愛と禁欲のサーガ・腐食の魔法[第一部・人間界都市編]本格的異世界LOVEバトル・ファンタジー

田丸哲二

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第五章・四大元素の鍵

魔女ファラとの戦い

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「人間界に腐食の源流がある……」

 ウルガンはファラに代わって中山教授の尋問をし、何故、主人であるランス・マンダーがこの人間の研究を怖れたのか理解した。

「海や川や大地が汚染され、その毒素が人間にまで蔓延しているが、それは科学と魔術で製造された化合物だ」

 ファラは事務室のデスクに腰掛けて、ロングスカートを捲って長い足をぶらぶらさせて教授の話を聞いている。

「急にペラペラ喋るのね?」

 舌を出して息を吐くと、喉ちんこの火種から僅かに炎が吹き出す。

「貴方を見て、推定理論が確信になった」

 ウルガンは教授が鼻血を流しながら笑むのを見て、恐怖を拭い去り微かにではあるが希望を抱いたように思えた。

「アルダリに伝えたか?」

 そう詰問されて教授はドキッとし、視線が下を向く。数十分前から炎のペンが熱くなり、多分メッセージはアルダリに届いたと喜んでいたのである。

「火を吐く魔女がいると教えたか?」

 そう言って教授のジャケットを調べて、内ポケットにペンを見つけて「炎のペン」と教授の太腿に突き刺した。

「グッキャー!」と悲鳴を上げたが、教授は歯を食い縛ってウルガンを睨み返す。

「そうだ。四大元素の毒。その一つをその魔女が内包している」

「全部デタラメよ。土から生まれた魔女とか、コイツは大嘘つきの学者だ」

 ファラはウルガンを押し退けて、事務机の横に置いてあった工場用のハンマーを構えた。

「頭をかち割ってやる」

 しかし中山教授は怯まずにファラに言い返した。嘘つきと言われては学者としてのプライドが許せない。

「貴方に母の思い出はありますか?四姉妹に母の記憶はない筈だ。何故なら、全員が化合物で製造された人間だからね」

「な、なんだと」

 ファラが動揺して、教授とウルガンを二度見してハンマーを打ち下ろすか迷っていると、車のエンジン音が聴こえて門の扉を開ける音がした。

「誰か来たようだ」

 ウルガンがファラの視線を避けるように窓に近寄って外を伺う。

「ふん、今度嘘をつくとその口に煮えたぎった鉄を流し込んでやる」

 ファラはハンマーを教授の足の上に落とし、ロングスカートをたくし上げて鉄のパンツを見せて歩き、ウルガンの隣で来客者を眺めた。

「アルダリか?」

「ええ、異界の戦士チームです」


 トーマが鉄柵の扉の鍵を開けると、真っ先にチーネとエリアンが中に入ってフォルクスワーゲンを見つけた。

「ここに間違いない」

 ワゴン車をその近くに止めると、戦士チームが武器を持って降りて来てチーネとエリアンに合流し、それぞれがポーズを決めて倉庫の建物を見上げる。

「アイツらか?魔女と狼族ってのは」

 その輪の中央でソングが剣先を上げ、二階の窓ガラスに映るウルガンとファラの姿を不敵な表情で指し示した。

「お前、私の何かを知ってるのか?」

 ファラがウルガンの首輪にリードを付けて引き寄せ、頬を長い舌で舐めてから鞭で背中を打って引っ張り倒す。

「いえ、何も知りません」

 首を横に振って四つん這いになり、筋肉が膨張して服を引き裂き、鼻面が突き出て体毛も伸び、耳も三角に変形して凶暴な狼に変貌してゆく。

 四姉妹がどのようにして誕生したかは秘密であり、ランス様から固く口止めされていた。教授は嘘つきではないが、パンドラの箱を開けてはならない。

『愛欲の憎悪により、腐食の呪いが完成するのだ』

 ウルガンには意味不明だったが、地下の研究室で魔女が生まれるシーンを眺めてランス様が両手を広げて叫ぶのを見た。

 ランス様に教授の証言を報告し、判断を仰いでから殺した方がいいとウルガンは考えていたが、どちらにしても戦士チームは倒さねばならない。

「ファラ様。戦いの時間だぜ」

「そうね。話は後にしましょう」

 教授は足の痛みに耐えながら、ウルガンが牙と鋭い爪を生やして巨大な狼に変貌するのを唖然として眺めていたが、首にリードの持ち手の輪っかを引っ掛けられてファラが残忍に笑うのを見た。

「やめろ」

 その悲痛の叫びにファラがウルガンの背中を鞭で打って走らせ、リードがギュンと首を締めて床を引き摺られる。

「お前は人質だよ。それまでは殺さないから安心しな」

 ファラがそう言ってウルガンがドアに突進して通路に出るのを追いかけ、二階の踊り場から倉庫に入って来た戦士チームを眺めた。
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