781 / 826
七八〇
しおりを挟む
「グウウ……グアアアッ!」
グールもケンを見るなり問答無用で襲い掛かる。
ひゅばっ!
ケンはグールが何もしないうちに高速で抜刀すると、そのまま袈裟斬りに斬り捨てた。
まさに瞬殺だ。
しかしどう考えてもモンスターのレベルが低すぎる。
こんな物がいったい何の役に立つと言うのか。
トラップの意味すら為していない。
ケンがグールにくるりと背を向けた。
鞘に剣を戻そうとしたその時。
りんごーん!
りんごーん!
まただ。
これは何か意味があるのか。
しゅー
しゅー
また同じように煙が噴き出す。
俺とケンは、もう慣れたと言うようにモンスターの出現を待った。
「ぐ……ぐぐ……」
今度こそゾンビーだった。
ケンは眉一つ動かさず、出現した瞬間にゾンビーの首を横一文字に薙ぎ払った。
ごんっ
ごろごろ
ゾンビーの頭が地面に落ちて転がる。
「次は何だ?」
ケンはもはや納刀しようとさえしなかった。
どうせまた出るんだろ、と言わんばかりだ。
りんごーん!
りんごーん!
そしてそれはその通りだった。
いったいいつまで続くのか。
まさか永久になんて事はあるまい。
これがトラップなのだとしたら、タネはいずれ尽きる。
ざしゅっ!
りんごーん!
りんごーん!
ずばっ!
りんごーん!
りんごーん!
出現してはケンが瞬殺するを、何度も繰り返す。
ゴースト
ファントム
スペクター
ドラゴントゥースウォーリアー
マミー
そして今、ドラウグルがケンの手によって斬り捨てられた。
「ファントムやらドラウグルやら、良く斬れるな。何だその剣は」
俺は感心してケンに尋ねた。
普通の剣ではほとんどダメージは通らない。
なぜなら奴らは霊体の要素が強いからだ。
これを実剣で斬るのは相当な体力と粘り強さが求められる。
一〇〇回斬ってもダメージは半分にも届かないだろう。
霊体系のモンスターには普通は神職が当たるのが一般的だ。
神聖魔法は霊体系やアンデッドモンスターに対して絶大な威力を発揮する。
故にパーティーに神職が居ない場合は、逃げるのが最善策だ。
戦っても良い事など何も無い。
神職が居ると居ないとでは、攻略難易度が全く違う。
かなり偏った性質のモンスターなのだ。
それをこうもあっさりと斬り捨てられるのは、剣に特殊な属性か魔法が付与されていると踏んだのだ。
「えへへ。良いだろうこれ。いわゆる勇者の剣だね。代々我が家に伝わるありがたーい剣なんだよ」
勇者の剣ねえ。
眉唾だがこうも威力を目の当たりにすると、認めざるをえない。
由緒正しき聖剣と言うのは本当に在るのだな。
そんな事を考えて、俺は突然気が付いた。
出現モンスターは少しずつ強くなってきている。
そしてそれは全てアンデッドモンスターに分けられる。
なんだ。
アンデッドモンスター専用の召喚トラップなのか。
と言うことは。
りんごーん!
りんごーん!
鐘が鳴った。
また次のが現れる。
しゅー
しゅー
「おおっと、こいつは……」
ケンが珍しく動揺した。
現れた男はマントを勢い良く翻した。
長身痩躯、青白い顔、光る両眼。
そして口元から覗く長い犬歯。
ヴァンパイアだ。
「んふふふふ」
ヴァンパイアが不敵に声を漏らす。
「こんなのもアリなの?」
ケンが俺を振り返る。
「たぶんアンデッドと言う括りでモンスターを召喚している。倒せば倒すほど、より高位のアンデッドモンスターが出て来る仕組みなんだろう」
「それは……」
さすがにケンも何かを察した。
この流れで倒し続けると、最終的にはどうなるのか。
「倒さない方が良いのかな?」
「じゃあ野放しにして、好き勝手させておくか?」
そんな訳にはいかないだろう。
俺はともかくケンは人間だ。
倒さなければ一方的に蹂躙される。
つまり死ぬと言う事だ。
「これって、チェックメイト掛かってない?」
ケンが旗色の悪さに冷や汗を流す。
俺は返事に窮した。
グールもケンを見るなり問答無用で襲い掛かる。
ひゅばっ!
ケンはグールが何もしないうちに高速で抜刀すると、そのまま袈裟斬りに斬り捨てた。
まさに瞬殺だ。
しかしどう考えてもモンスターのレベルが低すぎる。
こんな物がいったい何の役に立つと言うのか。
トラップの意味すら為していない。
ケンがグールにくるりと背を向けた。
鞘に剣を戻そうとしたその時。
りんごーん!
りんごーん!
まただ。
これは何か意味があるのか。
しゅー
しゅー
また同じように煙が噴き出す。
俺とケンは、もう慣れたと言うようにモンスターの出現を待った。
「ぐ……ぐぐ……」
今度こそゾンビーだった。
ケンは眉一つ動かさず、出現した瞬間にゾンビーの首を横一文字に薙ぎ払った。
ごんっ
ごろごろ
ゾンビーの頭が地面に落ちて転がる。
「次は何だ?」
ケンはもはや納刀しようとさえしなかった。
どうせまた出るんだろ、と言わんばかりだ。
りんごーん!
りんごーん!
そしてそれはその通りだった。
いったいいつまで続くのか。
まさか永久になんて事はあるまい。
これがトラップなのだとしたら、タネはいずれ尽きる。
ざしゅっ!
りんごーん!
りんごーん!
ずばっ!
りんごーん!
りんごーん!
出現してはケンが瞬殺するを、何度も繰り返す。
ゴースト
ファントム
スペクター
ドラゴントゥースウォーリアー
マミー
そして今、ドラウグルがケンの手によって斬り捨てられた。
「ファントムやらドラウグルやら、良く斬れるな。何だその剣は」
俺は感心してケンに尋ねた。
普通の剣ではほとんどダメージは通らない。
なぜなら奴らは霊体の要素が強いからだ。
これを実剣で斬るのは相当な体力と粘り強さが求められる。
一〇〇回斬ってもダメージは半分にも届かないだろう。
霊体系のモンスターには普通は神職が当たるのが一般的だ。
神聖魔法は霊体系やアンデッドモンスターに対して絶大な威力を発揮する。
故にパーティーに神職が居ない場合は、逃げるのが最善策だ。
戦っても良い事など何も無い。
神職が居ると居ないとでは、攻略難易度が全く違う。
かなり偏った性質のモンスターなのだ。
それをこうもあっさりと斬り捨てられるのは、剣に特殊な属性か魔法が付与されていると踏んだのだ。
「えへへ。良いだろうこれ。いわゆる勇者の剣だね。代々我が家に伝わるありがたーい剣なんだよ」
勇者の剣ねえ。
眉唾だがこうも威力を目の当たりにすると、認めざるをえない。
由緒正しき聖剣と言うのは本当に在るのだな。
そんな事を考えて、俺は突然気が付いた。
出現モンスターは少しずつ強くなってきている。
そしてそれは全てアンデッドモンスターに分けられる。
なんだ。
アンデッドモンスター専用の召喚トラップなのか。
と言うことは。
りんごーん!
りんごーん!
鐘が鳴った。
また次のが現れる。
しゅー
しゅー
「おおっと、こいつは……」
ケンが珍しく動揺した。
現れた男はマントを勢い良く翻した。
長身痩躯、青白い顔、光る両眼。
そして口元から覗く長い犬歯。
ヴァンパイアだ。
「んふふふふ」
ヴァンパイアが不敵に声を漏らす。
「こんなのもアリなの?」
ケンが俺を振り返る。
「たぶんアンデッドと言う括りでモンスターを召喚している。倒せば倒すほど、より高位のアンデッドモンスターが出て来る仕組みなんだろう」
「それは……」
さすがにケンも何かを察した。
この流れで倒し続けると、最終的にはどうなるのか。
「倒さない方が良いのかな?」
「じゃあ野放しにして、好き勝手させておくか?」
そんな訳にはいかないだろう。
俺はともかくケンは人間だ。
倒さなければ一方的に蹂躙される。
つまり死ぬと言う事だ。
「これって、チェックメイト掛かってない?」
ケンが旗色の悪さに冷や汗を流す。
俺は返事に窮した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる