隣のツンデレさん

瑞原ヒロキ

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第一章

第一章 第2話 自己紹介

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 春。それは出会いの季節。クラスが変わったり、新入生が入ってきたりする。だけどそんなありきたりな出会いではない出会いを自分はした。それは転校生が来たことだ。転校生なんてそれもあたありきたりかもしれないが自分の場合はそうではないと思う。そう思うのは自分だけかもしれないが、彼女にはなにか他の人の出会いとは違うものを感じた。そんなことを考えていたらHRは終わって1限目の授業が始まった。
 3年生になって初めの授業は新年度恒例ともいえる自己紹介の時間だ。こんな
こと、などと言ったら失礼かもしれないがこんなことに50分もかける理由がいまいち分からない。初めは全体で一人ずつ名前と趣味を言っていくらしい。みんなTheテンプレといった感じの自己紹介をしていく。たまにウケを狙ってギャグを披露する人もいたが案の定滑っていた。ちなみに僕は結構おもしろいと思ったものもあった。自分の順番がくるとTheテンプレの自己紹介をした。こういうのはテンプレが案外良かったりする。全員の軽い自己紹介が終わると、次は隣の人と自己紹介をするとのことだった。隣の席の人は西園寺さんか。ここはあまり自分がですぎるのはよくないと思う、西園寺さんのペースに任せるか。西園寺さんがたくさん話しかけてきたらそれに応えることにしよう。
「西園寺さん。改めてだけど俺は綾瀬俊哉。みんなからシュンって呼ばれることが多いかな。趣味は...そうだなぁ...ギターを弾いてるかな。少し弾ける程度だけどね。これからよろしくね。」
「よろしく。綾瀬。私は西園寺麗奈。好きに呼んでくれていよ。趣味は...そうねえ、小説を読むのが好きかな。」
小説か。自分も小説は結構読んでいるので話が合うかもしれない。
「小説好きなんだね。どんな小説よんでるの?」
「別に。普通のやつ。」
「そ、そうなんだね...」
 なんかすごいいい感じに会話できてたのに急にすごく冷たくなった。こういう時会話が得意な人、いわゆる陽キャだったらぐいぐい行くんだろうけど、所詮俺みたいな陽キャのふりをした陰キャにはそんな高度なことは絶対にできない。けどこのまま会話を終わらせるわけにはいかない。周りは楽しそうに話しているのに自分たちだけなにも話さずにいたら目立ってしまうかもしれない。なにより、西園寺さんは転校してきたばかりだから自分だけじゃなく逆隣りの人とも話したいはず。ここは良い感じに会話を終わらせよう。
「よかったら今度おすすめの小説教えてね。」
これが今できる最大限の返答だ。これを言うにも結構勇気が必要だった。
「ええ。気が向いたら教える。」
「そっか。ありがとう...西園寺さん。逆隣りの人とも話してみたら?俺なんかと話すよりよっぽど楽しいと思うよ?」
「ええ。そうしてみる。でも...綾瀬と話すのもたのs...」
「ん?たのs...??」
「な、なんでもない!それより今度綾瀬のギター聞かせてよ!」
「う、うん。」
 西園寺さん、顔真っ赤だったな。なにを言ってるか聞き取れなかったところあったし。でも自己紹介も一応ちゃんとできたしいいか、これから話す機会もたくさんあるし。
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