っぴらに大臣を嗅ぎ回る訳にもいかない。隠密で動くにも限界がある」

 まあ、そうだろうな。
理解は出来る。
だが、そのままにして良いと言う法は無い。

「だから俺にやれと?」

「そうなんだよ!いや、理解が早くて助かるなあ」

 話は判ったが、肝心の子供の話が出てないぞ。

「子供の居場所は正直判らない。だが、怪しい所は目星が付いている」

 判らない?
なんだ、王国騎士団もたいした事無いな。

「そう言うなよ。子供の捜索は騎士団の仕事じゃない。騎士団を従事させる為の根拠も無いんだ。結局越権行為だなんだと周りから叩かれるんだよね」

 ケンはそう言ってまたため息を吐いた。
コイツもコイツなりに苦労してるのか。

「ま、たぶんそうやって僕を動けないようにしてるのも、奴らの自己防衛なんだろうけど」

 それはつまり、王国の中枢にも奴らの息が掛かっているって事か。

「残念ながらそう言う事。力任せに暴れられれば良いんだけどね。僕だけでなくて家の存続にも関わってくるとあっては、おいそれと暴れる訳にもいかない。あーあ、何の為の勇者なんだとほとほと嫌になるよ」

 そう言ってケンは俺を見た。
羨ましそうな目をしている。
俺だって自分勝手な上司に振り回されているのだと言いたかった。
まあ、言えないが。

「話を戻そう。子供たちは一人ずつ個別に拐われている。夕方家に帰るのがホンの少し遅れた子供などが途中で行方が判らなくなっているんだ。後は昼間でも人気の無い一瞬を狙って忽然と行方が判らなくなっている」

 まるで神隠しだな。

「そうなんだよ。どうやって?とも思うんだけど、まるで煙のように消えているんだ。逃走ルートも、その手段も全く判らない。目撃者も居ない」

 普通に考えれば複数犯だが。

「この国は外から見れば立派だが、内情は真っ黒だな。ま、王女からしてアレだからな」

 俺は然もありなんと納得した。

「なに?」

 ケンが俺を見た。

「今なんて言ったんだ?」

 ケンの態度が変わった。

「サンドラ王女が何だと!」

 ひょっとして王女の件を何も知らないのか?

「何の話だ!」

 ケンの形相が怒りに変わった。
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