24 / 29
第二章・one day
ケンジの目覚め
しおりを挟む
閉め忘れた白いカーテンの隙間から零れた朝陽がベッドにくるまる賢士を起こし、眠そうな睫毛を上げて、枕元のiPhoneを手に取って06:25の表示を確認し、カレンダーの日付『4月9日木曜日』を見て首を傾げた。
賢士は早朝のトレーニングを日課にし、天候と体調をチェックしているので、曜日を勘違いしていた事を不思議に思う。
『日曜日ではないのか?』
復活祭になると別れた彼女たちから茨の冠が贈られ、その刑にはまだ三日間の猶予があったと苦笑する。
『ナーバスになり、思考が乱れたか?』
Tシャツパジャマのまま洗面所へ行き、歯磨きをしながら鏡の前の乱れた髪と眠そうな顔をぼんやり見ていると、薔薇のツルの冠をして血を流す顔が映り、一瞬で泡のように消え去ったが、あまりのリアルさに完全に目が覚めて驚く。
『まるでキリストだな?』
復活祭での女性たちからのリベンジは毎年の恒例行事になり、もう慣れっこだと強がっていたが、罪悪感からは逃れられないのかと、ミントの歯磨き粉を水ですすぎ、髪を手櫛で整えてトレーニングウエアに着替えた。
『ん……?』
右の拳に軽い痛みを感じ、夜中に夢遊病者のように室内のサンドバッグを叩いたかと嘆き、玄関の棚に置いてあった手袋をしてマンションを出る。
(賢士は気付いてないが、復活祭の日に茨の冠を被って鏡を見た残像と、教会で神父を脅迫する藤倉を殴った時の痛みを蘇らせた。)
中学生の頃にボクシングを始め、ジムのトレーナーからチャンピオンになれる逸材だと言われたが、プロになるつもりはなかったので途中で辞めてしまった。
今でもトレーニングを欠かさないのは単なるストレス発散だが、春になると冬からの脱却の季節になり、賢士はエネルギーを感じて活発に動き出す。
外へ出ると朝陽が眩しく、快晴の空はブルーに輝き、そよ風が心を浮き上がらせて、軽快にマンション前から公園へ向かうジョギングコースを走り出した。
『愛読するシリーズ本を読み返す気分だ』
賢士はマリアのように魂がタイムスリップした訳ではなく、記憶を失ってタイムリープした状態だった。記憶が交錯する微かな既視感はあったが、天使によってブルーの瞳で視た記憶は完全に回収されている。
鈴木悠太の死も記憶から消され、マリアとめぐり逢う接点はなかったが、数十分後に去年の冬に別れた女性と再会し、新しい春の恋へと導かれてゆく。
賢士は早朝のトレーニングを日課にし、天候と体調をチェックしているので、曜日を勘違いしていた事を不思議に思う。
『日曜日ではないのか?』
復活祭になると別れた彼女たちから茨の冠が贈られ、その刑にはまだ三日間の猶予があったと苦笑する。
『ナーバスになり、思考が乱れたか?』
Tシャツパジャマのまま洗面所へ行き、歯磨きをしながら鏡の前の乱れた髪と眠そうな顔をぼんやり見ていると、薔薇のツルの冠をして血を流す顔が映り、一瞬で泡のように消え去ったが、あまりのリアルさに完全に目が覚めて驚く。
『まるでキリストだな?』
復活祭での女性たちからのリベンジは毎年の恒例行事になり、もう慣れっこだと強がっていたが、罪悪感からは逃れられないのかと、ミントの歯磨き粉を水ですすぎ、髪を手櫛で整えてトレーニングウエアに着替えた。
『ん……?』
右の拳に軽い痛みを感じ、夜中に夢遊病者のように室内のサンドバッグを叩いたかと嘆き、玄関の棚に置いてあった手袋をしてマンションを出る。
(賢士は気付いてないが、復活祭の日に茨の冠を被って鏡を見た残像と、教会で神父を脅迫する藤倉を殴った時の痛みを蘇らせた。)
中学生の頃にボクシングを始め、ジムのトレーナーからチャンピオンになれる逸材だと言われたが、プロになるつもりはなかったので途中で辞めてしまった。
今でもトレーニングを欠かさないのは単なるストレス発散だが、春になると冬からの脱却の季節になり、賢士はエネルギーを感じて活発に動き出す。
外へ出ると朝陽が眩しく、快晴の空はブルーに輝き、そよ風が心を浮き上がらせて、軽快にマンション前から公園へ向かうジョギングコースを走り出した。
『愛読するシリーズ本を読み返す気分だ』
賢士はマリアのように魂がタイムスリップした訳ではなく、記憶を失ってタイムリープした状態だった。記憶が交錯する微かな既視感はあったが、天使によってブルーの瞳で視た記憶は完全に回収されている。
鈴木悠太の死も記憶から消され、マリアとめぐり逢う接点はなかったが、数十分後に去年の冬に別れた女性と再会し、新しい春の恋へと導かれてゆく。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる