デリヘル頼んだら会社の後輩(根暗)が来た

御堂どーな

文字の大きさ
35 / 42
9章 ほんとに、お前しかいないわ

9-2

しおりを挟む
 どう考えてもまずい状況だった。
 目の前の人物、洋介さんは、5年間片思いをこじらせ続けた相手である。

 通い詰めていたゲイバー・イージスの常連で、誰からも好かれる、気さくな人だった。
 優しいし気が利くし、男は取っ替え引っ替えだったけど、すごくチャラチャラしているわけでもない。
 セックスの相手に不自由しない、というイメージ。

 付き合いたくて背伸びして、でも、全然そういう目では見てもらえなくて。
 9こも下なら仕方ないかとあきらめようとした日、洋介さんが『10こ下の子とヤッて可愛かった』みたいなことを話すのを聞いてしまったり。

 空回るから余計にこじらせて、社会人になりイージスに行かなくなってからも、なんとなく心に引っかかったままでいた。
 それを吹っ切るために、あの日、デリヘルを――あゆむくんを呼んだのだ。

「どう? 仕事、続いてる?」
「あ……はい。おかげさまで。楽しくやらせてもらってます」

 歩夢が戻ってくる前に、切り上げたい。
 色々近況を聞いてくるのをやんわりと受け流し、話を終わらせようとする。
 しかし、洋介さんは懐かしさでいっぱいのようで、人懐っこい笑みを浮かべて、ぽんぽんとオレの肩を叩く。

「やー、安心したよ。しっかりサラリーマンやってるんだ」

 あのとき欲しくて仕方がなかった笑顔だ。
 なぜ、欲しかったときにはくれなくて、別の道へ踏み出した瞬間に、目の前に現れるのだろう。
 いまは要らない。だって、歩夢が――

「安西さんすみません、お待たせしま……」
「あっ、歩夢っ」
「ええと……お知り合いの方、ですか?」

 歩夢は、オレと洋介さんの顔を交互に見ながら、小さく頭を下げる。
 洋介さんは、少し驚いた表情をしたあと、柔和な笑みを浮かべた。

「わ、お連れさんがいたんだね。ごめんごめん、引き留めて。えっと、高峰たかみねといいます。周の古い友人で」
「あっ、えっと……篠山です。会社の後輩で……」

 鞄を漁り名刺を取り出そうとするのを、慌てて止める。

「いい、いいからそういうの」
「あはは、律儀な後輩さんだね。周の教育が良いのかな?」
「はい……すごく、良くしてもらって……」

 しどろもどろになりつつ会話を試みているのはなんとも健気なのだが、いまはそんな場合ではない。
 そんなオレの焦りとは裏腹に、洋介さんはのほほんとした様子で、オレの袖をつんつんと引っ張った。
 そして、耳打ちする。

「もし偏見ないなら、今度後輩くんも連れてイージス来なよ。久々に飲みたい」
「いや……多分、そういう場は苦手なタイプだと思います」
「じゃあ周だけでも。来たら、みんな喜ぶと思うし」
「えっと、」

 言い淀んでいると、洋介さんはさらに耳元に顔を近づけて言った。

「周、大人っぽくなったね。好みど真ん中に育っちゃって」
「え?」
「ふたりきりでもいいよ。飲みたいな」

 その目は、穏やかでありつつも、男を誘うときのそれだった。
 二の句が継げず固まっていると、唐突に、歩夢がオレと洋介さんの間に割って入った。

「あ、あのっ! 安西さんとっ、お、付き合いさせていただいているので……っ」

 仰天して顔を見る……と、その表情は泣きそうだった。手も少し震えている。
 洋介さんはオレたちの顔を交互に見たあと、ひょいっと肩をすくめた。

「あらら、それは失礼失礼。なんだ、周も遠慮せずにそう言ってくれればよかったのに」
「すいません、隠すつもりじゃなかったんですけど」
「そ、そういうわけですので……失礼します。安西さん、行きましょう?」

 歩夢はオレの手首を掴み、首だけで頭を下げると、引きずるように駅方面へ歩き出した。
 オレは慌てたまま、少し声を張り気味に言った。

「洋介さん、オレ、幸せなんで大丈夫ですよ! みなさんによろしくお伝えください!」

 洋介さんは、まん丸く目を見開いたあと、ちょっと困ったように笑いながら、手を振っていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか

相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。 相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。 ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。 雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。 その結末は、甘美な支配か、それとも—— 背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編! https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322

処理中です...