見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八〇五

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 緑の谷に差し掛かると、屋敷の裏側で木々が左右に分かれだす。
地面が大きく動いて、中の格納庫が見える。
メタルシェルはその中へとゆっくり降りていった。

 俺は子供たちの檻を簡単に破壊する。
そして子供たちを次々に外へと運び出した。

「ここへ全員並べて頂戴」

 やって来たアニーが指示をする。
俺は言われたように子供たちを床に並べて寝かせた。

 見れば見た事のない機械がズラッと並んでいるのに気付く。
いや、見た事あるな。
確か、令子に最初に連れて行かれた部屋にあった筈だ。

 そこへナイーダが走って来る。

「アニー」

「ナイーダ、こっちの子たちはマシンに入れて。残りの子は水を吐かせれば大丈夫よ」

「判った」

 アニーとナイーダは手分けして子供たちを診た。
ナイーダ、久し振りだな。
顔つきもずいぶん変わった。
前は何と言うか、もっと無味乾燥な雰囲気だったのに。

「済まない。丸投げで悪いんだが、後は頼む」

 俺はアニーにそう言った。

「判ってるわ。後は任せて頂戴」

 アニーの言葉を受けて、俺はボードを呼び出す。
すぐにボードがやって来て足下へと滑り込んで来た。

 たっ

 それに飛び乗ると、俺は再び王国へと向かう。
令子が向かった筈だから何の問題も無いと思うが、ケンの事も気になる。
これが王国の仕業だとすれば、正義感に厚いケンの存在はかえって邪魔な筈だ。

 俺はいつしかケンの身を案じていた。

 もうすぐ夜明けだ。
あと半時ほどだろう。
その前に子供たちを助けたい。
俺は海から近付くと、さっきの入り江から王城地下へと進入した。

 すたっ

 ボードから飛び降りる。
辺りを見回すがケンの姿は無かった。
そのまま子供たちの居た隠しアジトへと向かう。

 もぬけの殻だ。
俺が倒した連中だけが、今も横たわっている。
子供たちも居ないと言う事は、令子が上手くやってくれた言う事か。
しかし、令子はどこから進入したのか。

 俺はしばらく歩いて上を見た。
瓦礫が崩れ落ちていたからだ。

「なるほど……」

 天井に穴が開いている。
あそこからか。
アニーが座標を送ったから、秘密の入り口が判らなくても関係無かった訳だ。

 しかし、地上からかなりの厚さを掘り抜かなければならないと思うのだが、それを簡単にやってのけるとは。
あそこから子供たちを連れて行くのは無理だな。

 と言う事は、やはり王城地下から抜けたのか。
入り江から?
船でも奪って来たのか。
俺はそんな事を考えながら来た道を戻った。

 そうだ。
テクノセクトはどうした。
俺は思い出してテクノセクトの位置を追う。

 すぐに反応があった。
上?
俺は上を見上げる。
上は王城だ。
城に居るのか。

 俺は首をかしげる。
とにかく行ってみよう。
地下から上へと続く道を探す。
奴隷たちの居住区と言っていたが、誰も居ないな。
立ち並ぶ牢の前を歩きながら思った。

 階段の前に見張りが倒れている。
ケンの仕業か。
その側の詰め所も、何人か兵士が倒れている。

 邪魔するヤツを片っ端から倒したのか。
まあ、そりゃそうか。
俺は倒れた兵士をまたいで階段から上へと向かった。

 結構上ってから地下倉庫に辿り着く。
さすがは王城の地下倉庫。
無駄に広いな。
ほとんどが調度品だ。
季節ごとに入れ替えたりしているのだろう。
豪勢な事だ。

 その間をずっと進む。
出入り口に近くなるにつれ、頻繁に運び出す物へと物が変わっていく。
食器類、調理器具、そして食材。
日保ちする食材はここか。
すぐ使わなければならない物は倉庫へは来ない。
搬入して即、厨房だろう。

 倉庫を出る。
まだ上だな。
どこまで行ったのか。
一応テクノセクトによるマッピングは完全に完了している。
今後この城は、国王の寝室まで丸分かりと言う事だ。

 テクノセクトを追って俺は尚も歩き続ける。
透明化もしていないが、全く誰とも出会わない。
逆に不気味だ。

 ん。

 声が聞こえてくる。
近付くにつれて、大勢の怒声が聞こえてきた。
なんだ。
俺は足早に先へと進む。
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