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第一章
女王の可愛がった妹
しおりを挟むガリシア・ヴォリーン王国のホウム市は宏濶な平原の目立つ丘に建てられた。東に行けば樹海に囲まれ、西に向けば綺麗で青い川が見える。この堅くて侵入しにくい都市は、南の冬鴉市に代わって首都になったばかりだ。四年間の残忍な内戦が終わった後で。
今年二十歳の女王であるウスティニャは、夜明けに城の大門の上に立って煉瓦造の民家を見下ろした。焼かれた民家は半分ぐらいまた建て直されていない。
女王の赭色の長い髪に茶色の釣り目は、朝日に照らされて淡い光を放った。まるで暖かい焔のようだ。
「皮肉だな……ここは魔族を防御するために建てたものだが、兄たちと姉との戦いの切り札として使われたなんて」
ウスティニャは苦笑いした。彼女の三人の兄と一人の姉は死んだのだ。
この城には独特な設計がある甕城がある。坂に登って攻めて来た敵は、山道で矢、石と魔法に阻まれる。甕城に入ると、熱いマグマか寒い雹を食らわれる。
「だが、権力闘争の中で、魔族より家族のほうが怖い! これぞ私たちハリツキ家族だ」
ウスティニャは苦笑いした自分を嘲笑して、城の高い塔を見上げた。そこは、プレヤスラヴァお姉さまと一緒に星を見たところだった。お姉さまを絞め殺した前に。
プレヤスラヴァお姉さまの美しい垂れ目と優しい笑顔は、ずっとウスティニャの頭から消えられない。
「なぜお姉さまが私に歪んだ愛情を抱いたのか? いつも私を操りたいのか? 暖かい姉妹関係築いたと思った……」
独り言を言っている女王は城壁を歩いて、高い塔へ、残れた唯一の家族と会いに行った。
どこから見ても、天蓋付きベッドにベルベットの椅子、この部屋は全然牢屋に当たらない。だが、女王の妹、十四歳の第三王女・ソフィアは足枷をはめられたまま、椅子に座っている。
第三王女は姉と同じ、赭色の髪をしているが、目が青藍色。そういう髪はハリツキ家族の特徴だ。
「ソフィア、最近はどう?」
ウスティニャはドアを開けて部屋に入った。既に二ヶ月間監禁されていたソフィアは姉の顔を見ると、近づこうとした。
「ウスティニャおお姉さま……!」
だが、返事は鞭打ちだった。
「私の名前を言ってもかまわぬとも言った?」
女王は容赦なく妹姫を三回打った。ソフィアは急いで跪いた。
「申し訳ありません……お姉さま、お許しください」
「ソフィア、既に私に従おうと決意した?」
内戦の残酷さが分からない人であれば、女王が妹姫を虐待するとは思っただろう。実は、ウスティニャは妹に裏切ったことが二回ある。
「はい……心から姉が女王になることを支持していますわ」
「そんな言葉、前も言っただろう」
ウスティニャはしゃがんで、妹の顎を持ち上げた。あの整った目鼻立ち、特に釣り目と上り眉、女王は少女の自分と見つめ合っているようだ。
「覚えてる? イラクリーお兄さまがホウムを囲んだ時、お前は『必ず救援してくる』と伝えたが、南の道を封鎖して私と同盟した地方貴族を来させなかった」
「お姉さま、長兄の言葉を信じて悪かったです」
「反省してくれて偉い。もし私が守ってあげねば、既に兄様たちとお姉さまに殺されたぞ」
長兄のイラクリーは、次兄のレヴを殺した後、戦場でウスティニャに斬首された。王族闘争の勝利者のウスティニャは立ち上がり、足の前に俯いた妹を見下ろした。
「しかし、プレヤスラヴァお姉さまが暗殺者を連れて城に潜入した時……彼女に隠れ道まで教えた……」
女王は冷たい目つきで妹を睨んだ。あの暗殺で彼女は肩が傷ついた。もし衛士たちが命まで払わなかったら、今のウスティニャは城ではなく、墓穴にいるだろう。
「一番優秀な従士のヴィグントは、お前のせいで死んでしまった」
「それはプレヤスラヴァお姉さまに脅威されましたから! 貴女の従士を全員殺すよ、と言われました」
「本当? ヘウムを手に入れたかっただけだっただろう。戦争が終った後、姉様がお前に送った手紙を発見したぞ」
言い訳を探し続ける勇気がなくなったせいで、ソフィアは姉の足元にすがって泣き始めた。
「お姉さま……もう一度のチャンスを……私は領地なんていりません。姉の下僕として生きて罪を償いたい」
(昔、姉様を裏切ってもこの風に許しを乞えば無事だった。ウスティニャ姉様が冷酷に見えるが、いつも私を可愛がっている)
とソフィアはそう考えながら、可哀想な振りをしている。
「これから裏切りはしません。お姉さま、信じていただけませんか?」
ソフィアの涙は、ウスティニャの足を濡らした。女王は眉をしかめた。
(昔から、この子はずっと私に守られていたが、二回私を殺そうとした。姉として何か悪かったのか?)
ウスティニャは決断をしてポケットから飴を取り出した。
「泣かないで。可愛い妹よ、飴でも食べる?」
小さい頃から、ソフィアが泣くと、ウスティニャは色々な方法で彼女をあやした。
ソフィアは少し躊躇ったが、飴を口に入った。
その瞬間、ウスティニャは魔法で指力を強化して妹の顎骨を潰した。
「飴の中でお前の心臓の停止を起す毒薬があるぞ」
「ウウウウウ……」
ソフィアは辛い声を出したが、口を開けて飴を吐き出せない。
ウスティニャは怖がった妹を抱えて頭を撫でる。
「安心しろ。ソフィアのことを絶対に忘れない。いつまでも、記憶の中でソフィアはとても可愛い妹だ」
切ないソフィアは両手で飴を取ろうとしたが、ウスティニャの懐から逃げられない。
「ペットの鳥と猫、お世話してあげる。お前を花が満開している墓場に葬るよ」
「ウウウ……」
飴が溶けると共に、ソフィアの生命力も雪のように解けた。最後、彼女は動けなくなった。
女王は、目玉が白目がちになった妹が呼吸が止まったことを確認した後、優しく妹を持ち上げてベッドに置いた。
「妹よ。安心に眠れ。もう、許してあげた」
ウスティニャは妹に鮮緑色の糸製布団をかけて、目を閉じさせた。彼女が窓外に向き、今日は快晴だが、日差しは永遠に彼女の心に当たれないだろう。
女王がドアを開ける前に、もう一度振り返って妹を見た。涙は彼女の血色のない顔から床の白い絨毯に零れた。
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