ドグラマ ―超科学犯罪組織 ヤゴスの三怪人―

小松菜

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本編

鬼神

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「ばあかめえ!  死ねえ!」

野盗達が一斉に殺気立つ。
各々手には鉄棒や刀剣類が握られていた。
勿論手入れなどした形跡は無い。
切れ味など度外視である。力任せに相手をブッ叩斬る道具だ。
口々に奇声を発しながら、野盗達は数に物を言わせて襲い掛かった。

ジンは無言で迎え撃つ。
と言っても納刀した為、素手である。
その表情に少しも焦りや緊張の色は見えない。
避けられる攻撃はわずかに動いてかわし、隙の大きな攻撃は先に急所を突いた。
傍目には何もしていない様にさえ見えるだろう。
瞬く間に数名が地面にうずくまった。

正面に飛び出した大男が、巨大なマサカリを振りかぶりジン目掛けて振り下ろす。

「なにい!」

ジンは恐れずに一歩近付くと、手のひらでマサカリの柄の終わりを押さえた。
それだけでもう大男はマサカリを振り下ろす事が出来ない。
渾身の力を加えてもびくともしない。

そのままジンは相手の股間を蹴り上げた。
倒れる相手を踏みつけて先へ進む。

崩れた建物の跡が塀の様に連なっている。
ジンは、ヒョイと一足飛びにその上へ飛び乗った。
その裏には野盗が潜んでいた。
隙を窺っていたが、ジンが近付いてきて焦っていた所へ頭上に現れたのだ。

ひい、と声を上げて男は、慌てて投擲用の手斧を振り回した。
同時に背後から、ヒョオッと風切り音がして別の手斧が飛んできた。

ジンは塀から飛び降りた。頭上を手斧が過ぎて行く。
目の前にジンが降りてきた事で、パニックになった男は無我夢中で両手に持った手斧を振り回した。
ジンは相手の両手首を掴まえた。
男は両手を封じられ咄嗟に頭突きを繰り出した。
後ろへ反ってから勢いを付け、ジン目掛けて頭を突き出した。
ガゴッ、と鈍い音がする。
男の頭がジンの額に当たった。

「鍛えるってのは、全身もれなく鍛えて初めて鍛えたって言うんだよ。俺に急所は無い」

ジンは眉一つ動かさずそう言うと、今度はジンが頭突きを返した。
グシャッ、とさっきとは違う音がした。
男の額が不自然に陥没していた。
そして、そのままその場に崩れ落ちた。

ジンは塀の陰から出た。
辺りには急所を正確に突かれて絶命した死体が転がっている。
他に身を潜めていた気配は無くなっていた。

「逃げたか。賢明だな」

ジンは一人ごちると馬車に戻った。

「流石だな。実際にお前が闘う所を初めて見たが、とても人の動きには見えん」

千代之助が感心しきって言った。
チャコも感心していた。
しかし、チャコはどうしてもジンが古巣で修行する意味が解らなかった。
今の闘いを見ても、あれだけの動きをするジンにこれ以上誰が稽古を付けられるのか。
ましてや重傷を負っていてこれだけの闘い方をするのだ。
これ以上は精神的な修行か、身体能力強化の為のトレーニングしか考えられない。

後は奥義の開発くらいか。
しかし奥義の習得には時間がかかる。
技のヒントを得る所から始めなければならない。例えばどのような技なのか、使い所はどこなのか。
それが見えてから実際の動きや、理論の構築に入る。
その為に必要な筋肉を養うトレーニングも同時に始まる。

どれもほぼ一人で行う事ばかりである。
ジンさんが自分に着いて来たのは、修行の相手が務まるのが同じ五枚看板の自分しか居ないからでは無いのか。

「ジンさん、古巣で修行して今より強くなれるんですか」

チャコはストレートに疑問をぶつけた。
ジンはチャコを見た。
同時に千代之助もチャコを見た。

「なれないね」

ジンがあっけらかんと言った。
千代之助が今度はジンを見た。

「何?  じゃあ何しにいくんじゃ?」

千代之助がチャコの代わりに質問した。

「受け取りたい物があるんですよ。三つほどね」
「受け取りたい物?」

ジンの答えにチャコがオウム返しに聞き返した。

「そんなに時間は掛からないと思いますよ。師匠が嫌だと言わない限りは」

ジンはそう言って愛馬のポピーに跨がる。

「さ、もうすぐだ。先を急ごう」

そう言うとジンは先頭を歩いた。
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