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1章

第6話 隣人

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
生徒寮A棟
キャロルの寮室

「チュン、チュン」
小鳥のさえずり。

キャロル「ん・・・・・・、朝・・・・・・」
うとうとするキャロル。寝返りをうつと誰かいる。
キャロル「・・・・・・おかあ・・・・・・さ?」『いや、違う。ここは家ではなく、寮の個室だ』
一気に覚醒するキャロル。
キャロル「ギャアァァァァッァァーーーーーーー!!!!」『だれーーーー?!?!!』

????「うっ、にゃ~、おはよ~」「むにゃむにゃ・・・・・・」
キャロル「誰なのあんたっ!!!」
????「え~、わたしのこと知らない~?」
キャロル「知らないから聞いてんのっー!!!」
????「冷たいなぁ~、隣の部屋に住んでるんだよ~」
キャロル「と、隣?」『本棟側の2118号室がセリア、ということは正門側の部屋?』

????「こっち~」
そう言って、壁を指を指す。
キャロル「2120号室ね」
????「うん、そうにゃ~」
キャロル「で、だれなの?」
????「ミーシャ・・・・・・」
起き上がり、ベットの側にすくっと立つ。キャロルより少し背が高く、スタイルがよい女子猫。
ミーシャ「わたしはミーシャ・E・サラフィアン」「よろしく・ニャ☆彡」
キャロルの目と鼻の先まで歩み寄りポーズを決めるミーシャ。
固まるキャロル。

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
魔法鉱石室

魔法鉱石学/初回授業

綺麗な鉱石がたくさん並べられた講義室。

セリア「キャロルちゃん、その子はー?」
キャロル「となりの部屋のミーシャさん」
セリアとキャロルの会話を無視してキャロルを撫でまわすミーシャ。
セリア「ずいぶん仲良しなのね・・・・・・」
キャロル「違うっ!!」「勝手にくっついてくるの!!」「今日、朝起きたら隣に寝てたのっ!!!!」
セリア「えっ、そんな深い関係にっ!!!」
なぜか嬉しそうにほほを赤らめるセリア。なんか勘違いしているようだ。
キャロル「絶対違うからね。セリアちゃん・・・・・・」

エリザール「はい。授業始めるよ」
いつの間にか教卓に立っていたワシ鼻のおばあちゃん。背丈はとても低い。
エリザール「わたしが魔法鉱石学を担当するエリザール・L・ラウリア、です」
「わたしは過去に騎士団に所属したことはない、非力なおばあちゃんです。優しくして頂戴ねぇ~」
生徒に苦笑いが広がる。
エリザール「えっと、この授業では、ナイトソードや魔法具、その他工業製品に至るまで広く扱われる鉱石について勉強します」
「ちゃんと、勉強してねぇ~(怖い顔)」
多くの生徒が顔を引きつらせる中、興味津々そうなカーリン。

エリザール「座学を始める前に、皆さんのナイトソードにはめる魔法鉱石を選ぶことから始めたいと思います」
「奥の部屋、集石室しゅうせきしつに皆さん移動してくださいね」

生徒一同「わぁ~」
集石室に移動した生徒。
部屋には所狭ところせましと、様々な鉱石が陳列・積載されており、見る者全てを魅力した。

エリザール「きれいでしょう~、わたしはこれが好きでねぇ、高等研究学院まで行って研究した」「気付いたらこの学院にいたという訳さ」
ハッハッハッと笑うエリザール。
エリザール「鉱石は、効率良く自身の魔力を剣(ナイトソード)に伝導させるため使用します」
「なお、どの石をでも一定の効果を発揮しますが相性があります」
「色々試して、自分に合ったものを選んでください」

ミック「すいませんー、何か選ぶ基準はあるんですかー?あまりにも多いんでー」
するとニヤリとするエリザール。
ミック「・・・・・・え」
よくわからず、たじろぐミック。
エリザールは胸に手を当てて答える。
エリザール「こころに聴きなさい」

皆、手にとっては気になった石を持ってエリザールに確認しに行く。
既に何人かは相性の良い石を見つけたらしい。
キャロル『どれがいっかなー』
部屋の隅の方に歩いていくキャロル。

キャロル「これはどうですか先生?」
キャロルは自分が不思議と惹かれた石を持ってエリザールに問う。
エリザール「おお、お目が高いねぇ~。これはいまは亡き王妃カタリナ様もナイトソードに使っていた石だねぇー」
キャロル「女王陛下を知ってるんですか!?」
驚いて問うキャロル。
エリザール「もちろん、知ってるよ」「彼女もここの生徒だからねぇ・・・・・・」
キャロル「どんな生徒だったんですか?」
どうして聞きたかった。騎士キャットナイトになった人物の人柄。
エリザール「そうだねぇ、ハツラツとして、とても芯のある生徒だったねぇ」「必ずキャットナイトになるんだって」
無言で聞くキャロル。
エリザール「本当にナイトになって、王子様と出会い、結婚して・・・・・・」「あんないい子が、戦争で死んでしまうなんて、わたしは悲しいよぉ・・・・・・」
涙を浮かべるエリザール。
キャロル「先生・・・・・・」

エリザール「今となっては・・・・・・ナイトになることが、本当にあの子の幸せになったのか、分からなくなる」
「せめて、お世継ぎを生む時間があればこの国も、もう少し安定していたかもしれないねぇ」
言葉を失うキャロル。隣にいたセリアも同じようだ。
エリザール「少し、話過ぎたね・・・・・・」「さぁ、その石をはめて力を込めてごらん」
キャロル「は、はい!」
不思議なひかり方をする石。
キャロル「ど、どうでしょうか?」
エリザール「これで、間違いないようだね」
しみじみと答えるエリザール。
キャロルのナイトソード用の鉱石は真紅しんくの輝きを放っていた。
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