47 / 79
47
しおりを挟む
エリカはバーラントの本邸を離れ、市街地の中心に来ていた。
彼女の行き先は、昨日の晩に向かった酒場である。そこの店長から、馴染み客であった男の情報を聞き出すのが目的だ。
――真相は、じきに分かるところまで来ている。
エリカは直観でそう感じていた。
調べるべきは一点。殺された男の素性と目的である。これさえ分かれば、必然的にバーラントが何をしていたかも分かるはずだ。
曲がり角を折れた先にある、酒場の前までやって来る。
――扉が開かない。
「やっぱり、夜の時間じゃないと駄目か……」
待っている時間が惜しいから、自宅がどこにあるのか調べるか、あるいは他の場所に行って、男のことを訊き込みするか……
「今日は来ないぞ」
エリカが驚いて振り返った。
少し離れたところに、初老の男性が立っている。坊主頭に髭をたくわえているから、強面に見えた。
「あの、ここのお店って何時くらいから始まるんですか?」
「しばらく無理だろうねぇ」
「えっ?」
「怪我をしてね、今は病院で大人しく寝ているようだよ。ある意味、運が良かったみたいだ」
エリカの血の気が引いた。
「可哀想に、ベラベラと仕様も無いことを喋るから……」
「あなた……」と、エリカが半身となる。「店長の知り合いってワケじゃなさそうね……?」
「一応、知っている顔だよ。俺もここで飲んでいたからね。昨日の晩……」
もはや、彼女の顔は凍り付いたと言っても良かった。
反対に、男は一見すると温和とも取れるような表情で、エリカを見ている。
「しかし、まさか君みたいな娘がバーラントの知り合いだったとはねぇ…… 盲点だったよ」
「そういうからには、あなたもバーラントのお知り合いってことでいいのかしら?」
「直接、会ったことは無いけれど、彼のことはよ~く知ってる」
そう言って、彼は懐に手を入れ、拳銃を取り出した。
「死体が増えると、騒ぎが大きくなるからイヤなんだがね」
「こんな真っ昼間から…… 誰かに気付かれるんじゃないの?」
「別に構わないんだよ。気付いた人間から順に死んでいくだけだからね」
エリカが拳を握りこんだ。
「おやおや、結構な正義感じゃあないか。若いねぇ……」
「バーラントはどこにいるの?」
「我々も捜している最中なんだ。君は知っているのか?」
「――ここだと人が来るから、そっちの裏道にでも行きましょうか?」
「これはこれは」と、薄ら笑う男。「なんたる美徳! 我が国ではね、お嬢ちゃん。自己犠牲はもっとも素晴らしい美徳の一つなんだよ?」
色々と言ってやりたいことはあるけれど、逆上して銃撃されては堪らない。
エリカは、男から視線を外さないよう、ゆっくりと細長い裏道へと入っていく。
男は拳銃を持ったまま、裏道に入るエリカを追って歩く。
二人が立ち止まると、エリカがゆっくりと振り返った。
彼女の行き先は、昨日の晩に向かった酒場である。そこの店長から、馴染み客であった男の情報を聞き出すのが目的だ。
――真相は、じきに分かるところまで来ている。
エリカは直観でそう感じていた。
調べるべきは一点。殺された男の素性と目的である。これさえ分かれば、必然的にバーラントが何をしていたかも分かるはずだ。
曲がり角を折れた先にある、酒場の前までやって来る。
――扉が開かない。
「やっぱり、夜の時間じゃないと駄目か……」
待っている時間が惜しいから、自宅がどこにあるのか調べるか、あるいは他の場所に行って、男のことを訊き込みするか……
「今日は来ないぞ」
エリカが驚いて振り返った。
少し離れたところに、初老の男性が立っている。坊主頭に髭をたくわえているから、強面に見えた。
「あの、ここのお店って何時くらいから始まるんですか?」
「しばらく無理だろうねぇ」
「えっ?」
「怪我をしてね、今は病院で大人しく寝ているようだよ。ある意味、運が良かったみたいだ」
エリカの血の気が引いた。
「可哀想に、ベラベラと仕様も無いことを喋るから……」
「あなた……」と、エリカが半身となる。「店長の知り合いってワケじゃなさそうね……?」
「一応、知っている顔だよ。俺もここで飲んでいたからね。昨日の晩……」
もはや、彼女の顔は凍り付いたと言っても良かった。
反対に、男は一見すると温和とも取れるような表情で、エリカを見ている。
「しかし、まさか君みたいな娘がバーラントの知り合いだったとはねぇ…… 盲点だったよ」
「そういうからには、あなたもバーラントのお知り合いってことでいいのかしら?」
「直接、会ったことは無いけれど、彼のことはよ~く知ってる」
そう言って、彼は懐に手を入れ、拳銃を取り出した。
「死体が増えると、騒ぎが大きくなるからイヤなんだがね」
「こんな真っ昼間から…… 誰かに気付かれるんじゃないの?」
「別に構わないんだよ。気付いた人間から順に死んでいくだけだからね」
エリカが拳を握りこんだ。
「おやおや、結構な正義感じゃあないか。若いねぇ……」
「バーラントはどこにいるの?」
「我々も捜している最中なんだ。君は知っているのか?」
「――ここだと人が来るから、そっちの裏道にでも行きましょうか?」
「これはこれは」と、薄ら笑う男。「なんたる美徳! 我が国ではね、お嬢ちゃん。自己犠牲はもっとも素晴らしい美徳の一つなんだよ?」
色々と言ってやりたいことはあるけれど、逆上して銃撃されては堪らない。
エリカは、男から視線を外さないよう、ゆっくりと細長い裏道へと入っていく。
男は拳銃を持ったまま、裏道に入るエリカを追って歩く。
二人が立ち止まると、エリカがゆっくりと振り返った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
25
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる