スクールカースト最底辺から学校一の甘々カップルになるまで

御堂どーな

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3 君しかいない

3-2

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 吉野くんは呼吸を整えたあと、ズルリと引き抜き、コンドームの上を縛って地面に放り投げた。
 白濁の液が入ったものがべちゃっと地面に落ちて、吉野くんはそれを見もせずに、ソファの背もたれに顔を乗せてうずくまった。

 澤村くんは、落ちたコンドームを遠目に見て、吉野くんがちゃんとイッたと確認したらしい。
「はい、終わり。合計2,000円ですが、桜井、金もらう前に全員のチンコ触って確認しろ。勃ってる奴いたらプラス500円な」

 ギャラリーの一部がギクッとしている。
 そっか……男子校だもんな。
 不良でも、目の前でセックスされたら、男相手に勃ったりするのかも。
 キモイキモイと言いながら。

 3人はとんだボロ儲けだな……と、他人事のように考えながら起き上がって、自分の液で汚れたワイシャツを脱ぎ、吉野くんの背中をさすった。
「ごめんね」
 吉野くんは何も言わず、背もたれに突っ伏している。

「はい、プラス500円ねー」
 桜井くんの楽しそうな声が聞こえる。
 あんなにみんな、からかってきたくせに。
 
「吉野くん……俺、教室から体操着取ってくるね。ちょっとひとりになっちゃうけど、いいかな」
 そっと声をかけると、吉野くんはちょっと振り向いて、ふるふると首を横に振った。
旧校舎ここから教室まで、上半身裸でとか無理だよ。オレ取ってくるから」

 だるそうに身を起こした吉野くんは、俺のワイシャツを掴んで、よろよろと外へ出て行った。
 松田くんが、ふっと笑って言う。
「健気だね」
 何も言えなくて、うつむく。

 5分ほど経って戻ってきた吉野くんは、体操着と、ビニール袋に入ったワイシャツを渡してくれた――水道で洗い流してくれたのだろう。

「じゃ、また今度」
 たばこをふかす澤村くんが、真顔で手を振る。
 お金を数える桜井くんは楽しそうに鼻歌を歌っていて、松田くんはソファを壁際に寄せていた。
 ……今度?
 毎日させられていたけど、明日はないのか?

 吉野くんと手を繋いで、古ぼけた廊下を歩く。
「ごめんね。汚いし、気持ち悪かったよね」
 黙って首を横に振る。

「俺は逃げるつもりないけど……吉野くんが酷い目に遭ったら困るし。でも、吉野くんは逃げてもいいよ。元はと言えば標的は俺だったんだから、付き合ってもらう義理がない」

 ボソボソと告げたら、ぎゅうっと手を握られた。
 そのまま階段を降りて、裏口からこそっと出る。
 校門を抜けてしばらくしたところで、吉野くんがぽつりと言った。

「あんたが回されるとこなんか想像したくない」
「しなくていい想像でしょ? 吉野くんは関係ないもん」
「あの人数相手にしたら死んじゃうよ」
 何も言えなくなってしまう。

 吉野くんは、はあっとため息をついて、足元をぼんやり眺めた。
「オレ、初めてできた。友達。こんな最低な形だけど。友達って思っちゃダメ?」
 びっくりして、言葉を失う。
 こんな壮絶ないじめに巻き込んでしまったのに、そんなことを言われるなんて、思いもしなかったから。

「えっと……吉野くんがそれでいいなら。うん、俺も、吉野くんと友達になりたい。命令されてる時はあんなので申し訳ないけど、そうじゃない時は、普通に」

 吉野くんは、ほんの少し目を細めてこちらを見た。
「……気持ち良かったのって、ほんと?」
「えっ?」
 唐突な質問、しかも、すごく答えづらい。
 でも、せっかく友達になれたのだし、そこで隠したりごまかしたりするのはどうかと思って、正直に言ってみた。

「えっと……うん。気持ち良かった。その、中も。こういうことしたことないし、免疫なくてごめん」
 慌てて謝ると、吉野くんは、不安そうに聞いた。
「慧って呼んでいい?」
「え? うん、いいけど」
 話しがあちこちに飛んで、よく分からない。
 すると吉野くんは、俺の手をぐっと引いて抱き寄せた。

「オレも、慧の中気持ち良くて。回されるとか、他人に取られるのやだな」
「取られ……」
 それってなんか、まるで。
「吉野くん……いま、何考えてる?」
 彼は少し黙ったあと、ぽつぽつと語り出した。

「友達っていうのは、ごめん、うそ。こんな状況なのに、慧のこと好きになりそうになってる。ほんとに、他人としゃべれたの久しぶりで。慧は、しゃべれないオレのことかばおうとしてくれて、優しい。それに、無理やりだけどああいうことして、気持ちよさそうな声で何回も名前呼ばれて……とか。ごめん」

 謝られてしまった。
 全然、謝ることじゃないのに。
 それに、俺だって。

「謝んないで。俺も、なんだろ……吉野くんは本当は嫌な状況なはずなのに、俺のこといっぱい考えてしてくれるから。俺、誰かに優しく接してもらえたことなんてほとんどないし。ちょっと、甘えたくなったりも、した。正直」

 言いながら、心臓がドキドキしてくる。
 さらにぎゅうっと抱きしめられて、俺も、吉野くんの背中に手を回した。

「好きって思っちゃっていい?」
 ダイレクトに聞かれて、困ってしまった。
「うん。けど、こんな状況でいいの?」
「……どんな状況でも、どのみちオレ、慧としかしゃべれないし」

 俺だって同じだ。
 いじめられて、誰も助けてくれなくて、ずっとひとりで。
 真っ暗だった世界に、こんな異常な形ではあるけれど、吉野くんが舞い降りてきてくれた。

「吉野くん、好きって思って。俺もおんなじ」
「うん」

 触れるだけのキスをしてくれた。
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