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本編
三矢報いる
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「誰だか知らんが間違いなく強敵だな」
全員に聞こえるように言うと、ジンは半身に構えた。
「お前は強い。はっきり言って滅茶苦茶だ。だからこれから五人がかりの全力であたる。悪いが卑怯と思ってくれても構わん」
ジンが牛嶋に言った。
何やら雰囲気が変わった事は、牛嶋も敏感に感じていた。
構えらしい構えを取らなかった牛嶋が、初めて刀を中段に構えた。
今度は逆にジンが牛嶋の変化に気付いた。
さっきまでとは気の質が違っている。
剣気は増しているのに、殺気は感じられない。
この期に及んでまだ我々と戯れるつもりか。
なんと言う男だ。
底の知れない牛嶋という男に、ジンは鳥肌がたった。
「オオオオッ!」
ジンの気当たりが牛嶋を打つ。
牛嶋は微動だにしない。
猛然と飛び出したのはジンだった。
一足跳びに牛嶋の領域を侵犯する。
一刀両断。
袈裟斬りに降り下ろされるジンの剣を、牛嶋は身体を横にしてかわした。
一瞬で攻守が入れ替わる。
牛嶋の前にジンが側面を晒す形となった。
その脇腹へ牛嶋は刀の柄で打撃を加える。
だが意に介さずジンは無表情で剣を横へと振り払った。
牛嶋は頭を低くしてこれをかわす。
もう一撃、みぞおち辺りに打撃を加えられそうだ。
そう思った牛嶋だったが、当て身の動作を途中で止めてジンから離れた。
際どいところでジンと牛嶋の間を矢が通過する。
さっきと同じタイミングだな、と牛嶋は思った。
このわずかな隙間を正確に、且つ躊躇なく射抜いてくる度胸と腕前。
反撃する相手を確実に仕留められるタイミングだった。
倒せずとも今の様に攻撃を中断させられれば、意味はある。
矢の飛んできた方向を一瞥した。
レイコが既に二の矢をつがえている。
だが、やたら滅多に射ってくる気配は無い。
あくまで射ちどころ以外では射掛けてこないらしい。
ジンも深追いしてこなかった。
牛嶋はジンの目を見た。
何かを見ている。
自分の背後。
牛嶋は察して飛び上がった。
鎖の付いた鉄球が、跳躍した牛嶋の足の下を通り過ぎた。
そこへチャコが背後から飛びかかる。
空中ではかわせない。
これも定石通りか。
だが牛嶋は恐るべき反応速度と身体能力で、チャコの鉄棒を刀でもって背中で受け止めた。
「かわせないなら受ける、か」
見ていたジンが言った。
「化物野郎が!」
鉄棒を受け止められたチャコが吼える。
ドッ! ドッ! ドッ!
刀で背中を守った牛嶋の胸を、腹を、矢が穿った。
その数、三本。
腹に一本。胸に二本。
これが本命。
流れる様な連携も見事としか言いようがないが、この正確さと人間離れしたスピードが最も驚異的だった。
着地した牛嶋は自分に刺さった三本の矢を見た。
全員に聞こえるように言うと、ジンは半身に構えた。
「お前は強い。はっきり言って滅茶苦茶だ。だからこれから五人がかりの全力であたる。悪いが卑怯と思ってくれても構わん」
ジンが牛嶋に言った。
何やら雰囲気が変わった事は、牛嶋も敏感に感じていた。
構えらしい構えを取らなかった牛嶋が、初めて刀を中段に構えた。
今度は逆にジンが牛嶋の変化に気付いた。
さっきまでとは気の質が違っている。
剣気は増しているのに、殺気は感じられない。
この期に及んでまだ我々と戯れるつもりか。
なんと言う男だ。
底の知れない牛嶋という男に、ジンは鳥肌がたった。
「オオオオッ!」
ジンの気当たりが牛嶋を打つ。
牛嶋は微動だにしない。
猛然と飛び出したのはジンだった。
一足跳びに牛嶋の領域を侵犯する。
一刀両断。
袈裟斬りに降り下ろされるジンの剣を、牛嶋は身体を横にしてかわした。
一瞬で攻守が入れ替わる。
牛嶋の前にジンが側面を晒す形となった。
その脇腹へ牛嶋は刀の柄で打撃を加える。
だが意に介さずジンは無表情で剣を横へと振り払った。
牛嶋は頭を低くしてこれをかわす。
もう一撃、みぞおち辺りに打撃を加えられそうだ。
そう思った牛嶋だったが、当て身の動作を途中で止めてジンから離れた。
際どいところでジンと牛嶋の間を矢が通過する。
さっきと同じタイミングだな、と牛嶋は思った。
このわずかな隙間を正確に、且つ躊躇なく射抜いてくる度胸と腕前。
反撃する相手を確実に仕留められるタイミングだった。
倒せずとも今の様に攻撃を中断させられれば、意味はある。
矢の飛んできた方向を一瞥した。
レイコが既に二の矢をつがえている。
だが、やたら滅多に射ってくる気配は無い。
あくまで射ちどころ以外では射掛けてこないらしい。
ジンも深追いしてこなかった。
牛嶋はジンの目を見た。
何かを見ている。
自分の背後。
牛嶋は察して飛び上がった。
鎖の付いた鉄球が、跳躍した牛嶋の足の下を通り過ぎた。
そこへチャコが背後から飛びかかる。
空中ではかわせない。
これも定石通りか。
だが牛嶋は恐るべき反応速度と身体能力で、チャコの鉄棒を刀でもって背中で受け止めた。
「かわせないなら受ける、か」
見ていたジンが言った。
「化物野郎が!」
鉄棒を受け止められたチャコが吼える。
ドッ! ドッ! ドッ!
刀で背中を守った牛嶋の胸を、腹を、矢が穿った。
その数、三本。
腹に一本。胸に二本。
これが本命。
流れる様な連携も見事としか言いようがないが、この正確さと人間離れしたスピードが最も驚異的だった。
着地した牛嶋は自分に刺さった三本の矢を見た。
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