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第3章 ウェンザーズ
劣勢のスタート
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遡り、朝日が昇った瞬間に戻る。
囮が城壁を壊し、敵を引きつけている間にミラン達は裏側から潜入することに成功した。
「中心部まで走り抜けろ! 猛獣に追いつかれるな!」
ミランの指示のもと、武器を持った男達は一斉に城の中へ入る。
今まで城内に入った者はほとんどいないが、持ち前の鋭い感覚と野生の勘を駆使しているのだ。
「ミラン、リョウガがいないが」
状況把握をしていた男の1人がミランに忠告する。
「あいつ……っ! いや、今は気にしてる場合じゃない。リョウガの脚力なら逃げることはできるはずだ」
「だがあいつは」
男が更に続けようとした矢先、壁から鉤爪が飛び出てきた。
床と壁が崩れるほどの爪を持ったモグラの猛獣が襲いかかる。
「もうバレたのか!?」
「ちっ。一刻も早く倒せ! 同胞だろうが、殺さなきゃ殺されるぞ!」
ミランの一声で躊躇っていた男達が猛獣を倒しにかかる。
体格は猛獣の方が何倍も大きいが、数と力ですぐに倒せる。
息絶えた猛獣はその場で血を流しながら倒れる。
「こいつも、家族がいたのに」
「同情する暇があったら少しでも早く魔王を倒せ! これ以上悲しむ者を減らすぞ」
同胞であったはずの猛獣を倒し、嘆いている仲間を叱咤激励するようにミランは叫ぶ。
そんな彼らの前に、城壁を壊しながら更に猛獣が飛びかかってくる。
「周りを見て応戦しろ! 猛獣が束になる前に倒せ!」
男達は皆その場で襲いかかる猛獣に武器を振り上げていく。
1回で絶命できるように、致命傷を負えるような場所に武器を当てて、一気に貫く。
木材でできている城が血溜まりで溢れかえる。
(おかしい。なぜだ)
ミランは戦いながら違和感を覚える。
武器や自らの手に血が流れてくるが、なお猛獣は奥の方から飛び出してくる。
(こうなったら)
「隙を見て魔王の元へ行け! これ以上猛獣を倒しても体力を奪われるだけだ」
予想だにせず、猛獣が多すぎる。
牢屋や拷問部屋に猛獣を縛りつけたとしても、ここまでの数となると、確実に従者だけでなく、魔王にまで被害が及ぶはずだ。
なぜ倒しても減らない。
そんなふとした疑問にミランが囚われている間に、仲間の悲鳴が聞こえてきた。
「うわあああ!」
「逃げろ! 食い殺され……がはっ!」
ミランの目の前で同胞が殺されていく。
目の前に現れた猛獣は虎の姿をしていた。
筋肉質な体に1本1本拳のように太い爪、理性を失った目に同胞の血がこびりついている牙。
そんな凶暴化した虎が2匹いる。
「ガアアアア!!」
虎は喉の奥からこちらを震え上がらせるように威嚇をし、次々と討伐隊の男達を食っていく。
何とか逃げようとする者も、すぐに捕まって餌食にされる。
「うわあああ!」
「たすけ、て……」
ミランは後ろから凄惨な光景を呆然と眺めるしかなかった。
虎という残酷な猛獣への恐怖、同胞が目の前で血しぶきを上げながら死んでいく光景に為す術もない。
「ミラン、指示を!」
仲間の1人がミランに呼びかけるが、ミランは茫然自失と言うように視線を彷徨わせる。
(一旦戻って……いや、追いつかれる。だがこのまま応戦しても体力差で犠牲が出る)
逃げても戦っても猛獣には勝てない。
ミランが悩んでいる間にも猛獣は男達を食い殺していく。
そしてとうとうその標的は止まっているミランに向いた。
「ミラン!」
仲間がミランの名を叫ぶ。
しかしそれより速く虎はミランを食い殺さんと口を大きく開けて飲み込もうとした。
その喉奥がミランの目の前に映った瞬間──。
「メテオ!」
虎の心臓を上から鋭く尖った岩が深く突き刺した。
虎はミランを噛みちぎる前に、床に押しつけられて大量の血を流しながら息絶えた。
「……あんたは」
「何してんだ! 早く指示を出さないと皆殺しだぞ!」
ミランの前には、魔法陣を展開したまま他の猛獣を相手にしているシモンが立っていた。
シモンはミランを叱責しながら隙を見て男達に襲いかかっている猛獣を鋭い岩で突き刺していく。
「指示って……何をしても殺されるのにどうしろと」
ミランの弱気な言葉にシモンはもどかしさと怒りを露わにするように語気を強める。
「魔法を使えばいいだろうが! 動きを封じて、体力を奪えば……」
「獣人は魔法を使えない」
「は?」
ミランの言葉にシモンは衝撃を受けたように目を丸くして止まる。
「獣の姿になればある程度の魔法は使える。だが、人の姿になったら俺達は自分の力だけで戦うしかない。獣人で魔法を使えるのは、王族だけだ」
「……だったら。俺が足止めしてるから動ける奴は負傷者を連れて一度退避しろ! 猛獣には構うな!」
混乱した討伐隊の男達は、シモンの指示に従いながら死に物狂いで元来た道を戻る。
シモンは獣人を潜り抜けながら近づく猛獣を仕留めていく。
「ミラン、お前も一旦戻れ」
「だが」
「リーダーのお前がパニクってたら全員死んで終わりだ。生き残りたけりゃ一度体勢を立て直せ」
シモンの言葉にミランは我に返り、獣人達と共に来た道を急いで引き返した。
「……さて、大口叩いたはいいが、どうするか」
シモンが来てから新たに出る死体はなくなった。
だが、未だに息絶えた獣人と猛獣の亡骸は足下に残っている。
その血だまりを踏みながら、更に猛獣は近づいてくる。
その数は、両手では数えきれないほどだ。
「死なないように……は難しそうだな」
シモンは冷や汗をかきながら、一斉に飛びかかってくる猛獣に魔法をぶつけた。
囮が城壁を壊し、敵を引きつけている間にミラン達は裏側から潜入することに成功した。
「中心部まで走り抜けろ! 猛獣に追いつかれるな!」
ミランの指示のもと、武器を持った男達は一斉に城の中へ入る。
今まで城内に入った者はほとんどいないが、持ち前の鋭い感覚と野生の勘を駆使しているのだ。
「ミラン、リョウガがいないが」
状況把握をしていた男の1人がミランに忠告する。
「あいつ……っ! いや、今は気にしてる場合じゃない。リョウガの脚力なら逃げることはできるはずだ」
「だがあいつは」
男が更に続けようとした矢先、壁から鉤爪が飛び出てきた。
床と壁が崩れるほどの爪を持ったモグラの猛獣が襲いかかる。
「もうバレたのか!?」
「ちっ。一刻も早く倒せ! 同胞だろうが、殺さなきゃ殺されるぞ!」
ミランの一声で躊躇っていた男達が猛獣を倒しにかかる。
体格は猛獣の方が何倍も大きいが、数と力ですぐに倒せる。
息絶えた猛獣はその場で血を流しながら倒れる。
「こいつも、家族がいたのに」
「同情する暇があったら少しでも早く魔王を倒せ! これ以上悲しむ者を減らすぞ」
同胞であったはずの猛獣を倒し、嘆いている仲間を叱咤激励するようにミランは叫ぶ。
そんな彼らの前に、城壁を壊しながら更に猛獣が飛びかかってくる。
「周りを見て応戦しろ! 猛獣が束になる前に倒せ!」
男達は皆その場で襲いかかる猛獣に武器を振り上げていく。
1回で絶命できるように、致命傷を負えるような場所に武器を当てて、一気に貫く。
木材でできている城が血溜まりで溢れかえる。
(おかしい。なぜだ)
ミランは戦いながら違和感を覚える。
武器や自らの手に血が流れてくるが、なお猛獣は奥の方から飛び出してくる。
(こうなったら)
「隙を見て魔王の元へ行け! これ以上猛獣を倒しても体力を奪われるだけだ」
予想だにせず、猛獣が多すぎる。
牢屋や拷問部屋に猛獣を縛りつけたとしても、ここまでの数となると、確実に従者だけでなく、魔王にまで被害が及ぶはずだ。
なぜ倒しても減らない。
そんなふとした疑問にミランが囚われている間に、仲間の悲鳴が聞こえてきた。
「うわあああ!」
「逃げろ! 食い殺され……がはっ!」
ミランの目の前で同胞が殺されていく。
目の前に現れた猛獣は虎の姿をしていた。
筋肉質な体に1本1本拳のように太い爪、理性を失った目に同胞の血がこびりついている牙。
そんな凶暴化した虎が2匹いる。
「ガアアアア!!」
虎は喉の奥からこちらを震え上がらせるように威嚇をし、次々と討伐隊の男達を食っていく。
何とか逃げようとする者も、すぐに捕まって餌食にされる。
「うわあああ!」
「たすけ、て……」
ミランは後ろから凄惨な光景を呆然と眺めるしかなかった。
虎という残酷な猛獣への恐怖、同胞が目の前で血しぶきを上げながら死んでいく光景に為す術もない。
「ミラン、指示を!」
仲間の1人がミランに呼びかけるが、ミランは茫然自失と言うように視線を彷徨わせる。
(一旦戻って……いや、追いつかれる。だがこのまま応戦しても体力差で犠牲が出る)
逃げても戦っても猛獣には勝てない。
ミランが悩んでいる間にも猛獣は男達を食い殺していく。
そしてとうとうその標的は止まっているミランに向いた。
「ミラン!」
仲間がミランの名を叫ぶ。
しかしそれより速く虎はミランを食い殺さんと口を大きく開けて飲み込もうとした。
その喉奥がミランの目の前に映った瞬間──。
「メテオ!」
虎の心臓を上から鋭く尖った岩が深く突き刺した。
虎はミランを噛みちぎる前に、床に押しつけられて大量の血を流しながら息絶えた。
「……あんたは」
「何してんだ! 早く指示を出さないと皆殺しだぞ!」
ミランの前には、魔法陣を展開したまま他の猛獣を相手にしているシモンが立っていた。
シモンはミランを叱責しながら隙を見て男達に襲いかかっている猛獣を鋭い岩で突き刺していく。
「指示って……何をしても殺されるのにどうしろと」
ミランの弱気な言葉にシモンはもどかしさと怒りを露わにするように語気を強める。
「魔法を使えばいいだろうが! 動きを封じて、体力を奪えば……」
「獣人は魔法を使えない」
「は?」
ミランの言葉にシモンは衝撃を受けたように目を丸くして止まる。
「獣の姿になればある程度の魔法は使える。だが、人の姿になったら俺達は自分の力だけで戦うしかない。獣人で魔法を使えるのは、王族だけだ」
「……だったら。俺が足止めしてるから動ける奴は負傷者を連れて一度退避しろ! 猛獣には構うな!」
混乱した討伐隊の男達は、シモンの指示に従いながら死に物狂いで元来た道を戻る。
シモンは獣人を潜り抜けながら近づく猛獣を仕留めていく。
「ミラン、お前も一旦戻れ」
「だが」
「リーダーのお前がパニクってたら全員死んで終わりだ。生き残りたけりゃ一度体勢を立て直せ」
シモンの言葉にミランは我に返り、獣人達と共に来た道を急いで引き返した。
「……さて、大口叩いたはいいが、どうするか」
シモンが来てから新たに出る死体はなくなった。
だが、未だに息絶えた獣人と猛獣の亡骸は足下に残っている。
その血だまりを踏みながら、更に猛獣は近づいてくる。
その数は、両手では数えきれないほどだ。
「死なないように……は難しそうだな」
シモンは冷や汗をかきながら、一斉に飛びかかってくる猛獣に魔法をぶつけた。
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