魔王でした。自分を殺した勇者な婚約者などお断りです。

一零

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勇者なんかお断り!!13歳

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リヨネッタ13歳

 だいぶ淑女らしくなってきた彼女は、笑顔を張り付けたまま内心怒り狂っていた。
 いまは同じ貴族階級である公爵家嫡男ハビエル・ゾグラフの16歳になる誕生パーティーに呼ばれている。

 さっきから主役のハビエルが彼女の腰を抱いたまま皆に挨拶をしているのだ。
 ほんの数分だが、第一王子の婚約者であるリヨネッタを自身の婚約者のように扱うその様に彼女は笑顔を取り繕うので精一杯の状態を迎えていた。
 寄りにもよって、この日はスティーブの代役も兼ねた挨拶にきているので彼はいない。両親は媚びを売りにきた他の来客に捕まっている。簡単な挨拶で終わると聞いていたのに、散々な状態だ。

 数分前にハビエルに祝いの言葉を贈っていたところ予想外に人が集まってきて、彼女が下がろうとしたところを相手が器用に抱き寄せてきたのだ。時期王妃であり、王子代理の彼女の扱いに周囲も何とか助けようと話題をふっている。

「ゾグラフ公爵家は最近、新しい事業を始められたと聞きました。こちらで私共とお話ししませんか?」
「それは良い、我々と一緒にいきましょう!それで、サンチェス令嬢を少し休ませて差し上げたいのですが…」
「それは檀上の父上と話してくれ、せっかくの機会を邪魔しないでいただきたい。」

 気づいているのかいないのか、女ったらしの異名を持つハビエルは整った顔をだらしなく赤らめ、彼女を離そうとしない。

「あのご挨拶もありますでしょうし、わら…私はこれで失礼いた…」
「前からサンチェス家とはもっと懇意になりたいと思っておりました。魔法を駆使しているお姿にずっと憧れていたので、こうしてお話しする機会を頂けて光栄です。」
「まぁ、光栄ですわ。すみません、あちらに学友がおりますので挨拶にいきたいのです。ここで…。」
「貴方の友人なら自分もぜひ仲良くなりたいですね!紹介してください。」
「あの、ちょ…」

 何とか離れようとするもべらべらとしゃべって、彼女の話を聞こうともしない。そのまま彼女が近づこうとしたダヴィデのところへ一緒に歩こうとしている。
 ハビエル相手にリヨネッタは行動にイラついてはいても、本当に何も感情が湧かなかった。どうでもいい存在、たまたま髪に引っかかった邪魔な葉程度の感情しかない。

(これだから人間は!!いや、こやつが飛びぬけて阿呆なだけか!!不敬罪にしたいが、階級が同じことが憎らしい!こやつの父親は何を…)

 リヨネッタが檀上をみればニヤニヤとこちらを満足そうにみているゾグラフ家の当主と目が合って、何を企んでいるか察した。

(公にはまだ婚約者としてではなく、婚約者候補、じゃな。まだチャンスがあると踏んだか…)

 彼女が第一王子唯一の婚約者候補故に皆が婚約者として扱っていたが、まだ確定していない。彼女自身もこれまではやんわり否定してきてしまっている。


(どうするか、ここで一喝すれば今日の主役であるハビエル様に泥を塗る…。それはサンチェス家にも迷惑になるな。ふむ…後で抗議文を送るのは確定として…)

 どう距離をとろうか悩んでいたリヨネッタの耳に懐かしい不気味な声が響いた。

―あるじを困らせているのはこいつか?やっと忌々しい光からあるじが離れてくれたのに!!
―許せないぃぃ、ボクラだって抱っこされたい。
―踏まれてたい、触ってほしい
―またボクラをぷにぷにしてくれ
―こいつ邪魔、邪魔だよ

「む?」

 邪悪な気配に嬉しくも不思議な気持ちになって、リヨネッタはハビエルに抵抗するのをやめた。それをどう捉えたのか、ハビエルは嬉しそうに更に彼女の腰をひいて抱き着くようにして話しかけてくる。

「実はですね、リヨネッタ様が私の唯一勝てないナンパのライバルである弟を、入学式で振ったと聞いた時から面白い女性だと思っておりました。」
「入学式?あぁ、そういえば何やら変な話し方の人に話しかけられたような…」
「そう!!弟はリヨネッタ様の1つ上で騎士科の生徒でございます。かの魔王を倒した勇者一行の1人!!剣士の子孫である我が家は騎士として生業をたてているのですが、弟は詩も得意でして…。」
「あの変な話し方は詩を読まれていたのですね…」

 上の空でハビエルと会話しながら、気配に耳を澄ませる。


―邪魔、そうかこいつが剣士の子孫か…
―ボクラがくっつきたいのに、やっと会えたのに
―呪っちゃえ、呪っちゃえ
―こいつもボクラと同じになればいい、それなら同じ

(不穏なことを言い出したな…このままだと妾も巻き込まれるか?この声は四天王に数えていたが集団でできた存在で魔族の怨霊たちと…スライムたち、か??)

 声を絞ってリヨネッタは彼らに魔力をのせた命令を贈ってみた。

「やるならくっついている者だけに」
「ほら、あちらにいる弟が悔しそうな顔でこちらを…え?今なにか…?」

 話しに夢中になっていたハビエルが聞き返した瞬間だった、彼の端正な顔が溶けだしたのだ。大量の汗の様に水がこぼれていき、肩の上で人肌色のスライムのような形でポヨンと顔が落ち着いた。

一拍
会場からはすさまじい悲鳴が広がった。ずっと様子をうかかがっていた護衛が駆け寄ってきて、リヨネッタをハビエルから引きはがす。

 数秒してハビエルは元の端正な顔に戻った。悲鳴をあげていた人々は目をこすり、見間違えかと首を傾げている。
いい機会だとばかりに、護衛達の誘導でハビエルから距離をとって会場出口近くまで誘導された。

―離れちゃった、じゃあいいや
―つまんない
―もっと魔王さまとくっついていたかった

 そんな声がどこからか聞こえる。リヨネッタはもう一度命令を口にしてみた

「妾と共においで」
「リヨネッタ様?」

 護衛達が首を傾げているが、望んだものたちからの返事はなかった。

 会場は当主の声によって直ぐに落ち着きを取り戻したが、この後ハビエルはリヨネッタは勿論、女性にくっつくと綺麗な顔だけが溶けてスライムになる呪いにかかった。

 型式を重んじる剣士の子孫だったけどだね、と、馬鹿にされるようになるが、ナンパばかりして女性問題ばかり起こしていたせいで、人々の嘲笑のネタになるだけだった。


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