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八二四
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ケンの顔に逡巡が浮かぶ。
「君たちは世界征服をしてどうするつもりだ」
ケンが尋ねた。
「別に。どうもしない」
「どうもしない!?」
ケンが驚いた。
「何もしないと言うのか!?」
「そうだ」
ケンはそこで初めて笑った。
「なんだ、冗談か。脅かすなよ、人が悪いな」
ケンが笑い転げる。
だが、俺たちの真顔を見て些か表情を曇らせる。
「な、なんだい。そんな怖い顔をして……」
「別に信じる信じないはお前の勝手だ。だが、我々は別に冗談を言っている訳では無い」
「世界征服をしておいて、何もしないなんて、あり得る訳無いだろう!」
ケンが吼える。
「世界はこのままが良い。だが、このままでは良く無い所もある。我々はそれを取り除き、あくまでも人間が自らの意思で進んでいく事を『見守る』のが目的だ。だから人間が自らの意思で滅びの道を行くのならそれも『見守る』」
ケンが目を白黒させる。
「滅びるのも見ているだけだと言うのか!?じゃあ何の為の支配なんだ!」
「さあ?オオムカデンダルの意思だからな。たぶん彼はナンダカンダ良いながら結局人間が好きなんじゃないのか?」
俺はそう答えた。
「オオムカデンダルと言うのは?」
「ネオジョルトの幹部だ。俺はそれに従っている」
「君はそれで良いのか!」
「ああ」
「なんて事だ……」
ケンは頭を抱えた。
無理も無い。
普通はそう簡単に理解出来る事では無いし、一般市民にはあまり関係が無いからな。
「まるで神にでもなるつもりか……」
言われてみれば確かにそう言えなくも無い。
まあ、だとしてもネオジョルトを知れば、それ程大それた事でも無いように思えてくるから不思議だ。
「勇者の立場としては難しいな」
俺はケンに言った。
世界を救うのが勇者の使命。
そう言う意味ではネオジョルトは彼の倒すべき敵だ。
しかし、我々は何もしないのだ。
何もしない相手を一方的に敵視して戦うのは、果たして勇者の立場としてはどうなのか。
「……」
ケンは黙りこくる。
「僕はもう少し君たちを観察しようと思う」
「好きにすれば良い」
俺はそう言ったが、『観察を続ける』と相手に対して正直に言う所に、ケンの人間性を見た気がした。
アジトに着く。
格納庫へと降りた俺たちは、宰相と国王をアジトへと連行した。
「国王陛下は僕が観る」
ケンはその役目を自らの役目だとし、王を護るように丁寧に扱った。
メタルシェルから降りる。
わー、わー、わー
騒がしいな。
何事かと見ると、子供たちが騒いでいる。
あれは、救出した子供たちか。
その子供たちの中心に。
「お、帰って来たか」
子供たちに群がられた男がこっちを見てそう言った。
頭の上にまで子供がよじ登っている。
オオムカデンダルだ。
「君たちは世界征服をしてどうするつもりだ」
ケンが尋ねた。
「別に。どうもしない」
「どうもしない!?」
ケンが驚いた。
「何もしないと言うのか!?」
「そうだ」
ケンはそこで初めて笑った。
「なんだ、冗談か。脅かすなよ、人が悪いな」
ケンが笑い転げる。
だが、俺たちの真顔を見て些か表情を曇らせる。
「な、なんだい。そんな怖い顔をして……」
「別に信じる信じないはお前の勝手だ。だが、我々は別に冗談を言っている訳では無い」
「世界征服をしておいて、何もしないなんて、あり得る訳無いだろう!」
ケンが吼える。
「世界はこのままが良い。だが、このままでは良く無い所もある。我々はそれを取り除き、あくまでも人間が自らの意思で進んでいく事を『見守る』のが目的だ。だから人間が自らの意思で滅びの道を行くのならそれも『見守る』」
ケンが目を白黒させる。
「滅びるのも見ているだけだと言うのか!?じゃあ何の為の支配なんだ!」
「さあ?オオムカデンダルの意思だからな。たぶん彼はナンダカンダ良いながら結局人間が好きなんじゃないのか?」
俺はそう答えた。
「オオムカデンダルと言うのは?」
「ネオジョルトの幹部だ。俺はそれに従っている」
「君はそれで良いのか!」
「ああ」
「なんて事だ……」
ケンは頭を抱えた。
無理も無い。
普通はそう簡単に理解出来る事では無いし、一般市民にはあまり関係が無いからな。
「まるで神にでもなるつもりか……」
言われてみれば確かにそう言えなくも無い。
まあ、だとしてもネオジョルトを知れば、それ程大それた事でも無いように思えてくるから不思議だ。
「勇者の立場としては難しいな」
俺はケンに言った。
世界を救うのが勇者の使命。
そう言う意味ではネオジョルトは彼の倒すべき敵だ。
しかし、我々は何もしないのだ。
何もしない相手を一方的に敵視して戦うのは、果たして勇者の立場としてはどうなのか。
「……」
ケンは黙りこくる。
「僕はもう少し君たちを観察しようと思う」
「好きにすれば良い」
俺はそう言ったが、『観察を続ける』と相手に対して正直に言う所に、ケンの人間性を見た気がした。
アジトに着く。
格納庫へと降りた俺たちは、宰相と国王をアジトへと連行した。
「国王陛下は僕が観る」
ケンはその役目を自らの役目だとし、王を護るように丁寧に扱った。
メタルシェルから降りる。
わー、わー、わー
騒がしいな。
何事かと見ると、子供たちが騒いでいる。
あれは、救出した子供たちか。
その子供たちの中心に。
「お、帰って来たか」
子供たちに群がられた男がこっちを見てそう言った。
頭の上にまで子供がよじ登っている。
オオムカデンダルだ。
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