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七九〇
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「神聖な王国の、しかも王城地下にこのようなモンスターを連れ込むとは不敬の極み!断じて許せん!」
ケンは一直線にトロールへと駆け寄った。
「ウオオオム!」
ケンの接近を察知して、トロールが振り向きざまに腕を薙ぎ払う。
ぶうん
ケンはそれを簡単にかわすと、トロールの足下へ斬り掛かる。
ザンブッ!
見事に膝上から一刀両断にすると、そのままケンは向こう側へと転がった。
だが、それだけでは駄目だ。
ケンならばそれも判っている筈。
「ンマアアアウ!」
トロールが吼える。
それと同時に斬れた脚の傷口が塞がっていく。
再生能力。
トロールには有名な再生能力がある。
これが一層トロールを厄介なモンスターたらしめている。
怪力と再生能力。
地味だが強力だ。
小細工無しにシンプルな強能力こそ、もっとも手強い。
そしてもう一つ。
トロールは水際でこそ真価を発揮する。
トロールはケンを一瞥すると、無視して船へと走り出した。
マズい。
あくまでこっちを優先する気か。
だっだっだっだっ
裸足のトロールが川に沿って走って来る。
巨漢なだけあって足音も力強い。
「ちっ、こっちに来るんじゃねえ!」
俺は向かってくるトロールに向かって叫んだ。
だが、トロールがそんな事を気にする筈も無い。
ざざっ
俺は急停止すると、向かって来るトロールに身構えた。
「シッ!」
短く息を吐きながら、トロールの足下に下段蹴りを払う。
巨漢には足払い。
オオムカデンダルに散々仕込まれた基本だ。
だんっ!
しかし、トロールは巨漢に似つかわしくない俊敏さで、地面を蹴って宙を飛んだ。
「なんだと!?」
俺は頭上を舞うトロールを見上げて、それを目で追った。
だっしゃーん!
激しく水しぶきを上げて、トロールが船へと飛び移った。
しまった。
俺は慌てて方向転換し、すぐさま船を追う。
「レオーっ!」
背後からケンが追う。
「待ちやがれー!このクソどもがああーっ!」
その更に後ろから、チンピラどもが大挙して追って来る。
「くそー!来るんじゃない!今僕は急いでるんだぞ!」
ケンが後続をぶちのめしながら叫ぶ。
あれじゃとても船へは追い着けない。
しかしこの船、普通の速さでは無い。
帆がある訳じゃ無し、異様な速度で出口に向かって突き進んでいる。
「!」
白波。
船の先頭よりももっと先から、白波が立ってそれが左右へと別れてる。
何か居る。
俺は目を凝らした。
良く判らないが魚影のような物が水中で動いている。
それが船を曳航している。
くそ、何なんだ。
水棲モンスターか。
魚類モンスターだと、出口から先に行かれたら追い着けない。
その先はおそらく湾に出る筈だ。
「モオウム!」
トロールが積み込んだ檻の上でこちらを睨んでいる。
なるほど。
守りは完璧と言いたい訳だ。
トロールが心なしか自信有り気に胸を張った。
野郎、なめやがって。
俺は更に速力を上げると、負けじと地面を蹴って飛び出した。
だあん!
宙を舞って上からトロールへと襲い掛かる。
「ウオオオムッ!」
それに反応してトロールが俺を迎え撃つ。
空中で俺を叩き落とすつもりか。
どかっ!
「ぐおっ!」
俺はトロールのストレートパンチを十字に受けると、そのまま押し戻されて岸へと着地した。
「トロールの知能が低いって言った奴は誰だよ……!」
俺は忌々しくトロールを睨んだ。
「ゲッゲッゲッゲッゲ」
笑ってやがる。
船はもう、出口に近付いている。
飛び移ろうとしてもトロールがそれを許さない。
時間が無いぞ。
どうする。
「……良いだろう。不本意だが本気を出してやる」
俺はそう言うと、クルリと一回転した。
俺の姿は一瞬でサフィリナックスへと変貌する。
「レオ……!?それは……」
ケンが驚いた声を上げる。
だがもう、薄々気付いていただろう。
「勝負だトロール!」
俺は再び船を追って走り出した。
ケンは一直線にトロールへと駆け寄った。
「ウオオオム!」
ケンの接近を察知して、トロールが振り向きざまに腕を薙ぎ払う。
ぶうん
ケンはそれを簡単にかわすと、トロールの足下へ斬り掛かる。
ザンブッ!
見事に膝上から一刀両断にすると、そのままケンは向こう側へと転がった。
だが、それだけでは駄目だ。
ケンならばそれも判っている筈。
「ンマアアアウ!」
トロールが吼える。
それと同時に斬れた脚の傷口が塞がっていく。
再生能力。
トロールには有名な再生能力がある。
これが一層トロールを厄介なモンスターたらしめている。
怪力と再生能力。
地味だが強力だ。
小細工無しにシンプルな強能力こそ、もっとも手強い。
そしてもう一つ。
トロールは水際でこそ真価を発揮する。
トロールはケンを一瞥すると、無視して船へと走り出した。
マズい。
あくまでこっちを優先する気か。
だっだっだっだっ
裸足のトロールが川に沿って走って来る。
巨漢なだけあって足音も力強い。
「ちっ、こっちに来るんじゃねえ!」
俺は向かってくるトロールに向かって叫んだ。
だが、トロールがそんな事を気にする筈も無い。
ざざっ
俺は急停止すると、向かって来るトロールに身構えた。
「シッ!」
短く息を吐きながら、トロールの足下に下段蹴りを払う。
巨漢には足払い。
オオムカデンダルに散々仕込まれた基本だ。
だんっ!
しかし、トロールは巨漢に似つかわしくない俊敏さで、地面を蹴って宙を飛んだ。
「なんだと!?」
俺は頭上を舞うトロールを見上げて、それを目で追った。
だっしゃーん!
激しく水しぶきを上げて、トロールが船へと飛び移った。
しまった。
俺は慌てて方向転換し、すぐさま船を追う。
「レオーっ!」
背後からケンが追う。
「待ちやがれー!このクソどもがああーっ!」
その更に後ろから、チンピラどもが大挙して追って来る。
「くそー!来るんじゃない!今僕は急いでるんだぞ!」
ケンが後続をぶちのめしながら叫ぶ。
あれじゃとても船へは追い着けない。
しかしこの船、普通の速さでは無い。
帆がある訳じゃ無し、異様な速度で出口に向かって突き進んでいる。
「!」
白波。
船の先頭よりももっと先から、白波が立ってそれが左右へと別れてる。
何か居る。
俺は目を凝らした。
良く判らないが魚影のような物が水中で動いている。
それが船を曳航している。
くそ、何なんだ。
水棲モンスターか。
魚類モンスターだと、出口から先に行かれたら追い着けない。
その先はおそらく湾に出る筈だ。
「モオウム!」
トロールが積み込んだ檻の上でこちらを睨んでいる。
なるほど。
守りは完璧と言いたい訳だ。
トロールが心なしか自信有り気に胸を張った。
野郎、なめやがって。
俺は更に速力を上げると、負けじと地面を蹴って飛び出した。
だあん!
宙を舞って上からトロールへと襲い掛かる。
「ウオオオムッ!」
それに反応してトロールが俺を迎え撃つ。
空中で俺を叩き落とすつもりか。
どかっ!
「ぐおっ!」
俺はトロールのストレートパンチを十字に受けると、そのまま押し戻されて岸へと着地した。
「トロールの知能が低いって言った奴は誰だよ……!」
俺は忌々しくトロールを睨んだ。
「ゲッゲッゲッゲッゲ」
笑ってやがる。
船はもう、出口に近付いている。
飛び移ろうとしてもトロールがそれを許さない。
時間が無いぞ。
どうする。
「……良いだろう。不本意だが本気を出してやる」
俺はそう言うと、クルリと一回転した。
俺の姿は一瞬でサフィリナックスへと変貌する。
「レオ……!?それは……」
ケンが驚いた声を上げる。
だがもう、薄々気付いていただろう。
「勝負だトロール!」
俺は再び船を追って走り出した。
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