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八二一
ぼきっ!
人差し指がまず折れた。
「うぎゃああああああっ!」
宰相の絶叫と共に兵士たちが息を呑む。
「もう一度聞こう。女子供はどこだ?」
「ひー、ひー、痛いよー!痛いよー!」
宰相は自分の人差し指を大事そうに撫でた。
折れただけだ。
別に無くなりはしない。
「ほら、手を貸せ。まだ残り十九本あるぞ」
宰相がビクッとなる。
「止めてくれぇー!止めてー!」
「なら早く吐け」
ケンが何とも言えない表情で俺を見ている。
「レオ……」
一言呟いたが、止めはしなかった。
ウロコフネタマイトも黙ってそれを眺めていた。
普段は軽口を叩くウロコフネタマイトだが、何故か黙っている。
「お前、何故ミノタウロスなんか用意してた?」
「!」
俺の言葉に宰相は驚いた。
「気が付かないと思ったか?お前、俺と国王の生き残った方にけしかけるつもりだったろ?ミノタウロス如きでは俺もあの国王もやれんぞ。所詮、自分では戦わない者の朝知恵だな」
まあ、そんな所だろう。
別に違っていたとしてもどうでも良い事ではあるが。
「なんだって!?宰相閣下!それは誠でございますか!」
ケンが驚いて宰相に詰め寄る。
この状況で、この男に答える余裕など無い。
それを考慮せず宰相に詰め寄るケンも、中々の天然だなと思った。
「宰相!」
「あー!助けてー!痛いよー!ケンよ!助けてくれー!」
宰相はそれどころでは無い。
「この男は、どこまでも自己保身と自己の権力にしか興味が無い。確認するだけ無駄だ」
「しかし……」
「言え。誰と取り引きしている。お前には相当な見返りがあった筈だ。子供たちを返してもらおうか!」
「そ、それは……言えないぃ、言えないからぁー……そ、それよりも、助けてぇー!」
子供のように泣いている。
仕方ない。
もう一本いっとくか。
ぼきっ!
「ぎゃあああー!痛いぃぃ!」
俺は躊躇なく中指を折った。
ケンが俺の顔を驚いて見る。
「な、何もそこまでしなくても……」
「いいや。駄目だな。戦う手段を持つ大人と、それを持たない子供では意味合いが全く違う。子供を標的にしたこいつには同情など一ミリも無い。殺しても良いくらいだ」
「そんな……」
さすがは勇者さまか。
どんな相手にも憐れみは感じるらしい。
お前はそれで良い。
勇者だからな。
だが、俺は違う。
俺はネオジョルトの為なら悪鬼羅刹にもなる。
生かしておく意味が無いなら駆除するしかあるまい。
可哀想だと言う理由で、害虫を生かしておく意味などありはしないのだから。
「ひぃーひぃー」
宰相が泣きながら自分の指を見る。
そんなに折れた指が大事か。
殺され、拐われた子供たちよりも、自分の折れた指の方が大事か。
「悪魔めー!神よー!この悪魔を罰したまえー!」
宰相が泣きながら神に祈った。
「それは無理だな」
宰相とケンが同時に俺を見る。
「悪魔は殺して心臓を取った。神はこの前爆発四散した。どちらも邪魔をするなら叩き伏せる。他の神でもな」
それを聞いていたウロコフネタマイトが、満足げに小さく笑った。
人差し指がまず折れた。
「うぎゃああああああっ!」
宰相の絶叫と共に兵士たちが息を呑む。
「もう一度聞こう。女子供はどこだ?」
「ひー、ひー、痛いよー!痛いよー!」
宰相は自分の人差し指を大事そうに撫でた。
折れただけだ。
別に無くなりはしない。
「ほら、手を貸せ。まだ残り十九本あるぞ」
宰相がビクッとなる。
「止めてくれぇー!止めてー!」
「なら早く吐け」
ケンが何とも言えない表情で俺を見ている。
「レオ……」
一言呟いたが、止めはしなかった。
ウロコフネタマイトも黙ってそれを眺めていた。
普段は軽口を叩くウロコフネタマイトだが、何故か黙っている。
「お前、何故ミノタウロスなんか用意してた?」
「!」
俺の言葉に宰相は驚いた。
「気が付かないと思ったか?お前、俺と国王の生き残った方にけしかけるつもりだったろ?ミノタウロス如きでは俺もあの国王もやれんぞ。所詮、自分では戦わない者の朝知恵だな」
まあ、そんな所だろう。
別に違っていたとしてもどうでも良い事ではあるが。
「なんだって!?宰相閣下!それは誠でございますか!」
ケンが驚いて宰相に詰め寄る。
この状況で、この男に答える余裕など無い。
それを考慮せず宰相に詰め寄るケンも、中々の天然だなと思った。
「宰相!」
「あー!助けてー!痛いよー!ケンよ!助けてくれー!」
宰相はそれどころでは無い。
「この男は、どこまでも自己保身と自己の権力にしか興味が無い。確認するだけ無駄だ」
「しかし……」
「言え。誰と取り引きしている。お前には相当な見返りがあった筈だ。子供たちを返してもらおうか!」
「そ、それは……言えないぃ、言えないからぁー……そ、それよりも、助けてぇー!」
子供のように泣いている。
仕方ない。
もう一本いっとくか。
ぼきっ!
「ぎゃあああー!痛いぃぃ!」
俺は躊躇なく中指を折った。
ケンが俺の顔を驚いて見る。
「な、何もそこまでしなくても……」
「いいや。駄目だな。戦う手段を持つ大人と、それを持たない子供では意味合いが全く違う。子供を標的にしたこいつには同情など一ミリも無い。殺しても良いくらいだ」
「そんな……」
さすがは勇者さまか。
どんな相手にも憐れみは感じるらしい。
お前はそれで良い。
勇者だからな。
だが、俺は違う。
俺はネオジョルトの為なら悪鬼羅刹にもなる。
生かしておく意味が無いなら駆除するしかあるまい。
可哀想だと言う理由で、害虫を生かしておく意味などありはしないのだから。
「ひぃーひぃー」
宰相が泣きながら自分の指を見る。
そんなに折れた指が大事か。
殺され、拐われた子供たちよりも、自分の折れた指の方が大事か。
「悪魔めー!神よー!この悪魔を罰したまえー!」
宰相が泣きながら神に祈った。
「それは無理だな」
宰相とケンが同時に俺を見る。
「悪魔は殺して心臓を取った。神はこの前爆発四散した。どちらも邪魔をするなら叩き伏せる。他の神でもな」
それを聞いていたウロコフネタマイトが、満足げに小さく笑った。
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