見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八〇九

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「話が見えぬな」

 国王が口を開く。

「は。全くで御座います。この者たちはいったい何を言っているのか……」

 宰相がしらばっくれる。
おーおー、良くも恥ずかしくも無く、そんな態度が取れるもんだ。

「年端もいかぬ子供たちが、拐われ殺され売り飛ばされる。別に何の落ち度もなく突然日常から切り離される」

 王は黙って俺の話を聞いている。

「な、何を……!」

 宰相が慌てる。

「まだ十にも満たない子供がだ。弟や妹を庇って理不尽に耐えている。薄汚い大人の欲望の為に消費される命。お前にその価値が判るとでも?」

 俺は宰相に近づいた。
宰相は一歩、退いて階段を上がった。

「貴様の命じゃ、つり合わんな」

 俺の言葉に宰相は慌てた。

「な、何の話か知らんが無礼な!ワシはこの王国の宰相だぞ!」

「それがどうした。俺はこの国とは関係が無い。お前の地位もこの国の法も俺には関係無い」

「馬鹿め!その国で法を侵せば関係無くても裁かれるのは当然!そんな事も判らんとは!」

 宰相が息巻く。

「ほう。じゃあ裁いてみろ」

「は!?」

「裁いてみろよ。裁けるもんならな。さあやってみろ」

 俺はもう一歩前に出た。

「き、貴様!どこのどいつか知らんが王国の宰相に対して無礼だぞ!」

「じゃあもっと兵を呼ぶんだな。ミノタウロスももっと出せよ」

 宰相は王に駆け寄った。

「お、王よ!このような不届き者に是非天誅を!このままでは示しが付きません!」

「ふむ……」

 王は黙って俺たちを一瞥した。

「それもその通りだな」

 やる気か。

「一応示しは付けねばならん」

 王が玉座から立ち上がる。
風格はあるな。

「余の剣と鎧を持て」

 脇に控えてい侍女が鎧と剣を王に着せた。

 ガシャ

 王が階段を降りる。
宰相の顔に下卑た笑いが浮かび上がる。
確かこの国の王は代々スキルを受け継いでいると聞くが。

 三十を超える迄にレベル三〇〇を有する事が条件だと言う。
俺が知っている情報はそれだけだ。

 レベル三〇〇。

 笑ってしまうほど馬鹿馬鹿しい。
冒険者であれば、余裕でドラゴン級だ。
つまり、サルバスと同じ伝説級と言う訳だ。
見た所、賢者には見えないから戦闘職だろう。
と言う事は『英雄』か。
ケンもレベルを上げていけば、いずれ『英雄』になる。
今はまだソードマスターかソルジャー辺りか。

 鎧も藍眼鉱。
しかも全身とは。
さすが国王。

「どれ。不届き者を成敗致す」

 国王から嵐のような気迫が伝わる。
ケンが気圧されてたじろいだ。

「王よ!話を聞いて下さい!」

 ケンが王に申し入れる。

「良いだろう」

 ケンの顔がパッと明るくなった。

「ただし、此度の狼藉は看過出来ぬ。制裁は受けてもらう!」

「そ、そんな!」

 ケンの表情が一瞬で絶望へと変わった。

「大丈夫だ。任せておけ」

 俺はケンにそう言うと王に対峙した。

「あらあら。ちょっと見ない間に逞しくなったわね」

 ウロコフネタマイトが俺を見てそう呟いた。
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