28 / 47
28. 10月29日 ボートハウス
しおりを挟む
化粧室から戻るわたしの足取りは決意に満ちている。
ジムはいい人だし、これからも家の事業で付き合いを続けていくつもりだ。気まずくなることはしたくない。ジムとわたしの間には穏やかな感情が流れている。だけど、わたしはヘンリーの力強くて熱のこもった瞳が恋しい。一度でいいから、あんな風に誰かに望まれてみたかった。自分自身の気持ちを知った今はわかる。誠実にわたしの気持ちを伝えないと、ジムに失礼だ。
席に着くと、ジムに「浮かない顔だね」と言われた。
「考え事をしていたの」
「なんでも話してよ。俺じゃ役不足かな」
「そうじゃないの。大丈夫よ」と、つい答えてしまった。もう一度口を開きかけたが、ジムの言葉にわたしは先を続けることができなくなった。
「何でも話して欲しいけど、君は何も話さない。君は今以上に俺との関係を深めることに乗り気じゃなさそうだし、俺だってどうでもいいと思われている女性とは関係をすすめたくないよ。
さっきはああ言ったけど、ひょっとしたら俺たちは友達のままの方がうまくいくんじゃないかな」
ジムは不機嫌そうだ。声に棘が含まれている。無理もない。わたしが煮え切らない態度だったからいけないのだ。わたしはあまりに図星過ぎて、自分でも顔が赤くなったのがわかった。
「ごめんなさい、ジム。決して乗り気じゃないわけではなかったの。あなたは気さくで楽しい人だもの。一緒にいると心地いいわ。家が大変なときに手を差し伸べてくれて、感謝もしているの」
「へえ?」
ジムは腕を組んで聞いている。
「だけど、そうね。わたしたちには情熱が足りないわ。確かに穏やかな関係は魅力的だけど、情熱もほしいの。あなたに言わなくちゃって思ってた。でもタイミングを見つけられなくて。こんなことになってしまって、本当にごめんなさい」
「けっこう君のこと、誘ったつもりだったんだけどなあ」
ジムは怒りとも諦めとも取れるようなため息をついた。
「嬉しかったわ。でも一緒に過ごすうちに友人として付き合う方がしっくりくると考えるようになったの。それから」
わたしは言葉につまってしまった。
「アリー。どうせなら、全部話しなよ。君って本音を隠しすぎてるよ」
ジムは苦笑いをして、先を促した。
「そのせいで、あなたにフラれたところよ。実を言うと、ペニーパークであなたを見かけたの」
わたしは冷たくなってしまった紅茶を飲み、からからに乾いた喉を潤した。
「かわいらしい人と仲睦ましそうに腕を組んで、散歩しているところを見たの」
ジムはばつの悪そうな顔をして、白状した。
「あの朝、君もペニーパークにいたんだね。アリーが思っているような、やましいことはいっさいないよ。
彼女はパーティーで一緒になったんだ。それで、いつものようにビジネスの情報交換と散歩をかねて、あの日ペニーパークを散歩していたら、たまたま再開したんだ。彼女も一人で来ていたから、たまたまエスコートを申し出た。本当に、ただそれだけだ」
たまたまエスコートしただけにしては二人とも楽しそうにしていた。それこそ、窓の外に見えるボートの男女みたいに幸せそうだった。わたしには感じない情熱を、ジムはその女性には感じられるんじゃないかな。
「あなたは誠実な人だもの。きっとそれだけだったんでしょうね」
ジムはさらに気まずそうな顔をした。
「ああ、そうだ。でも君の言う情熱の芽は少し感じたような気もする。だけど、彼女を愛してはいないし、連絡先も知らない。君との関係だけを考えてきたよ」
やっぱりだ。わたしたちは互いに相応しい相手ではなかったのだろう。
「ジム、ありがとう。あなたみたいに素敵な人をわたしが独占したらいけないのよ。彼女、かわいらしいわよね?」
ジムは降参したように頷き、それから言った。
「二度しか話したことがないけど、かんじのいい人だったよ。考えないようにしていたけど、あの日から彼女の笑顔が頭から離れないんだ」
わたしはヘンリーの顔がよぎった。ヘンリーが帰ってきてくれてよかった。そうじゃないと、この場で泣いていたかも。
「実は、死んだと思っていた婚約者が突然帰ってきたの。その人に結婚前夜に逃げられたのよ」
「なんだそれ、ひどい話だ。君、大丈夫なの?」
ジムが身を乗り出して、聞いてくる。
「大丈夫、心配しないで。人が変わったように優しくて、わたしに興味があるみたいなの。その、わたしのことを好きだって」
「ああ」とつぶやいて、ジムは苦々しい顔つきになった。
「俺はその男に負けたんだな。君となら穏やかに過ごしていけると思ったんだ。でも俺たち二人とも間違っていた。穏やかで心地いい関係は、時間をかけて育てていくものだ。そこに情熱がないと心が動かないんだ。俺たちは決定的にそれがなかった。だけど友情はこれからも続く。だろ?」
言い終わると、ジムは穏やかにほほ笑んだ。
ボートハウスのレストランを出て、ジムと並んで歩く。
「それで、彼女のことはどうするの?」
わたしはジムに尋ねた。
「パーティーで彼女にまた会えたら、そのときにはっきりと情熱を伝えるよ。君はどうするの?」
「わからないわ。わたしに興味がなかったくせに、帰ってきた途端に人が変わったように興味を持った理由がわからない」
「アリー、君って本当に一人でくよくよ考えるんだね。今まで君の本音がわからなくて気を揉んでいたけど、やっと君と言う人がわかった気がするよ。
いいかい、アリー。これは友人としての助言だ。気になるなら直接聞くに越したことはない。一人で悩んだって答えはでないさ」
ジムはウィンクすると、そっとわたしの背中を叩いた。
「ありがとう、ジム」
わたしたちの友情ははじまったばかりだ。
***
わたしは部屋のウィンドウシートに座って、日記を広げていた。すでに就寝時間は過ぎているが今夜は目が冴えてなかなか寝付けそうにない。
わたしはヘンリーへの恋心を自覚し、その気持ちを持て余していた。会いたいくせに、会いたくないのだ。どんな顔して会えばいいのか、会ってどうしたらいいのか、何か言わなくてはいけないのか。そもそもどうやって会えばいいのか、また誘ってくれるのか。
ヘンリーは自ら名声と財産を築いて帰ってきたのだ。わたしと結婚する必要なんてない。自分が好きだと思う人と結婚できる。それに、帰ってきてからまるで性格が変わってしまったように感じられる。以前のヘンリーのことだってほとんど知らないけど、明るく社交的になったし、瞳には生気を感じる。一年以上かけて色々と冒険して人生経験したにせよ、人はここまで変わるものだろうか。
日記から頭を上げ、ウィンドウシートのクッションに突っ伏して途方にくれる。すると、窓に何かがあたるこつんという音が聞こえた。
ジムはいい人だし、これからも家の事業で付き合いを続けていくつもりだ。気まずくなることはしたくない。ジムとわたしの間には穏やかな感情が流れている。だけど、わたしはヘンリーの力強くて熱のこもった瞳が恋しい。一度でいいから、あんな風に誰かに望まれてみたかった。自分自身の気持ちを知った今はわかる。誠実にわたしの気持ちを伝えないと、ジムに失礼だ。
席に着くと、ジムに「浮かない顔だね」と言われた。
「考え事をしていたの」
「なんでも話してよ。俺じゃ役不足かな」
「そうじゃないの。大丈夫よ」と、つい答えてしまった。もう一度口を開きかけたが、ジムの言葉にわたしは先を続けることができなくなった。
「何でも話して欲しいけど、君は何も話さない。君は今以上に俺との関係を深めることに乗り気じゃなさそうだし、俺だってどうでもいいと思われている女性とは関係をすすめたくないよ。
さっきはああ言ったけど、ひょっとしたら俺たちは友達のままの方がうまくいくんじゃないかな」
ジムは不機嫌そうだ。声に棘が含まれている。無理もない。わたしが煮え切らない態度だったからいけないのだ。わたしはあまりに図星過ぎて、自分でも顔が赤くなったのがわかった。
「ごめんなさい、ジム。決して乗り気じゃないわけではなかったの。あなたは気さくで楽しい人だもの。一緒にいると心地いいわ。家が大変なときに手を差し伸べてくれて、感謝もしているの」
「へえ?」
ジムは腕を組んで聞いている。
「だけど、そうね。わたしたちには情熱が足りないわ。確かに穏やかな関係は魅力的だけど、情熱もほしいの。あなたに言わなくちゃって思ってた。でもタイミングを見つけられなくて。こんなことになってしまって、本当にごめんなさい」
「けっこう君のこと、誘ったつもりだったんだけどなあ」
ジムは怒りとも諦めとも取れるようなため息をついた。
「嬉しかったわ。でも一緒に過ごすうちに友人として付き合う方がしっくりくると考えるようになったの。それから」
わたしは言葉につまってしまった。
「アリー。どうせなら、全部話しなよ。君って本音を隠しすぎてるよ」
ジムは苦笑いをして、先を促した。
「そのせいで、あなたにフラれたところよ。実を言うと、ペニーパークであなたを見かけたの」
わたしは冷たくなってしまった紅茶を飲み、からからに乾いた喉を潤した。
「かわいらしい人と仲睦ましそうに腕を組んで、散歩しているところを見たの」
ジムはばつの悪そうな顔をして、白状した。
「あの朝、君もペニーパークにいたんだね。アリーが思っているような、やましいことはいっさいないよ。
彼女はパーティーで一緒になったんだ。それで、いつものようにビジネスの情報交換と散歩をかねて、あの日ペニーパークを散歩していたら、たまたま再開したんだ。彼女も一人で来ていたから、たまたまエスコートを申し出た。本当に、ただそれだけだ」
たまたまエスコートしただけにしては二人とも楽しそうにしていた。それこそ、窓の外に見えるボートの男女みたいに幸せそうだった。わたしには感じない情熱を、ジムはその女性には感じられるんじゃないかな。
「あなたは誠実な人だもの。きっとそれだけだったんでしょうね」
ジムはさらに気まずそうな顔をした。
「ああ、そうだ。でも君の言う情熱の芽は少し感じたような気もする。だけど、彼女を愛してはいないし、連絡先も知らない。君との関係だけを考えてきたよ」
やっぱりだ。わたしたちは互いに相応しい相手ではなかったのだろう。
「ジム、ありがとう。あなたみたいに素敵な人をわたしが独占したらいけないのよ。彼女、かわいらしいわよね?」
ジムは降参したように頷き、それから言った。
「二度しか話したことがないけど、かんじのいい人だったよ。考えないようにしていたけど、あの日から彼女の笑顔が頭から離れないんだ」
わたしはヘンリーの顔がよぎった。ヘンリーが帰ってきてくれてよかった。そうじゃないと、この場で泣いていたかも。
「実は、死んだと思っていた婚約者が突然帰ってきたの。その人に結婚前夜に逃げられたのよ」
「なんだそれ、ひどい話だ。君、大丈夫なの?」
ジムが身を乗り出して、聞いてくる。
「大丈夫、心配しないで。人が変わったように優しくて、わたしに興味があるみたいなの。その、わたしのことを好きだって」
「ああ」とつぶやいて、ジムは苦々しい顔つきになった。
「俺はその男に負けたんだな。君となら穏やかに過ごしていけると思ったんだ。でも俺たち二人とも間違っていた。穏やかで心地いい関係は、時間をかけて育てていくものだ。そこに情熱がないと心が動かないんだ。俺たちは決定的にそれがなかった。だけど友情はこれからも続く。だろ?」
言い終わると、ジムは穏やかにほほ笑んだ。
ボートハウスのレストランを出て、ジムと並んで歩く。
「それで、彼女のことはどうするの?」
わたしはジムに尋ねた。
「パーティーで彼女にまた会えたら、そのときにはっきりと情熱を伝えるよ。君はどうするの?」
「わからないわ。わたしに興味がなかったくせに、帰ってきた途端に人が変わったように興味を持った理由がわからない」
「アリー、君って本当に一人でくよくよ考えるんだね。今まで君の本音がわからなくて気を揉んでいたけど、やっと君と言う人がわかった気がするよ。
いいかい、アリー。これは友人としての助言だ。気になるなら直接聞くに越したことはない。一人で悩んだって答えはでないさ」
ジムはウィンクすると、そっとわたしの背中を叩いた。
「ありがとう、ジム」
わたしたちの友情ははじまったばかりだ。
***
わたしは部屋のウィンドウシートに座って、日記を広げていた。すでに就寝時間は過ぎているが今夜は目が冴えてなかなか寝付けそうにない。
わたしはヘンリーへの恋心を自覚し、その気持ちを持て余していた。会いたいくせに、会いたくないのだ。どんな顔して会えばいいのか、会ってどうしたらいいのか、何か言わなくてはいけないのか。そもそもどうやって会えばいいのか、また誘ってくれるのか。
ヘンリーは自ら名声と財産を築いて帰ってきたのだ。わたしと結婚する必要なんてない。自分が好きだと思う人と結婚できる。それに、帰ってきてからまるで性格が変わってしまったように感じられる。以前のヘンリーのことだってほとんど知らないけど、明るく社交的になったし、瞳には生気を感じる。一年以上かけて色々と冒険して人生経験したにせよ、人はここまで変わるものだろうか。
日記から頭を上げ、ウィンドウシートのクッションに突っ伏して途方にくれる。すると、窓に何かがあたるこつんという音が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる