THEY

RIVER Oikawa

文字の大きさ
2 / 16
第一話

しおりを挟む
 研究員の一人が時計の時間を確認して部屋を出る。片方にアタッシュケースを持って廊下へと歩き出した。



「おや?ここは関係者以外立入禁止の場だよ、何で君みたいな児童が紛れ込んでいる?」 



「そのアタッシュケースの中身返してよ」



「……?悪いがコイツは渡せない。大事なデータなんだ」



「そのデータは私の物よ、こんな姿にさせといて逃げるつもり?」



「君らはいわば実験体だ。我々の指示には絶対命令だぞ」



「私の物を盗んでおいてそんなことまだ言うの」



「お前らには関係ない事だ、早くここから立ち去れ!」 



「嫌だね、返してくれるまでは」



「近づくな!見えないのか、この銃を……」



「脅しなの?そんなの関係ないわ」



大きな耳と尻尾を持った獣人化してしまった女子は男に近づき、アタッシュケースを持っている手の甲を手の鋭い爪で裂いた。男はその場に崩れ込み銃を持った手はすぐさま抑えたが出血は止まらない。アタッシュケースはその場に落ち、女はそのアタッシュケースを拾い、その場を後とした。



「お前、突然変異の実験体だな!」



「私にはちゃんと「な・ま・え」があるの、変な名前で呼ばないで」



「貴様、その立場をわきまえろ!」



「なんのことでしょう……?私達をさんざん嫌がらせして」



「それは研究のためだ、お前らは実験体なんだ」



「私達はあなた達のオモチャじゃないの、いずれ分かるわよ」



「クソが!!」



ひたすら長い廊下を歩き、男は段々と遠くなり消えていく……



「どうした?何があった」



「彼女だ、獣人のような人狼だ。この手も奴にやられた!」



「特徴は覚えていますか?」



「あぁ、突然変異の全身に獣がかっていたよ。容姿は人間じゃない。 あれは……獣だ!」



「直ぐに警備員を集めさせます。博士にも連絡を……!?博士!」



警備員と倒れた男の元へ博士がやって来た。

「博士、どうなさいました。」



「警備員さん、ご苦労様です。ハンドガン、借りても良いかな?」



「博士、何になさいますか」



警備員のホルスターから自動拳銃を取り出し、男に突きつける。



「あの子が廊下を走っていたんだよ。よく見てみると、持っていたのは君に渡した大事な機密資料だ。君は彼女に取られてしまった……」



「し、知りませんよ。何故、彼女が僕の存在を知ってこの資料を持っていたということを !」



「君はあの子に渡したんではないのか ?」



「そんなことしませんよ。だってこの事は極秘です。知られることは絶対にないはずですよ」



「なんとしてでもあれだけは守りきって欲しかったよ、その落ちている銃は何だ?片方の手は爪で裂かれたとしても撃てる気だったんだろう?」



「奴の目はまるで獣でしたよ、殺されるかと思いましたし……」



「で、どうする?これからは彼女を探すのか」



「当たり前です。これから捜索に行かせます」



「行かせる?君の逃がしたものだろう?」



「私なんかただの研究員ですのでそんなことでする者じゃないです」



「自分のミスを他人に巻き込むというのか…」



「いや、でも……」



「そういう人間性は嫌いだ。我々には不要だな」



「ちょっと待ってくださいよ、私はただ……」



「あの資料が世に出れば大変なことになり、国に被害が及ぶほどの重大な物を君は彼女に取られた。彼女の能力を知っておいてのことだったな」



「いいえ、彼女の能力はまだ不明です。ですが無限の能力の可能性は秘めていると……」



「だからなんだ?リスクなどの命にも変えてみせるほどの何かないのか?」



「あの中には……言わないても……」



「外部には絶対とも知られては知ってはいけないんだぞ」



「私は、ただ貴方方にお使いしたくて……」



「そうか無能か……ならば死だ」



「やめてくださいよ、私を殺さないで!」



「最後に問おう!彼女等の開花はいつだ!」



「彼女等!?そのようなデータや資料……!       どうか!許してください!」



床に張り付き必死に命乞いをするが、博士は引き金を引いた。



「私もこんなことはしたくはなかったよ
 ……教頭先生……」



薬莢の転がる音が廊下を響かせる。



「開花など、個性によるモノだ。覚醒など無いだと?子供達には明るい未来が待っているというのに、データ、資料など無いという子供達の将来を潰すような発言をしたお前は許さない」



拳銃を警備員に返し、眼鏡をかけ直す。



「警備員さん、コイツの処理お願いしますね」



「え……いや、でも、他の同僚らはどう説明すればいいのか……」



「人狼に銃を取られて殺された……でいいだろ」



「……わかりました。他の人達にもそう伝えておきます」



「しかし、アイツは何故知っていた?何故奪ったのか」



「我々、警備員に聞かれても……」



「まぁいい、ここのルームにいる子達に聞いてみるよ」



「確かに、仲間同士なら動機がわかるかもです」



「それで誰かも分かる、それでは……」



博士と警備員は離れて行き、警備員は男の処理に取り掛かった。 



「あぁ私だ。これより作戦を開始する。現場へ警察車両に紛れ込むように……あぁ…宜しく頼む。これは誰にも知られてはいけない。そうだ、では後程」

電話を切り、時計を見つめる助手
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...