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The force, cries in alone
帰路、猫
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逃げ出そうとする青年を五反田が裸締めにし、魔王を呼ぶぞと脅して鎮圧する事で、なんとか紋章を刻むことに成功する。ボロボロになった村を通り抜けながら、乗ってきた馬車まで戻り、魔王城までの帰路に着く。
「あの...エイトさん、これ...ありがとうございました」
「あ...ああ、全然」
向かいに座る伊香保からブランケットを手渡される。これを出す事を目的として能力を使ったわけでは無かったので、礼を言われるのが非常に気不味い。
なんとなしに広げてみると、生地のどこも濡れておらず、それどころか出した時より手触りが良くなっている気がする。魔法で乾かしたりでもしたのだろうか。
「おお、ふわふわだ...」
「お、それいいニャ」
膝元に広げたブランケットの上に、ピコピコ動く獣耳の付いた頭が転がり込んできた。伊香保は向かい側に座っているし、元女神は隣で涎を垂らしながら眠っているし、五反田は前で手綱を握っているはず。
「......誰!!??」
「うるっせーニャ。ズレるから動くんじゃねーニャ」
「痛ッ、痛い痛い痛いッ...!」
「あれ...ルミィ様...!?」
「い...伊香保、これ誰...!?」
太腿に立てられた鋭い爪の痛みに耐えながら、驚いた様子の伊香保に尋ねる。
「えっと...今回の回収作業に同行...する筈だった方です」
「...なんで今更?」
「はァ~?ルミもちゃんと一仕事終わらせてきたとこニャ。いいから静かにしないと殺すニャ~」
目の前に差し出された指先から覗く鋭い爪に押され、黙って頷く。車輪の回る音と通り抜けていく風の音だけが聞こえる状況に満足気な彼女は、再びブランケットに顔を埋め、睡眠の体勢に入った。
「あ、折角ふわふわなんニャから、下から硬ってぇモンで押し上げるんじゃないニャ」
「だっ...誰がァ!!!」
*****
「はぁ~...拙者いいとこ無しでござったなぁ...あ、そうだ。
魔王城に村の被害状況の確認と報告をする為、鎧の中に入っていた連絡天使を呼び出す。
「は~い、ご連絡ですか~?」
「そうでござる。それより16号殿は大丈夫そうでござるか?」
「はい!あれくらいの衝撃ならなんでもないですよ!」
元気そうに飛び回る隊長の姿を見て、思わずホッとする。隊長を預かって以来、あれ程の攻撃をまともに喰らったのは初めてだ。軍の為、隊長の為、更に訓練に身を入れていかなければならない。
「じゃあ、オフィスに繋いで欲しいでござる」
「分かりました~!」
隊長が手に持ったベルを鳴らして少しすると、小さな背中に背負った大きな魔石から声が聞こえてくる。
「...ええ、そうでござる。魔王様...は仕事、状況は...ああ、それで合ってるでござる。無事にちーとの回収は成功、全員無事に帰還中でござる。それと...対象の暴走と抵抗の影響で、村中の民家の大部分が破壊されたでござる。瓦礫もかなりの広範囲に渡って落下したと思われ、我々の発見できなかった被害者が今後......え?そんなはず...魔王様も...はあ...了解でござる、では...」
「...どうしました?」
「先ほどの戦い、巻き添えを受けた被害者が一人もいなかったそうでござる...」
「よかったじゃないですか...?」
隊長が振り向き、不思議そうな顔をして首を傾げる。
「いや、あれだけの瓦礫で被害者が出ない方が不思議でござる。大量の飛来物を撃ち落とせる力を持った者は、少なくともあの村にはいない筈...」
「でもでも、誰もケガしてないのが一番ですよ!」
「...そうでござるな!そういえば後ろが静かでござるな。皆様、疲れで眠ってしまっているでござろうねぇ...」
五反田がそう呟きながら手綱を繰っている頃、荷台では召喚者の膝元に頭を乗せた猫耳の副メイド長が、すやすやと寝息を立てていた。
「あの...エイトさん、これ...ありがとうございました」
「あ...ああ、全然」
向かいに座る伊香保からブランケットを手渡される。これを出す事を目的として能力を使ったわけでは無かったので、礼を言われるのが非常に気不味い。
なんとなしに広げてみると、生地のどこも濡れておらず、それどころか出した時より手触りが良くなっている気がする。魔法で乾かしたりでもしたのだろうか。
「おお、ふわふわだ...」
「お、それいいニャ」
膝元に広げたブランケットの上に、ピコピコ動く獣耳の付いた頭が転がり込んできた。伊香保は向かい側に座っているし、元女神は隣で涎を垂らしながら眠っているし、五反田は前で手綱を握っているはず。
「......誰!!??」
「うるっせーニャ。ズレるから動くんじゃねーニャ」
「痛ッ、痛い痛い痛いッ...!」
「あれ...ルミィ様...!?」
「い...伊香保、これ誰...!?」
太腿に立てられた鋭い爪の痛みに耐えながら、驚いた様子の伊香保に尋ねる。
「えっと...今回の回収作業に同行...する筈だった方です」
「...なんで今更?」
「はァ~?ルミもちゃんと一仕事終わらせてきたとこニャ。いいから静かにしないと殺すニャ~」
目の前に差し出された指先から覗く鋭い爪に押され、黙って頷く。車輪の回る音と通り抜けていく風の音だけが聞こえる状況に満足気な彼女は、再びブランケットに顔を埋め、睡眠の体勢に入った。
「あ、折角ふわふわなんニャから、下から硬ってぇモンで押し上げるんじゃないニャ」
「だっ...誰がァ!!!」
*****
「はぁ~...拙者いいとこ無しでござったなぁ...あ、そうだ。
魔王城に村の被害状況の確認と報告をする為、鎧の中に入っていた連絡天使を呼び出す。
「は~い、ご連絡ですか~?」
「そうでござる。それより16号殿は大丈夫そうでござるか?」
「はい!あれくらいの衝撃ならなんでもないですよ!」
元気そうに飛び回る隊長の姿を見て、思わずホッとする。隊長を預かって以来、あれ程の攻撃をまともに喰らったのは初めてだ。軍の為、隊長の為、更に訓練に身を入れていかなければならない。
「じゃあ、オフィスに繋いで欲しいでござる」
「分かりました~!」
隊長が手に持ったベルを鳴らして少しすると、小さな背中に背負った大きな魔石から声が聞こえてくる。
「...ええ、そうでござる。魔王様...は仕事、状況は...ああ、それで合ってるでござる。無事にちーとの回収は成功、全員無事に帰還中でござる。それと...対象の暴走と抵抗の影響で、村中の民家の大部分が破壊されたでござる。瓦礫もかなりの広範囲に渡って落下したと思われ、我々の発見できなかった被害者が今後......え?そんなはず...魔王様も...はあ...了解でござる、では...」
「...どうしました?」
「先ほどの戦い、巻き添えを受けた被害者が一人もいなかったそうでござる...」
「よかったじゃないですか...?」
隊長が振り向き、不思議そうな顔をして首を傾げる。
「いや、あれだけの瓦礫で被害者が出ない方が不思議でござる。大量の飛来物を撃ち落とせる力を持った者は、少なくともあの村にはいない筈...」
「でもでも、誰もケガしてないのが一番ですよ!」
「...そうでござるな!そういえば後ろが静かでござるな。皆様、疲れで眠ってしまっているでござろうねぇ...」
五反田がそう呟きながら手綱を繰っている頃、荷台では召喚者の膝元に頭を乗せた猫耳の副メイド長が、すやすやと寝息を立てていた。
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