3-days love story.

田丸哲二

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第一章・イースター(復活祭)

幽霊との会話

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 金髪の天使が翼を広げて大通りを滑空し、十字路でライトを点けた車に衝突しそうになるが、寸前でカーブを描いて上昇して明かりが灯り始めた街並みを上空から眺め、駅方向へ歩く賢士を発見した。

「興味深い人間だが、期待はずれか?」

 天使は賢士がマリアが幽霊だと気付いてない事を嘲笑い、先回りして高台の豪邸へ降下して屋根の上に腰掛けて二人を偵察する。

 手ぶらで空を飛ぶ開放感で天使は機嫌が良かった。西の空から夜が訪れ、左腕のクラシックウォッチ・ブレゲを覗き見て、乱れた時間が正常に戻り始めていると微笑む。

「マリアは今夜、教会で死ぬ予定だった。設定は変わり、さてどうなるかな?」


 賢士は少し距離を保ってマリアを追い、街灯の眩しさで光彩が瞳に映り込み、たっぷりの眼薬で潤む目で濡れた街並みを映す幻惑に悩まされ、青い瞳の自覚症状は感じている。

 マリアは歩道を行き交う人々をすり抜けて、背後の賢士を時折振り返り、早足で通りを右折して、郵便局前の坂道を上がって藤が丘方面へ向かう。

『どうしよう?明らかに幽霊の私が見えている。声も聴こえるなら、彼と話してみたいけど』

 マスターが瞳を輝かせて『ジーザスをもじって、ジーケンと呼ばれていた』と、溝端賢士について語っていたのを思い返し、マリアは坂の途中にある轍屋わだちやという自転車店の前で賢士を待ち伏せした。

 日曜日の青葉台のメイン通りは若者やファミリーで混み合い、賢士はこれではストーカーだと俯き、目を離した瞬間に彼女を見失ない、焦って信号のある交差点まで走り、路地を曲がって坂道を駆け上がった。

 途中で立ち止まって付近を見渡し、人の気配もなく諦めかけたが、自転車店の暗がりから突然声をかけられた。

「あの……すいません」

 正面ウインドーの店内にロードバイクが飾ってあるのが通りからも見え、マリアはその横のウッドデッキの暗がりに佇み小声で話す。

「溝端賢士さんですよね?」
「はい。失礼ですが、貴方は?」

 賢士は歩道に立って闇の中にいる女性を首を傾げて見つめ、気になっていた質問をする。

「僕の名前を知っているということは、悠太の友人でしょうか?洪水のように涙を流す貴方を見て、葬儀場から追って来たのです」

 マリアはそう問われて一歩踏み出し、ウインドーから差す淡い光りを浴びて、少し俯き加減でエプロンのうさぎのイラストの上で腕を組んで小声で話す。

「マリアと言います。私が見えるのですね?」
「ええ、ウインドーの薄明かりに魅惑的に輝いて見えますよ」
「そういえば、神的にモテるってマスターが言ってました。一年サイクルで彼女が変わるから、恨んでいる刺客に狙われているとも」

 含み笑いで、マリアの黒髪が両頬でふわふわと揺れ、賢士は「なるほど。その秘密も知っているのなら、悠太とは相当親しい関係ですね」と微笑んだ。
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