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第3章 ウェンザーズ
対サソリの猛獣
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「!?」
庇われた拍子に尻を地面に強く打ちつけたが、目の前の光景にそれどころではなくなった。
「ちっ。流石にバレたか」
「何、これ」
破壊された壁から現れたのは鋭く尖り、毒々しい赤色の何かだ。
何かは壁から抜け出したいのか何度も何度もその場で激しく動いている。
「これも猛獣なの?」
千花がその気持ち悪い動きに引きながらリョウガに聞くと、体勢を立てながら答える。
「そうだよ。それも、最悪のな」
リョウガが焦りを隠せないというような声音で言うと同時に蠢いていた何かが更に岩壁を破壊し、その姿を現わした。
「これって、サソリ!?」
先程から見えていた赤い何かは尻尾だったらしい。
全身が露わになったその正体は、全身が赤黒く、ザリガニのような、それでいて虫のような、得体の知れない猛獣だ。
千花も実物を見るのは初めてだが、地球でこういった虫と言えばサソリだと推測できた。
「でかすぎない!? 今までの猛獣より何倍も大きいと思うんだけど!」
千花達が首を大きく上に動かしても、まだ頂点まで見えない程だ。
「キイイイ!」
岩壁が壊れた所でサソリの鳴き声が更に強く響いてきた。
リョウガどころか千花さえも身動きが取れない音に耳を塞ぐ。
「リョウガ! どうするのあれ!」
岩壁が破れそうな音に悶えながら千花はありったけの声でリョウガに聞く。
しかしリョウガは返事をしない。
無視しているわけではなく、本当に聞こえないのだろう。
(どうしよう。サソリなんて対処法も知らないし、リョウガの力がないと倒せない)
「あ! 耳を塞いじゃえば」
千花は想像で泥を成形していき、耳当てのような物を作る。
そのまま苦しそうにしているリョウガの耳の部分に耳当てを──しようとして気づく。
「リョウガ!!」
「あ!?」
「あなた耳どこにあるの!」
リョウガの手を退けて耳に当てようとした千花だが、その場所に人間と同じ耳はなかった。
そして思い出す。
獣人は耳がないことに。
「……聞こえてるんだよね」
「ああ」
「耳塞いでも効果ないんじゃ」
「……」
一瞬我に返った2人だが、再び激しい音が響く。
千花は既に獣人化の薬を飲んでいないため耳があるが、リョウガはどちらにせよ苦しいだけだ。
(こうなったら)
「リョウガ! サソリの弱点は!?」
「知らん! だけど、この声さえ封じれば魔法で倒せる」
「じゃあ行ってくるから!」
「は、おい!」
リョウガの慌てて制止する声も聞かず、千花は自分に耳当てをすると杖を持ったままサソリに突進していった。
(サソリの生態なんて知らないけど、とにかくこの動きを封じ込めれば隙はできる)
千花は魔石をサソリに向けると、動き回っている尻尾に大量の泥を噴出した。
「土壁!」
シモンに教えてもらった土魔法を見様見真似で唱える。
大量の泥はサソリの尻尾に付着すると、粘着テープのように地面に叩きつけてくっついた。
「キイイイ!」
サソリが抗議するように全身を捩らせて泥から抜け出そうとする。
「それやめて! うるさいの!」
猛獣に命令しても聞かないことくらいは千花もわかっているが、耳障りな音に何度も苛まれてストレスが溜まっていることもまた事実だ。
そうしている間にも、サソリは口からヘドロのような黒と紫色が合わさった色の何かを千花に吐き出してきた。
「避けろ! 毒だ!」
リョウガの言葉に千花は慌てて後ろに下がる。
ヘドロが直撃した地面は湯気を立たせながら溶けていく。
「だったら、土人形!」
千花は自分の前に人型の土人形をいくつか成形し、サソリのヘドロを躱していく。
「岩雪崩!」
今度は魔石をサソリの頭に向かうように上げて、天井から岩を落とす。
ここは室内であり、下手をすると自分に岩が降ってくる可能性があるため、千花はついでに土人形を頭に被せるように生成する。
「キイイイ!」
岩はほとんど外れたが、特に大きく硬い岩が運良くサソリの頭に直撃する。
遥か上部にあったサソリの頭は岩と共に地面に叩きつけられる。
「ギイイイ!!」
しかしサソリもやられたままではない。
頭を叩きつけられる直前に千花に向かって大量のヘドロを吐き出す。
「あっ!」
岩雪崩に集中して正面から降りかかるヘドロへの防御が遅れる。
千花の体がヘドロに巻き込まれるその直前。
「レビン!」
後ろに下がっていたリョウガがヘドロに向かって電気が走っているような球体をぶつける。
ヘドロと球体は互いにぶつかり合い、千花の目の前で弾けた。
「泥の海!」
千花は最後の足止めとばかりに大量の泥を思いきりサソリの頭に降りかける。
サソリは最後まで叫んでいたが、頭を全て泥で覆われると声を出さなくなった。
「リョウガ!」
「トレノ!」
千花が名前を呼ぶと同時にリョウガが魔法陣をサソリの頭上に展開する
その陣から雷が降り、サソリの心臓部分に直撃した。
「やった!」
「ギイイイ!!」
何とか倒すことができた、と千花が喜んだのも束の間、サソリが最後の足掻きとでも言うように泥を振り上げる。
そのまま尻尾の先端を千花に向けて勢いよく振り下ろしてくる。
「わっ!」
千花が反応するより早く、リョウガが千花の体を庇う。
しかし一歩遅く、リョウガの右腕に一筋尻尾で引っ掻かれた傷ができた。
攻撃を終えたサソリは、そのまま力なくその場に倒れた。
庇われた拍子に尻を地面に強く打ちつけたが、目の前の光景にそれどころではなくなった。
「ちっ。流石にバレたか」
「何、これ」
破壊された壁から現れたのは鋭く尖り、毒々しい赤色の何かだ。
何かは壁から抜け出したいのか何度も何度もその場で激しく動いている。
「これも猛獣なの?」
千花がその気持ち悪い動きに引きながらリョウガに聞くと、体勢を立てながら答える。
「そうだよ。それも、最悪のな」
リョウガが焦りを隠せないというような声音で言うと同時に蠢いていた何かが更に岩壁を破壊し、その姿を現わした。
「これって、サソリ!?」
先程から見えていた赤い何かは尻尾だったらしい。
全身が露わになったその正体は、全身が赤黒く、ザリガニのような、それでいて虫のような、得体の知れない猛獣だ。
千花も実物を見るのは初めてだが、地球でこういった虫と言えばサソリだと推測できた。
「でかすぎない!? 今までの猛獣より何倍も大きいと思うんだけど!」
千花達が首を大きく上に動かしても、まだ頂点まで見えない程だ。
「キイイイ!」
岩壁が壊れた所でサソリの鳴き声が更に強く響いてきた。
リョウガどころか千花さえも身動きが取れない音に耳を塞ぐ。
「リョウガ! どうするのあれ!」
岩壁が破れそうな音に悶えながら千花はありったけの声でリョウガに聞く。
しかしリョウガは返事をしない。
無視しているわけではなく、本当に聞こえないのだろう。
(どうしよう。サソリなんて対処法も知らないし、リョウガの力がないと倒せない)
「あ! 耳を塞いじゃえば」
千花は想像で泥を成形していき、耳当てのような物を作る。
そのまま苦しそうにしているリョウガの耳の部分に耳当てを──しようとして気づく。
「リョウガ!!」
「あ!?」
「あなた耳どこにあるの!」
リョウガの手を退けて耳に当てようとした千花だが、その場所に人間と同じ耳はなかった。
そして思い出す。
獣人は耳がないことに。
「……聞こえてるんだよね」
「ああ」
「耳塞いでも効果ないんじゃ」
「……」
一瞬我に返った2人だが、再び激しい音が響く。
千花は既に獣人化の薬を飲んでいないため耳があるが、リョウガはどちらにせよ苦しいだけだ。
(こうなったら)
「リョウガ! サソリの弱点は!?」
「知らん! だけど、この声さえ封じれば魔法で倒せる」
「じゃあ行ってくるから!」
「は、おい!」
リョウガの慌てて制止する声も聞かず、千花は自分に耳当てをすると杖を持ったままサソリに突進していった。
(サソリの生態なんて知らないけど、とにかくこの動きを封じ込めれば隙はできる)
千花は魔石をサソリに向けると、動き回っている尻尾に大量の泥を噴出した。
「土壁!」
シモンに教えてもらった土魔法を見様見真似で唱える。
大量の泥はサソリの尻尾に付着すると、粘着テープのように地面に叩きつけてくっついた。
「キイイイ!」
サソリが抗議するように全身を捩らせて泥から抜け出そうとする。
「それやめて! うるさいの!」
猛獣に命令しても聞かないことくらいは千花もわかっているが、耳障りな音に何度も苛まれてストレスが溜まっていることもまた事実だ。
そうしている間にも、サソリは口からヘドロのような黒と紫色が合わさった色の何かを千花に吐き出してきた。
「避けろ! 毒だ!」
リョウガの言葉に千花は慌てて後ろに下がる。
ヘドロが直撃した地面は湯気を立たせながら溶けていく。
「だったら、土人形!」
千花は自分の前に人型の土人形をいくつか成形し、サソリのヘドロを躱していく。
「岩雪崩!」
今度は魔石をサソリの頭に向かうように上げて、天井から岩を落とす。
ここは室内であり、下手をすると自分に岩が降ってくる可能性があるため、千花はついでに土人形を頭に被せるように生成する。
「キイイイ!」
岩はほとんど外れたが、特に大きく硬い岩が運良くサソリの頭に直撃する。
遥か上部にあったサソリの頭は岩と共に地面に叩きつけられる。
「ギイイイ!!」
しかしサソリもやられたままではない。
頭を叩きつけられる直前に千花に向かって大量のヘドロを吐き出す。
「あっ!」
岩雪崩に集中して正面から降りかかるヘドロへの防御が遅れる。
千花の体がヘドロに巻き込まれるその直前。
「レビン!」
後ろに下がっていたリョウガがヘドロに向かって電気が走っているような球体をぶつける。
ヘドロと球体は互いにぶつかり合い、千花の目の前で弾けた。
「泥の海!」
千花は最後の足止めとばかりに大量の泥を思いきりサソリの頭に降りかける。
サソリは最後まで叫んでいたが、頭を全て泥で覆われると声を出さなくなった。
「リョウガ!」
「トレノ!」
千花が名前を呼ぶと同時にリョウガが魔法陣をサソリの頭上に展開する
その陣から雷が降り、サソリの心臓部分に直撃した。
「やった!」
「ギイイイ!!」
何とか倒すことができた、と千花が喜んだのも束の間、サソリが最後の足掻きとでも言うように泥を振り上げる。
そのまま尻尾の先端を千花に向けて勢いよく振り下ろしてくる。
「わっ!」
千花が反応するより早く、リョウガが千花の体を庇う。
しかし一歩遅く、リョウガの右腕に一筋尻尾で引っ掻かれた傷ができた。
攻撃を終えたサソリは、そのまま力なくその場に倒れた。
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