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3 先生仰せのままに
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寝る前の日課。LINEを送ると、いつも通り電話がかかってきた。
「もしもーし」
『お疲れさま。大丈夫? バイト忙しかったんでしょ?』
「大丈夫、大丈夫。割と体力有り余ってるから。それより春馬さんの方が疲れてるんじゃないの? プリント忘れるなんて、珍しい」
春馬さんは、あははと苦笑いした。
『いやいや、完全にぼけてただけ。恥ずかしいところ見られちゃったな』
教室でも『あー恥ずかしい』なんて素でつぶやいてたもんな。
あんな可愛く照れ笑いしたら、ギャップに弱い女子がやられてしまう。
「なんか女子が興味持ってたよ。川上先生、笑ったら可愛いとか。あした、出来る限り超無愛想にして」
『なんで?』
「川上先生ファンが生まれたら困る」
『そういうのとは無縁の人生だから大丈夫だよ』
いや、全然、大丈夫じゃない。春馬さんは分かっていないんだ。
そりゃ確かに、学生時代は物静かな感じで目立たなかったかも知れない。
しかも恋愛対象は男だし。
でも、学校の先生という、言ってみればパブリックな存在になったいまは、同じ振る舞いをしていたとしても、モテ度が違うはず。
心配だ。と言っても、春馬さんがなびかないかが心配なわけじゃない。
BLみたいに、攻めが女子に告られる場面を受けが見て、『やっぱモテるよね……』みたいな感じでへこむ、あのテンプレお約束になりたくない。
俺の場合、へこむより理不尽にブチギレそうだけど。
「春馬さんは、先生になってから告られたりとかないの?」
『………………あることにはある、けど』
「えっ!?」
自分で聞いたくせに、びっくりして声が裏返ってしまった。
『まあ、ああいうのは、教師の洗礼みたいなものだから』
「え? え? それはどういう状況で?」
食い気味に聞く俺に、春馬さんは少し困ったように答えた。
『いや、本当に急に呼ばれて。特別親しくしていたわけでもないし、授業外で話した記憶もないんだけど、急に』
「なんて?」
『…………かっこいいと思ってた、とか』
心底言いにくそうな春馬さん。
理不尽にキレそうな俺。
バカだなと自分でも思うけど。
『若いっていうだけでそういう幻想を抱く生徒もいることにはいるけど、基本的にはそういうのとは縁がな』
「やだあ、川上先生、モテて欲しくないー」
情けない声を出したら、春馬さんはちょっと笑って言った。
『大丈夫だよ。僕はみいのことしか好きじゃないんだから』
「うー。そうだけど」
『それよりね』
一旦言葉を切る。そして、優しい声で尋ねてきた。
『土曜日、うちに来ない?』
「えっ?」
『家でまったり、漫画デート。どうかな?』
き、緊張する……。
まったりなんて、言うのは簡単だけど、初めての恋人の家で、ドキドキしないわけがない。
それに、もしかしたら進展したりとかするかも知れないわけで。
だって……家ですし。家ですから!
しかし、そんなことを考えているとバレたらものっすごい恥ずかしいので、あえてはしゃいでみた。
「やった、超楽しみ。色々読ませてね」
『うん。僕も楽しみにしてる』
天にも昇る気持ち、ってのは、こういうことを言うんだな。
「もしもーし」
『お疲れさま。大丈夫? バイト忙しかったんでしょ?』
「大丈夫、大丈夫。割と体力有り余ってるから。それより春馬さんの方が疲れてるんじゃないの? プリント忘れるなんて、珍しい」
春馬さんは、あははと苦笑いした。
『いやいや、完全にぼけてただけ。恥ずかしいところ見られちゃったな』
教室でも『あー恥ずかしい』なんて素でつぶやいてたもんな。
あんな可愛く照れ笑いしたら、ギャップに弱い女子がやられてしまう。
「なんか女子が興味持ってたよ。川上先生、笑ったら可愛いとか。あした、出来る限り超無愛想にして」
『なんで?』
「川上先生ファンが生まれたら困る」
『そういうのとは無縁の人生だから大丈夫だよ』
いや、全然、大丈夫じゃない。春馬さんは分かっていないんだ。
そりゃ確かに、学生時代は物静かな感じで目立たなかったかも知れない。
しかも恋愛対象は男だし。
でも、学校の先生という、言ってみればパブリックな存在になったいまは、同じ振る舞いをしていたとしても、モテ度が違うはず。
心配だ。と言っても、春馬さんがなびかないかが心配なわけじゃない。
BLみたいに、攻めが女子に告られる場面を受けが見て、『やっぱモテるよね……』みたいな感じでへこむ、あのテンプレお約束になりたくない。
俺の場合、へこむより理不尽にブチギレそうだけど。
「春馬さんは、先生になってから告られたりとかないの?」
『………………あることにはある、けど』
「えっ!?」
自分で聞いたくせに、びっくりして声が裏返ってしまった。
『まあ、ああいうのは、教師の洗礼みたいなものだから』
「え? え? それはどういう状況で?」
食い気味に聞く俺に、春馬さんは少し困ったように答えた。
『いや、本当に急に呼ばれて。特別親しくしていたわけでもないし、授業外で話した記憶もないんだけど、急に』
「なんて?」
『…………かっこいいと思ってた、とか』
心底言いにくそうな春馬さん。
理不尽にキレそうな俺。
バカだなと自分でも思うけど。
『若いっていうだけでそういう幻想を抱く生徒もいることにはいるけど、基本的にはそういうのとは縁がな』
「やだあ、川上先生、モテて欲しくないー」
情けない声を出したら、春馬さんはちょっと笑って言った。
『大丈夫だよ。僕はみいのことしか好きじゃないんだから』
「うー。そうだけど」
『それよりね』
一旦言葉を切る。そして、優しい声で尋ねてきた。
『土曜日、うちに来ない?』
「えっ?」
『家でまったり、漫画デート。どうかな?』
き、緊張する……。
まったりなんて、言うのは簡単だけど、初めての恋人の家で、ドキドキしないわけがない。
それに、もしかしたら進展したりとかするかも知れないわけで。
だって……家ですし。家ですから!
しかし、そんなことを考えているとバレたらものっすごい恥ずかしいので、あえてはしゃいでみた。
「やった、超楽しみ。色々読ませてね」
『うん。僕も楽しみにしてる』
天にも昇る気持ち、ってのは、こういうことを言うんだな。
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