見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八一九

 俺は自分の仮説に賭けてみた。

「貴様の能力、俺にはもう通用しない」

「なに?」

 王が怪訝そうな顔をする。
言っている意味が判らない、そんな顔だ。

「時間を操るスキルだとはな。恐ろしい能力だ。だが、ネタは割れたぞ」

「ハッタリを」

「果たしてそうかな?」

 王は疑心暗鬼にかられる。
相手が俺でなければ信じなかった筈だ。

「もう、時間を巻き戻したりさせんぞ。スローモーションも通用しない。どうする?」

 王の表情が変わった。
バレた。
その衝撃が顔に表れていた。

「そんな馬鹿なあーっ!」

 王は雄叫びを上げて、殴りかかって来た。
もう万策尽きたか。

 とは言え、レベル三〇〇のパンチは普通なら十分に通用する。
相手が俺と言う事が王の不幸なだけだ。

 俺もパンチを繰り出す。

 バアンッ!

 互いのパンチが衝突する。
俺は王のパンチをパンチで受けとめた。

「確かにお前は殺せない。殺せば『無かった事』にされてしまうからな。だが、殺さずともお前を負かす事は出来る」

「余を負かすだとぉー!」

 王は更に激昂する。

 だだだだだっ

 王は猛然と突進した。
老人とは思えない巨漢である。
その王が、全力の体当たりを繰り出して来た。
砲弾のような速度だった。
食らえば、人間なら跡形も残るまい。

「レオ!」

 ケンが叫んだ。

「ふん!」

 俺はそれを正面から待ち受ける。

「馬鹿めぇ!」

 ばしいっ!

 猛然と体当たりが直撃した。
だが。

「!?」

 俺はそれをキックで受けとめた。
体が後ろへ運ばれる。
相変わらず信じられない馬鹿力だ。

「ば、馬鹿な!余の体当たりが……」

 王が狼狽する。

「聞け。この国の民が苦しめられているのに、戦闘を楽しんでいる場合では無い。お前には国王としての務めがあるだろう」

 俺は王を諭した。
膝をつく国王の顔を見れば、話が耳に届いているかは疑問だが。

「王よ!お願いです!この国の内部にまで病が進行しているのです!一刻も早く病巣を取り除かなければ国その物が終わってしまいます!」

 ケンが王に直訴する。

「どうする?このまま封印されるか、王としての責務を全うするか、好きな方を選ぶが良い」

 王がみすぼらしく顔を上げた。
力無く俺を見る。
なんて顔だ。
国王の顔とは到底思われない。
まるで別人だ。 

 敗北がここまで人を変えるか。
俺は驚いた。
それ程までに国王にとっては戦いが全てであり、勝利する事が全てであったのか。
敗北など有り得無い事だったと。

「封印……?」

 王が呆然と俺を見た。

「死なれると厄介だからな。生かさず殺さず寿命まで封印させてもらう」

 死んでスキルが発動されても困る。
このまま自然死するまで磔にでもするのが得策か。

「い……」

「ん?」

「い、嫌だーっ!」

 突然、王が叫びだした。 

「そんなの嫌だーっ!」

 子供か。
俺は別の意味で驚いた。
さっきまでの威厳に溢れたたたずまいとは全くの別人だった。

「王よ……」

 その姿にケンも言葉を失う。
この国王はこれまでだな。
俺は王に見切りを付けた。
ふと見ると、宰相がはうようにして逃げ出すのが見えた。
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