異世界おねむり代行!

石釜真岸

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ひとつのひらめき

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次の日、俺は誕生日を迎えた。
7歳になる誕生日だ。こっちに来て既に7年経っているって考えるとやっぱり時間の流れって早いなぁとか思っちゃう訳さ。
まあまだ子供だからってのもあるだろうけど。
とはいえ辺境の村だからか学校も何もなく、読み書きや簡単な計算(計算については前世で何度もやってるから問題ないが)は村の大人から教えられる。それでも時間の流れを早く感じるのは何でだろうな。異世界を満喫してるってことか?

「誕生日おめでとう!スロウ!」
「ありがとうにゃ!これからもよろしくおねがいしますにゃ~」
「ハハハ。我が子ながら随分と丁寧だね」
「そうね。昔からどこか年不相応の雰囲気はあったけどね~」
「にゃハハハ!気にしなくていいのにゃ!なんせ、今に始まったことじゃにゃいからにゃ~」

もちろん誕生会もやる。といってもあっちとそんなにやることは変わらないけどね。
雑談しながら手作りケーキやらご馳走やらを食べていたら、ノックが聞こえた。

「私が出ていくわ」
「いやいや俺が出るにゃ」
「いいの?ごめんねぇ。今日の主役なのに」
「そんな気にすることないにゃ~」

    駆け足気味でドアを開けると…

「誕生日おめでとう!スーくん!」
「リィカ!来てくれたのかにゃ!」

プレゼントを満面の笑みで持つ、リィカがいた。

「これ!プレゼント!頑張って作ったんだ!」
「どれどれ……にゃ!これ、スカーフかにゃ!?」

プレゼントは大きめの…メンズのスカーフだった。だが特別、縫った事に時間をかけた訳じゃ無さそうだが…まさか!

「このスカーフ…布まで手作りかにゃ!?」
「そうだよ!大変だったんだからね?」
「どんだけスペック高いのにゃ……?」
「?」
「あ、ああ。こっちの話にゃ。気にすんにゃ。あ!それより一緒にケーキ食べないかにゃ?」

俺…凄く良い幼馴染み持ったなぁ…
なんてしみじみしながら…ちょっと泣きそうになりながらリィカとダイニングへと向かおうとすると…

バタリ!

と何かが倒れる音がした。
音のした方向を考えると…もしかして…

「リィカ…?」

俺はリィカのいる方向を向く。そこには誰も居なかった…いや、正確には視線の先には居なかっただけだ。
リィカは…俺の足元に倒れてこんでいた。

「リィ…カ?だ、大丈夫…かにゃ?」

返事は無い。
こういう時こそ落ち着け、俺…
脈は…あるな。息も正常だ。じゃあ命に別状は無い…かな?
その時、ふと、リィカのある台詞を思い出す。
『ちょっと最近夜更かししててね…』
もしかして…かなり無理をしながらスカーフを作ってたのか?連日、徹夜しながら…
俺と同じ位の年なのに…夜通しやってたってのか!?

「は~…しょうがない、寝かせようかにゃ…」

俺は親に事情を話し、そのままリィカを背負って俺の部屋に運ぶ。(ちなみにこの時、お姫様抱っこしようとしたが7歳の体じゃ無理があった)

結局リィカが起きたのはそれから2時間後だった。
(夜通しの作業で潰れた睡眠が二時間で済んだのは少しばかり眠り屋を使ったからと思われる)

「あれ?ここ…」
「俺の部屋にゃ」

俺はリィカが起きるまで部屋で待っていた。

「あ…スーくん…おはよう…」
「…おはよう…じゃないにゃ」
「…?」

俺が部屋で待っていたのはリィカが心配だった事ともうひとつ、言いたい事があったからだ。

「無茶は…無茶はしないで欲しいのにゃ」
「……」
「リィカが頑張ってこのスカーフを作ってくれたのは凄く嬉しいのにゃ。だけど…元気な顔で会える方がもっと嬉しいのにゃ!だから…」

ああ、ヤバイ、なんか涙出てきた。

「絶対に…無茶をしすぎないで欲しいのにゃ…!」
「…ごめん…なさい……ッ…!」

リィカの目からも涙が溢れ出る。
あ~あリィカを泣かせちまったなぁ~。


さてその後の話なのだが…
俺は固有スキルでの商売をひらめいた。
リィカの様に夜通し仕事をする人間は多分多いと思う。眠り屋を有効活用する事によってその人達の負担も減らせると思ったのだ。

これで全人類、皆が願うだろう、寝たまま収入を得たいという願いを叶えられる!

それと…これは個人的な事なのだが、リィカをこれからもサポートすると決めた。
少なくてもあいつがこの世界の成人…15歳になって王都(日本で言うところの首都)で冒険者になる時までは…ね。
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