3 / 43
2 底辺ホモ
2-1
しおりを挟む
翌朝、学校へ行ったら、黒板に大きく相合い傘が描かれていた。
右側に倉持慧。左側に吉野渚。
相合い傘の横には、『←底辺ホモ』と書かれている。
真っ赤になりながら急いで消し、窓際の1番後ろの自席に座って、突っ伏した。
その様子を見て、何人かがゲラゲラ笑っている。
昨日来ていたひとたちじゃないから、ひと晩ですぐに噂が広がってしまったんだと分かった。
10分ほどしたところで、吉野くんが入ってきた。
「ガチホモの吉野くーんおはよー」
わざとらしく声をかけられるけど、当然何も返事をせず、中央の列の1番前に座る。
チャイムが鳴った。
先生が入ってきたところで、俺の目の前の席のひとが、手を挙げた。
「せんせー。視力落ちたみたいで黒板見えないんで、吉野くんの席と代わってもらっていいっすかー?」
ギョッとした。絶対仕組まれてる。
クラスのみんなが声を殺して笑っていて、でも先生はすぐに了承して、その場で席を交換させた。
吉野くんが、目の前の席に移動してくる。
何か声をかけたほうがいいかなと思ったけど、言うことが見つからなかったので、そのまま先生の話を聞き始めた。
昼前の授業の終わりかけに、スマホが震えた。
俺に連絡を寄越すのは、家族かいじめに関わっているひとたちだけだ。
そっと開くと、澤村くんからで、絶望的なことが書いてあった。
[今日から毎日、飯ふたりで食って。あと先公いない時、1日1回教室でキス。無理なら親のクレジットカード取ってこい。それも無理なら吉野から金もらうけど]
チャイムが鳴った。
そっと澤村くんを盗み見ると、仏頂面で席を立ち、スクールバッグから財布を取り出していた――ルイ・ヴィトンだ。
周りに、取り巻きが寄ってくる。
俺は、吉野くんに小さく声をかけた。
「あの……吉野くん」
黙って振り返る。俺は、おそるおそるスマホを見せた。
吉野くんは文面を一読したあと、周りをざっと見回し、俺の左肩に手を乗せたと思ったら、素早くキスしてきた。
「うわっ!」
「キッモ!」
見ていた何人かが、大声を上げた。
桜井くんが、ニヤニヤしながら声を上げたひとたちに尋ねる。
「どーしたのー?」
「やべえ、底辺ホモがキスしてた」
「飯前に気色悪いもん見たあ、うえぇ」
そう言いながら、爆笑している。
消え入るような声で、吉野くんに謝った。
「ごめん……」
でも吉野くんは、こちらを見もせずに、俺の机の上にお弁当箱を開けて、黙って食べ始めた。
俺も倣って、黙々と食べる。
何を考えているんだろう。
どうして何も言わないんだろう。
状況はどう考えても生き地獄。すると、またスマホが震えた。
[たばこ部屋]
また今日もやらされるんだ、あれを。
放課後、たばこ部屋に行くと、既に10人くらいが集まっていた。
吉野くんもソファに座っていて、一瞬だけ目が合った。
「んじゃあ、始めんぞ。やれ」
ズボンを握りしめ、目をぎゅっと閉じる。
身を縮こまらせていると、ふにっと唇が押しつけられた。でも。
「それじゃねえだろ」
澤村くんの冷たい一言。
吉野くんは、俺の両肩に手を置いて、昨日みたいに、舌を割り込ませてきた。
相手ばっかりにさせていては申し訳ない。
俺も吉野くんのワイシャツの裾あたりをちょっと掴んで、ぎこちなく吉野くんの舌を追いかけてみる。
「うわー倉持感じちゃってんじゃん」
「あははは、超キモいわー」
お金払って見にきてるくせに。
さらに固く目をつぶり、眉間にしわを寄せながら、舌を動かす。
吉野くんだけがからかわれないように……。
「はい、そこまで」
澤村くんの一言で、吉野くんはすっと離れた。
俺も手を離して、あごを引く。
すると澤村くんは、信じられないことを言った。
「吉野、倉持の抜け」
「えっ……?」
思わず聞き返してしまった。抜く? って、まさか?
ギャラリーは、キモいの大合唱。
「見たくねえんなら200円払って出てけ。見んならこっからはプラス500円」
低い声でつぶやいたけど、ぎゃーぎゃーはしゃくだけで、誰も出て行かなかった。
右側に倉持慧。左側に吉野渚。
相合い傘の横には、『←底辺ホモ』と書かれている。
真っ赤になりながら急いで消し、窓際の1番後ろの自席に座って、突っ伏した。
その様子を見て、何人かがゲラゲラ笑っている。
昨日来ていたひとたちじゃないから、ひと晩ですぐに噂が広がってしまったんだと分かった。
10分ほどしたところで、吉野くんが入ってきた。
「ガチホモの吉野くーんおはよー」
わざとらしく声をかけられるけど、当然何も返事をせず、中央の列の1番前に座る。
チャイムが鳴った。
先生が入ってきたところで、俺の目の前の席のひとが、手を挙げた。
「せんせー。視力落ちたみたいで黒板見えないんで、吉野くんの席と代わってもらっていいっすかー?」
ギョッとした。絶対仕組まれてる。
クラスのみんなが声を殺して笑っていて、でも先生はすぐに了承して、その場で席を交換させた。
吉野くんが、目の前の席に移動してくる。
何か声をかけたほうがいいかなと思ったけど、言うことが見つからなかったので、そのまま先生の話を聞き始めた。
昼前の授業の終わりかけに、スマホが震えた。
俺に連絡を寄越すのは、家族かいじめに関わっているひとたちだけだ。
そっと開くと、澤村くんからで、絶望的なことが書いてあった。
[今日から毎日、飯ふたりで食って。あと先公いない時、1日1回教室でキス。無理なら親のクレジットカード取ってこい。それも無理なら吉野から金もらうけど]
チャイムが鳴った。
そっと澤村くんを盗み見ると、仏頂面で席を立ち、スクールバッグから財布を取り出していた――ルイ・ヴィトンだ。
周りに、取り巻きが寄ってくる。
俺は、吉野くんに小さく声をかけた。
「あの……吉野くん」
黙って振り返る。俺は、おそるおそるスマホを見せた。
吉野くんは文面を一読したあと、周りをざっと見回し、俺の左肩に手を乗せたと思ったら、素早くキスしてきた。
「うわっ!」
「キッモ!」
見ていた何人かが、大声を上げた。
桜井くんが、ニヤニヤしながら声を上げたひとたちに尋ねる。
「どーしたのー?」
「やべえ、底辺ホモがキスしてた」
「飯前に気色悪いもん見たあ、うえぇ」
そう言いながら、爆笑している。
消え入るような声で、吉野くんに謝った。
「ごめん……」
でも吉野くんは、こちらを見もせずに、俺の机の上にお弁当箱を開けて、黙って食べ始めた。
俺も倣って、黙々と食べる。
何を考えているんだろう。
どうして何も言わないんだろう。
状況はどう考えても生き地獄。すると、またスマホが震えた。
[たばこ部屋]
また今日もやらされるんだ、あれを。
放課後、たばこ部屋に行くと、既に10人くらいが集まっていた。
吉野くんもソファに座っていて、一瞬だけ目が合った。
「んじゃあ、始めんぞ。やれ」
ズボンを握りしめ、目をぎゅっと閉じる。
身を縮こまらせていると、ふにっと唇が押しつけられた。でも。
「それじゃねえだろ」
澤村くんの冷たい一言。
吉野くんは、俺の両肩に手を置いて、昨日みたいに、舌を割り込ませてきた。
相手ばっかりにさせていては申し訳ない。
俺も吉野くんのワイシャツの裾あたりをちょっと掴んで、ぎこちなく吉野くんの舌を追いかけてみる。
「うわー倉持感じちゃってんじゃん」
「あははは、超キモいわー」
お金払って見にきてるくせに。
さらに固く目をつぶり、眉間にしわを寄せながら、舌を動かす。
吉野くんだけがからかわれないように……。
「はい、そこまで」
澤村くんの一言で、吉野くんはすっと離れた。
俺も手を離して、あごを引く。
すると澤村くんは、信じられないことを言った。
「吉野、倉持の抜け」
「えっ……?」
思わず聞き返してしまった。抜く? って、まさか?
ギャラリーは、キモいの大合唱。
「見たくねえんなら200円払って出てけ。見んならこっからはプラス500円」
低い声でつぶやいたけど、ぎゃーぎゃーはしゃくだけで、誰も出て行かなかった。
5
あなたにおすすめの小説
シスルの花束を
碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年
~人物紹介~
○氷室 三門(ひむろ みかど)
・攻め(主人公)
・23歳、身長178cm
・モデル
・俺様な性格、短気
・訳あって、雨月の所に転がり込んだ
○寒河江 雨月(さがえ うげつ)
・受け
・26歳、身長170cm
・常に無表情で、人形のように顔が整っている
・童顔
※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。
※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。
※基本、三門視点で進みます。
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
猫と王子と恋ちぐら
真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。
ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。
パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。
『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』
小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。
お姫様に、目隠しをして
Q矢(Q.➽)
BL
イケメン⇄平凡モブ⇇美形不良
スクールカースト上位の花臣に、小学校の頃から一途に片想いしている伊吹。告げられる訳もない、見つめるだけの恋だった。
ところがある日、とある出来事を境に伊吹は近隣の高校の不良グループの長である蝶野に囲われる事になる。
嫉妬深い蝶野に雁字搦めにされて疲弊していく伊吹の様子を遠目に訝しむ花臣は…。
能勢 伊吹 (のせいぶき)
・何処に出しても恥ずかしくない立派な平凡モブ
・一途ではある
・メンタルはそんなに強くない
・花臣しか好きじゃない
花臣 一颯(かずさ)
・何処に出しても恥ずかしくない王子フェイスイケメン
・人当たりも世渡りも得意です
・自分に寄せられる好意が凄く好き
・それに敢えて知らない振りをして傷つく顔にゾクゾクするくらい実は伊吹が好き
蝶野 崇一郎 (ちょうの そういちろう)
・不良グループリーダー
・嫉妬深く執着心つよっつよ
・かなりの美形ではある
・自分と伊吹と金しか好きじゃない
・とにかく逃がさない
※設定はありがちなのでどっかで見たとか突っ込まないでいられる人向け。
※主人公はかなり不憫。ハラハラしながらも見守れる人向け。
※※シリアスなのは途中まで。
ご閲覧、ありがとうございました。
番外編を書く事がありましたら、またよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる