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2 底辺ホモ
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帰りに吉野くんに連絡先を教えてもらった。
登下校も一緒にしろという命令で、家を聞いたら、電車は反対方向だった。
そういうわけで、行きも帰りも、最寄駅で待ち合わせをして、そこから学校まで、手を繋いで登下校することになる。
きっと、このことを知っているひとたちは全力でからかうだろうし、事情を知らないひとから見たら、完全に俺たちが好きでそうしているみたいに見える。
帰り道、校門を過ぎたところで、俺から手を繋いだ。
「あの……本当にごめんね」
謝っても謝りきれない。
何も言ってくれないかも知れないけど、それはそれで仕方がない。
ただ黙って手を繋いでいればいい……と思っていたら、吉野くんが、すごく小さなかすれ声で言った。
「場面緘黙症」
「え?」
「特定の場所で、言葉が一切出なくなる。小さい頃から、幼稚園とか学校でだけ、なぜか声が出ない。敷地から出るとちょっとマシ。あと、なぜかあんたにだけは学校でも声が出た。正直、自分でも本当にびっくりしてる」
そう言って吉野くんは、ちょっと繋いでいた手を、きゅっと力を込めて握った。
「しゃべらないんじゃなくて、しゃべれないの?」
こくりとうなずく。
「他人と話したくないとかじゃなくて。本当に、声が出ない」
そんな病気? があるなんて、知らなかった。
ひとりでいるのが好きとか、他人に興味がないとか、そういうタイプのひとなのかなと思っていたけど……。
「あの。俺には話せるなら、その、休み時間とかに話して? もちろん無理しなくていいけど……命令的に、俺からくっついたりしなきゃいけないらしいし。もし、ちょっとでも声が出るなら」
「うん」
ぽつっとつぶやいた。
でも表情はなくて、これも症状なのか、ずっとしゃべってないからそうなっちゃってるのか、それは判断がつかなかった。
朝は駅で待ち合わせをして、命令通り、手を繋いで登校した。
サラリーマンとか大人のひとたちはチラチラ見てくるし、学校のひとも、『うわあ』って感じだ。
「よーよーよー、底辺ホモさん。おはよー」
後ろから声をかけてきたのは、桜井くんだ。
「あ……おはよう、ございます」
「いやー、早速イチャついてんなー。ま、フェラする仲だもんな? あはは、じゃ、またあとで」
俺の背中をバンと叩いて、走っていってしまう。
思わずうつむくと、吉野くんが俺の頭をさらっとなでた。
ハッとして顔を上げる。
「ご、ごめん。気遣わせちゃって。そういうの、いいよ。俺がしなきゃいけない立場だから」
そう言って、少しだけ吉野くんの肩に顔を寄せる。
申し訳なく思いながら歩いていくと、校門の前に立つ先生を見つけて、手を離した。
ノルマのキスは、なるべく見ているひとが少なそうな場面にしようと思って、移動教室の前に、俺からした。
吉野くんは微動だにせず、ただ俺の顔を見ている。
昨日は、俺にだけは声を出せると言っていたけど、基本的にはやっぱり、学校では話せないのかなと思った。
「うわ、見た?」
「気持ち悪っ」
近くにいたクラスメイトが、虫ケラを見るみたいな目で、吐き捨てる。
辛くて、泣きたくなる。
でも、俺が逃げたり泣いたり変なそぶりを見せたら、吉野くんが乱暴されるかも知れない。
松田くんが監視するようにこちらを見ていたので、俺から抱きついて、吉野くんの鎖骨のあたりに顔を押し付けた。
登下校も一緒にしろという命令で、家を聞いたら、電車は反対方向だった。
そういうわけで、行きも帰りも、最寄駅で待ち合わせをして、そこから学校まで、手を繋いで登下校することになる。
きっと、このことを知っているひとたちは全力でからかうだろうし、事情を知らないひとから見たら、完全に俺たちが好きでそうしているみたいに見える。
帰り道、校門を過ぎたところで、俺から手を繋いだ。
「あの……本当にごめんね」
謝っても謝りきれない。
何も言ってくれないかも知れないけど、それはそれで仕方がない。
ただ黙って手を繋いでいればいい……と思っていたら、吉野くんが、すごく小さなかすれ声で言った。
「場面緘黙症」
「え?」
「特定の場所で、言葉が一切出なくなる。小さい頃から、幼稚園とか学校でだけ、なぜか声が出ない。敷地から出るとちょっとマシ。あと、なぜかあんたにだけは学校でも声が出た。正直、自分でも本当にびっくりしてる」
そう言って吉野くんは、ちょっと繋いでいた手を、きゅっと力を込めて握った。
「しゃべらないんじゃなくて、しゃべれないの?」
こくりとうなずく。
「他人と話したくないとかじゃなくて。本当に、声が出ない」
そんな病気? があるなんて、知らなかった。
ひとりでいるのが好きとか、他人に興味がないとか、そういうタイプのひとなのかなと思っていたけど……。
「あの。俺には話せるなら、その、休み時間とかに話して? もちろん無理しなくていいけど……命令的に、俺からくっついたりしなきゃいけないらしいし。もし、ちょっとでも声が出るなら」
「うん」
ぽつっとつぶやいた。
でも表情はなくて、これも症状なのか、ずっとしゃべってないからそうなっちゃってるのか、それは判断がつかなかった。
朝は駅で待ち合わせをして、命令通り、手を繋いで登校した。
サラリーマンとか大人のひとたちはチラチラ見てくるし、学校のひとも、『うわあ』って感じだ。
「よーよーよー、底辺ホモさん。おはよー」
後ろから声をかけてきたのは、桜井くんだ。
「あ……おはよう、ございます」
「いやー、早速イチャついてんなー。ま、フェラする仲だもんな? あはは、じゃ、またあとで」
俺の背中をバンと叩いて、走っていってしまう。
思わずうつむくと、吉野くんが俺の頭をさらっとなでた。
ハッとして顔を上げる。
「ご、ごめん。気遣わせちゃって。そういうの、いいよ。俺がしなきゃいけない立場だから」
そう言って、少しだけ吉野くんの肩に顔を寄せる。
申し訳なく思いながら歩いていくと、校門の前に立つ先生を見つけて、手を離した。
ノルマのキスは、なるべく見ているひとが少なそうな場面にしようと思って、移動教室の前に、俺からした。
吉野くんは微動だにせず、ただ俺の顔を見ている。
昨日は、俺にだけは声を出せると言っていたけど、基本的にはやっぱり、学校では話せないのかなと思った。
「うわ、見た?」
「気持ち悪っ」
近くにいたクラスメイトが、虫ケラを見るみたいな目で、吐き捨てる。
辛くて、泣きたくなる。
でも、俺が逃げたり泣いたり変なそぶりを見せたら、吉野くんが乱暴されるかも知れない。
松田くんが監視するようにこちらを見ていたので、俺から抱きついて、吉野くんの鎖骨のあたりに顔を押し付けた。
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