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第二章・one day
ケンジの目覚め
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閉め忘れた白いカーテンの隙間から零れた朝陽がベッドにくるまる賢士を起こし、眠そうな睫毛を上げて、枕元のiPhoneを手に取って06:25の表示を確認し、カレンダーの日付『4月9日木曜日』を見て首を傾げた。
賢士は早朝のトレーニングを日課にし、天候と体調をチェックしているので、曜日を勘違いしていた事を不思議に思う。
『日曜日ではないのか?』
復活祭になると別れた彼女たちから茨の冠が贈られ、その刑にはまだ三日間の猶予があったと苦笑する。
『ナーバスになり、思考が乱れたか?』
Tシャツパジャマのまま洗面所へ行き、歯磨きをしながら鏡の前の乱れた髪と眠そうな顔をぼんやり見ていると、薔薇のツルの冠をして血を流す顔が映り、一瞬で泡のように消え去ったが、あまりのリアルさに完全に目が覚めて驚く。
『まるでキリストだな?』
復活祭での女性たちからのリベンジは毎年の恒例行事になり、もう慣れっこだと強がっていたが、罪悪感からは逃れられないのかと、ミントの歯磨き粉を水ですすぎ、髪を手櫛で整えてトレーニングウエアに着替えた。
『ん……?』
右の拳に軽い痛みを感じ、夜中に夢遊病者のように室内のサンドバッグを叩いたかと嘆き、玄関の棚に置いてあった手袋をしてマンションを出る。
(賢士は気付いてないが、復活祭の日に茨の冠を被って鏡を見た残像と、教会で神父を脅迫する藤倉を殴った時の痛みを蘇らせた。)
中学生の頃にボクシングを始め、ジムのトレーナーからチャンピオンになれる逸材だと言われたが、プロになるつもりはなかったので途中で辞めてしまった。
今でもトレーニングを欠かさないのは単なるストレス発散だが、春になると冬からの脱却の季節になり、賢士はエネルギーを感じて活発に動き出す。
外へ出ると朝陽が眩しく、快晴の空はブルーに輝き、そよ風が心を浮き上がらせて、軽快にマンション前から公園へ向かうジョギングコースを走り出した。
『愛読するシリーズ本を読み返す気分だ』
賢士はマリアのように魂がタイムスリップした訳ではなく、記憶を失ってタイムリープした状態だった。記憶が交錯する微かな既視感はあったが、天使によってブルーの瞳で視た記憶は完全に回収されている。
鈴木悠太の死も記憶から消され、マリアとめぐり逢う接点はなかったが、数十分後に去年の冬に別れた女性と再会し、新しい春の恋へと導かれてゆく。
賢士は早朝のトレーニングを日課にし、天候と体調をチェックしているので、曜日を勘違いしていた事を不思議に思う。
『日曜日ではないのか?』
復活祭になると別れた彼女たちから茨の冠が贈られ、その刑にはまだ三日間の猶予があったと苦笑する。
『ナーバスになり、思考が乱れたか?』
Tシャツパジャマのまま洗面所へ行き、歯磨きをしながら鏡の前の乱れた髪と眠そうな顔をぼんやり見ていると、薔薇のツルの冠をして血を流す顔が映り、一瞬で泡のように消え去ったが、あまりのリアルさに完全に目が覚めて驚く。
『まるでキリストだな?』
復活祭での女性たちからのリベンジは毎年の恒例行事になり、もう慣れっこだと強がっていたが、罪悪感からは逃れられないのかと、ミントの歯磨き粉を水ですすぎ、髪を手櫛で整えてトレーニングウエアに着替えた。
『ん……?』
右の拳に軽い痛みを感じ、夜中に夢遊病者のように室内のサンドバッグを叩いたかと嘆き、玄関の棚に置いてあった手袋をしてマンションを出る。
(賢士は気付いてないが、復活祭の日に茨の冠を被って鏡を見た残像と、教会で神父を脅迫する藤倉を殴った時の痛みを蘇らせた。)
中学生の頃にボクシングを始め、ジムのトレーナーからチャンピオンになれる逸材だと言われたが、プロになるつもりはなかったので途中で辞めてしまった。
今でもトレーニングを欠かさないのは単なるストレス発散だが、春になると冬からの脱却の季節になり、賢士はエネルギーを感じて活発に動き出す。
外へ出ると朝陽が眩しく、快晴の空はブルーに輝き、そよ風が心を浮き上がらせて、軽快にマンション前から公園へ向かうジョギングコースを走り出した。
『愛読するシリーズ本を読み返す気分だ』
賢士はマリアのように魂がタイムスリップした訳ではなく、記憶を失ってタイムリープした状態だった。記憶が交錯する微かな既視感はあったが、天使によってブルーの瞳で視た記憶は完全に回収されている。
鈴木悠太の死も記憶から消され、マリアとめぐり逢う接点はなかったが、数十分後に去年の冬に別れた女性と再会し、新しい春の恋へと導かれてゆく。
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