ヒロインはどこに行った?

一零

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土曜日の習い事、これからの習い事

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土曜日

 朝から何やら両親が、グリフィス領に呼ばれていていなかった。早朝から兄たちにドレスの仕立てと装飾選びに振り回された。夜になってようやく解放される。
 着飾った姿の私を迎えたのは、真っ暗な夜を明るい光と花で豪華に彩られた結婚式場のような自分の屋敷。
 
玄関前には、格好いい白いスーツ姿の許婚がいる。

「え、エリオット…? 」
「僕だけが君に片思いをしているんだと思ってた…。クラリベルがそんなに結婚に乗り気だなんて思ってなかったから嬉しいよ。苦労したけれど、これでずっと一緒にいられるね。」

 彼に見惚れて立ち止まっていると、兄たちに押されて彼の隣にいた。

「どうか、僕と結婚してください。」

 彼が跪いて、プロポーズをされる。
 時間を置いて、彼の気持ちを理解した。

「は、はい…?」

 夢見心地で結婚を了承している自分。記憶が戻った頃がはるか彼方に感じる。

 両想い…?
 いや、夢かしら!?…どういうこと!?幸せ…え…?

 昨日、恋心を消す決意をしていたのにこんな展開は聞いてない!


 そこからの展開は早いのなんの。
 朝からグリフィス領に行っていた両親とグリフィス侯爵夫妻が屋敷から祝福しながら出てくるわ。兄たちが号泣しながら頭を撫でてくるわ。早馬が飛び込んできて国王陛下の印の入った結婚受理書を見せられるわ。

 怒涛の展開にエリオットを見つめる。昨日の婚約解消の話が、どうしてこうなったの…?

「気が付かなくて、ごめんね。卒業後に結婚なんて遅すぎるよね…。 これから夫婦として学園全員にも伝えるから安心して?」

あ、そう解釈されてた!?なるほどー??
 正式な結婚誓約書を彼に差し出されて、目を白黒させながらサインをする。

これは、断罪イベント完全回避!!いいえ、それよりも彼との未来が、あれ、ヒロインは…?
 思考がまとまらないまま、どんどん現実だけが進んでいく。


 金曜日のオカルトクラブも土曜日の魔法薬学も実行できませんでした。
 むしろ習い事は全て中止になった。

 日曜日は彼との今後の対応に追われて終わった。
 月曜日は学校中に私とエリオットが婚約していたことを書いたビラが貼られ、ポスターには結婚式についての詳細が大きく書かれている。
 火曜日に私と彼のボランティア講師の習い事が慈善事業「実績」として表彰され、今後は夫婦で活動を広める宣言をした。
 水曜日に神殿からも神が認めた結婚として結婚受理書が届いた。
 木曜日は休んで、大々的な結婚披露会を挙げるための準備に追われた。
 金曜日には少し状況が呑み込めて、彼の領地に移動する準備を進める。
 土曜日はエリオットと同じ部屋に住むことが話し合いで決まった。


 断罪イベントはこうして一年とちょっとで回避できて、私はクラリベル・グリフィスに名前が変わった。





 彼と結婚してからひと段落するのに、半年もかかってしまったよ。

 習い事は日曜日から水曜日までまた再開している。
 木曜日も相変わらず。
 金曜日は夫と領地の為の勉強会になった。
 母の勧めた通りになっている。母、凄い…。
 土曜日は花嫁修業でお義母さまと一緒に楽しく過ごしている。

 最後の放課後の金曜日も土曜日も埋まった。

 寝ても覚めても元許婚。
 もう夫の顔三昧よ!
 それこそ親の顔より見ているかも知れない。あぁ、きっとこれからもいく先々に彼がいる。
 嬉しいけれど!!


 一緒になってわかったけれど、エリオットは働き過ぎだとやっぱり思った。
 夫に自己管理について話して、仕事を減らすように言った。

「そんなに心配してくれる人は初めてだ。花嫁修業が終わったら、僕のスケジュールは君に任せるよ!」

 今すぐ仕事を減らして休めと言ったはずなのに話が通じなかった。後で従者に彼の仕事量について苦言を入れよう!

 …寂しいとか、八つ当たりでは無いですよ。
 密かに仕事マネージャーとしての習い事をする決意をした。

 私はエリオットを支えられる人になりたい。




3年生になった。

「ヒロインはどこに行ったの?」

 忙しすぎてヒロインのことを忘れていたことを思い出した。久しぶりにゲーム関係がどうなっているか調べてみる。
「クランベリー様が〇〇してくる。」
といった話は過激化するどころか消えていた。
 そもそもヒロインの話が途中からランチタイムで挙がらなくなっていたし、学園内から貴族子息が何人もいなくなっていた。
 攻略対象だった内、2人も消えている。

 狩りの時に挨拶がてら、私を口説いて来ていた女ったらしな伯爵子息。
 野鳥観察クラブでヒロイン争奪戦の際に、私とクラブメンバーを突き飛ばした脳筋の近衛団長の息子。

 この二人の攻略対象が学園を退学になっていた。
 2人について調べようとすると夫が背後に立つので、あんまり深く関わっちゃいけないと生存本能が告げた。それ以上調べられなかった。

 ヒロインについては隠密に調べたけれど、入学した事実すら無くなっている。
 何やらいくつも不正が見つかったそうだ。
 どれが見つかったんだろうね??

「本当に、ヒロインはどこに行った?」

 腹黒女子のランチ会でもヒロインのその後の行方はわからないそうだ。
 どうやら残った攻略対象と夫が関わっているらしいけれど、国の政務機関とのつながりが見つかってからは調べるのを止めた。
 もしかしたら、腹黒ランチ会の貴族令息バージョンもあったんじゃないかと思う。


 でも、もうエリオットを信じている。だから悪い事にはならないことだけ確信できた。


 私の努力も別方向だけど実ったし、婚約破棄にも婚約解消にもならなかった。
 うん、ハッピーエンドかなー?





 2年経ったら父に婚約解消をしてもらうはずだったのに、実際は学園内公認の学生夫婦ですよ。
 なんなら3年生になったときに学園中にもう一度夫婦だという張り紙を新入生あてにされたし、卒業式では学園をあげて祝賀会をしてもらうことになりました。
 あの時の「周囲の人が知らない」発言がこうなるとは思わなかった…。私の夫、仕事をしすぎでは…?


 でも、何が起きるからわからないから現実は楽しい。この世界は、ゲームの世界ではなかったのよ。

 やっと慣れてきて、どこでエリオットに会っても驚かなくなってきている自分もいる。
 絶対に夫からは逃げられないと確信しているけど、素直に喜んでおこう。

「幸せだわー!」
「残りの学生結婚生活も楽しもうね。」

 いつの間にか隣でおっとり笑う夫に、私も笑って返事をした。




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