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七七三
夕方前だった事もあり、間もなく薄暗くなってきた。
人通りはどんどんと少なくなっていく。
当然子供も出歩かない。
「今日はもう子供も来ないよ」
ケンが言った。
「そうかもしれんし、来るかもしれない。何があるか決めるのは俺たちじゃない」
「それはそうだけど、本当にこのままずっと見てるのかい?」
ケンがあきれたように言った。
「張り込みってのはそう言う物だが?貴族様は帰った方が良いんじゃないか」
俺は突き放すように言った。
「そう言う言い方はカチンと来るな」
ケンが怒ったように言う。
「相手は俺たちの都合なんか聞いちゃくれないんだぞ。夜になったから帰るなんてのは無いんだよ」
「しかし、誰も来ないのを判ってて張り込むのは違うんじゃ……」
「うるさい。文句言うなら帰れ。見つかるだろうが」
俺はイライラしてケンにそう言った。
「レオ、来たわよ」
突然アニーの声がした。
どこだ。
同時にセクトパピヨンが反応する。
確かに遠くから誰かが来る。
小さいな。
子供か。
俺は唇に人差し指を立てて見せる。
ケンはそれを察して沈黙した。
目で何処だと尋ねてくる。
俺は大通りの北側を指で指した。
しばらくすると、二つの人影が近くまでやってきた。
子供が来たからと言って、必ず拐われる訳では無いだろうが、俺たちは息を殺して子供を見守った。
「お兄ちゃん、暗くなってきたよ……」
不安そうに女の子が言う。
兄と妹らしい。
「ああ。早く帰らなきゃ、お父さんとお母さんが心配する」
「でもおじいちゃん、何とも無くて良かったね。お土産もこんなに貰っちゃった」
妹が嬉しそうにバスケットを持ち上げた。
「落とすなよ。おやつ無くなるぞ」
「だいじょうぶっ!」
妹はそう言うと兄の手をぎゅっと捕まえた。
二人は手を繋いで路地の前を通過する。
俺もケンも、心持ち緊張して二人を見守った。
ピーピーピーピー
耳の中で警告音が鳴った。
テクノセクトからの警告音だ。
俺は当たりを見渡す。
なんだ。
何も見えない。
レーダーにも何も反応は無かった。
どう言う事だ。
「わああああ!お兄ちゃん!」
突然妹が叫ぶ。
俺は慌てて建物の下を覗き込む。
女の子が急に何かに引かれるように、引きずられている。
だが、そこには何も無い。
「な、なんだあれは」
ケンも驚きを隠せない。
「チャコっ!」
兄が慌てて妹を追い掛ける。
「お兄ちゃんっ!」
妹の手からバスケットが落ちて、地面を跳ねた。
「チャコーっ!」
ばっ!
その瞬間、ケンは屋根から飛び降りていた。
俺は飛び降りるタイミングを失う。
二人で行く必要は無い。
一人は上から正体を見極めるのだ。
すたっ
着地するとケンは女の子に覆い被さる。
ぐんっ!
女の子を捉まえたケンごと、体が引かれていく。
「なんなんだ、これはぁ!」
ケンが叫びながら抵抗する。
「痛い!痛いよお!」
女の子が叫ぶ。
ケンが引っ張ると、女の子は体を左右から引かれて痛いと訴える。
「ぎゃああ!」
あまりの叫び声に、ケンは思わず手を離した。
その瞬間に女の子はスピードをつけて、そのまま路地の奥へと飛ぶように移動した。
俺のレーダーには相変わらず反応が無い。
「アニー、どうなってる!」
「待って、今調べているわ。あなたはこのまま女の子を追って」
俺は言われてそのまま屋根の上を走り出した。
上からケンに男の子を頼むと合図を送る。
ケンは判ったと返事して、男の子の方へと戻っていった。
「逃がすか!」
俺は速度を上げて屋根伝いに女の子を追った。
この先は突き当たりだ。
左右どちらかに曲がるしかない。
ぎゅん
女の子はなめらかに角を曲がると、右へとそのまま消えていく。
俺は先回りするべく、屋根の上を斜めに走る。
隣の建物に飛び移り、この辺りだと見当を付けて飛び降りた。
「!?」
だんっ!
着地した俺の周囲には誰も居なかった。
そんな馬鹿な。
人通りは無い。
隠れるような場所もない。
辺りは建物の裏手で、出入り口も窓も無かった。
消えた。
忽然と人が消えたのだ。
人通りはどんどんと少なくなっていく。
当然子供も出歩かない。
「今日はもう子供も来ないよ」
ケンが言った。
「そうかもしれんし、来るかもしれない。何があるか決めるのは俺たちじゃない」
「それはそうだけど、本当にこのままずっと見てるのかい?」
ケンがあきれたように言った。
「張り込みってのはそう言う物だが?貴族様は帰った方が良いんじゃないか」
俺は突き放すように言った。
「そう言う言い方はカチンと来るな」
ケンが怒ったように言う。
「相手は俺たちの都合なんか聞いちゃくれないんだぞ。夜になったから帰るなんてのは無いんだよ」
「しかし、誰も来ないのを判ってて張り込むのは違うんじゃ……」
「うるさい。文句言うなら帰れ。見つかるだろうが」
俺はイライラしてケンにそう言った。
「レオ、来たわよ」
突然アニーの声がした。
どこだ。
同時にセクトパピヨンが反応する。
確かに遠くから誰かが来る。
小さいな。
子供か。
俺は唇に人差し指を立てて見せる。
ケンはそれを察して沈黙した。
目で何処だと尋ねてくる。
俺は大通りの北側を指で指した。
しばらくすると、二つの人影が近くまでやってきた。
子供が来たからと言って、必ず拐われる訳では無いだろうが、俺たちは息を殺して子供を見守った。
「お兄ちゃん、暗くなってきたよ……」
不安そうに女の子が言う。
兄と妹らしい。
「ああ。早く帰らなきゃ、お父さんとお母さんが心配する」
「でもおじいちゃん、何とも無くて良かったね。お土産もこんなに貰っちゃった」
妹が嬉しそうにバスケットを持ち上げた。
「落とすなよ。おやつ無くなるぞ」
「だいじょうぶっ!」
妹はそう言うと兄の手をぎゅっと捕まえた。
二人は手を繋いで路地の前を通過する。
俺もケンも、心持ち緊張して二人を見守った。
ピーピーピーピー
耳の中で警告音が鳴った。
テクノセクトからの警告音だ。
俺は当たりを見渡す。
なんだ。
何も見えない。
レーダーにも何も反応は無かった。
どう言う事だ。
「わああああ!お兄ちゃん!」
突然妹が叫ぶ。
俺は慌てて建物の下を覗き込む。
女の子が急に何かに引かれるように、引きずられている。
だが、そこには何も無い。
「な、なんだあれは」
ケンも驚きを隠せない。
「チャコっ!」
兄が慌てて妹を追い掛ける。
「お兄ちゃんっ!」
妹の手からバスケットが落ちて、地面を跳ねた。
「チャコーっ!」
ばっ!
その瞬間、ケンは屋根から飛び降りていた。
俺は飛び降りるタイミングを失う。
二人で行く必要は無い。
一人は上から正体を見極めるのだ。
すたっ
着地するとケンは女の子に覆い被さる。
ぐんっ!
女の子を捉まえたケンごと、体が引かれていく。
「なんなんだ、これはぁ!」
ケンが叫びながら抵抗する。
「痛い!痛いよお!」
女の子が叫ぶ。
ケンが引っ張ると、女の子は体を左右から引かれて痛いと訴える。
「ぎゃああ!」
あまりの叫び声に、ケンは思わず手を離した。
その瞬間に女の子はスピードをつけて、そのまま路地の奥へと飛ぶように移動した。
俺のレーダーには相変わらず反応が無い。
「アニー、どうなってる!」
「待って、今調べているわ。あなたはこのまま女の子を追って」
俺は言われてそのまま屋根の上を走り出した。
上からケンに男の子を頼むと合図を送る。
ケンは判ったと返事して、男の子の方へと戻っていった。
「逃がすか!」
俺は速度を上げて屋根伝いに女の子を追った。
この先は突き当たりだ。
左右どちらかに曲がるしかない。
ぎゅん
女の子はなめらかに角を曲がると、右へとそのまま消えていく。
俺は先回りするべく、屋根の上を斜めに走る。
隣の建物に飛び移り、この辺りだと見当を付けて飛び降りた。
「!?」
だんっ!
着地した俺の周囲には誰も居なかった。
そんな馬鹿な。
人通りは無い。
隠れるような場所もない。
辺りは建物の裏手で、出入り口も窓も無かった。
消えた。
忽然と人が消えたのだ。
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